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弁護士支援という「アディーレ」の挑戦

 何かと話題を提供する弁護士法人アディーレ法律事務所(石丸幸人・代表弁護士)が、今度は弁護士志望者400名に、なんと無償で事務所スペースを提供するという支援策を打ち出しました。

 アディーレ法律事務所といえば、つい最近「回転ずし事業」への進出を打ち出して話題になったばかりです(「法律事務所系『回転ずし』という現象」)。

 弁護士志望400人というのは、これも先日取り上げた、今月15日の弁護士一斉登録日の結果から、朝日新聞が未登録者として推定した人数です(「弁護士志望者『2割未登録』報道の意味」)。

 アディーレ法律事務所の今回支援策は、事務所務所スペース(デスク、コピー・FAX等のOA機器、キャビネット、顧客との応接ペース、文房具一式)、必要な書籍、判例検索データベース、事務職員の援助を無料で6カ月間提供するというもので、要するに未登録400人をみんなまとめて「ノキ弁」として面倒みよう、という話です。

 話題の中心は、やはり同事務所の狙いです。何せ先の「回転ずし」事業展開では、組織成長のためには「リーガルサービス『ではない』」市場を求め、「リーガルサービスとの親和性なんて不要」と宣言した事務所です。当然、ここにも彼らの戦略を読み込みたくはなります。

 例えば、前記400人への支援策にはそれなりの費用がかかるわけですが、話題性だけとってみても、これまたそれなりの宣伝効果は見込めます。先の事業展開との関係でいえば、そこで強くアピールされたような自分たちの組織の成長ばかりでなく、目下弁護士界が抱える喫緊の課題ともいえる、弁護士の就職難に対しても、目配りしている、対策に貢献しているというバランスがとれているというイメージ戦略もあるかもしれません。勤務弁護士への採用可能性もうたっていますので、当然、半年間の無給の試用期間として、その後、事務所に有用な人材を確保できるメリットもあります。

 つまり、現実的には同業者も驚かすような策ではあるものの、18拠点、60人以上の弁護士が在籍し、その全国で400人を受け入れて、指導するという話は、彼らにとっては、無謀でもなんでもない十分に見通しと採算が成り立つものという風にもとれなくありません。だとすれば、彼らからいわせれば、現実的な彼らの経済的な体力もありますが、要はこうした発想に立てるか立てないかだ、ということになるように思います。

 ただ、今のところ、ネットなどの同業者の反応には、彼らのそうした戦略があったとしても、「それでもいいじゃないか」とする意見がみられます。いうまでもなく、現実的な救済策になるということの評価であり、たとえそこにソロバンをはじいていようとも、それはそれで事業として考えれば当然という見方もあるようです。

 とりわけ、こうした問題に対し、弁護士会も対策を急務として乗り出していますが、率直に言って、弁護士会が現実的にここまでの支援策を打ち出せるかどうか、という点もあります。弁護士会ができないことを彼らが実践しようとしているという評価です。

 その点では、以前書いた国内初となる民間の弁護士就職支援企業「日本司法サービスセンター(JSC)」(東京・千代田区)立ち上げといった動きを想起させます(「弁護士支援民営化という段階」)。それなりの入会金をとるその事業を見れば、ノキ弁に有料で法律事務所が修業の場を提供するという形もあり得るのではないか、と書きましたが、アディーレ法律事務所の挑戦は、弁護士会外がそうしたニーズをカバーしていくという、同じ方向を向いたもののようにもとれます。

 一方で、増員推進派の方々は、おそらく彼らの挑戦を歓迎し、あるいはこうした形をモデルとして推奨するかもしれません。つまり、あたかもこれこそ既存の弁護士が身を削って後進ために行う、あるべき姿として。またぞろ、それを弁護士の意識改革の必要性と結び付け、前記発想に立てない弁護士の「心得」を責めることになるかもしれません。

 今、彼らの挑戦は挑戦として注目すべきだとは思います。ただ、その本当の評価はこれからであり、むしろ6カ月以降になされるべきと思います。いうまでもなく、場所の提供も無論大事ですが、彼らのその指導でどのような弁護士としてスタートを切れたのか、指導された側がどのように受け止めたのか、それもやはり従来の形と比べてどうなのか、そこを見なければなりません。

 「この支援を通じ、弁護士が少しでも『身近な(=ラテン語でアディーレ)』存在となれるような社会貢献を果たして参りたいと思います」

 同法律事務所はこの支援策の案内文をこのように締めくくっています。これが「改革」が掲げ、彼らが銘打っている「身近な」存在に向けた、ひとつのあるべき形とされるのか、「改革」の失敗が生み出した、なんとかしなければならない「即独」「ノキ弁」時代の象徴なのか、前記評価とともに、そこは冷静に見る必要があります。

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