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医療事故訴訟は患者側勝訴率が激減とのこと

j-castニュース:医療訴訟は「冬の時代」 患者側の勝率はガタ落ち

この記事は、12月3日に行われた「医療過誤原告の会」 (宮脇正和会長) の20周年シンポジウムをレポートしたものだが、その中で、鈴木利広弁護士の講演が次のようにレポートされている。
明治36年 (1903年) に東大産婦人科助教授がガーゼを取り忘れで訴えられたのが最初で、これまでを5期に分類した。70年代後半から「医療理解期」、90年代の「患者の権利台頭期」を経て、08年の福島県立大野病院事件をきっかけに「冬の時代」だという。一時期の患者側の勝率4割から今は1割台に低迷している。
訴訟実務の方では、医療事故訴訟のような専門訴訟に訴訟遅延が甚だしいということで、様々な改革を行い、かつ医療関係訴訟委員会が設置されて資料も特出しされている。

それによれば、医療事故訴訟の期間が短縮される傾向にあることは間違いない。平成13年に2年半以上かかっていたものが、平成22年はほぼ2年というのが平均審理期間である。

さて、認容率についても裁判所の統計が示されている。
それによると、一般の地裁一審事件が一貫して85%前後(被告が反論して証人調べなどをした事件に限っても68%から62%)をキープしているのに対し、医療関係訴訟は平成13年が約38%、平成15年に44%とピークを迎え、以後なだらかに低下して平成22年は20%となっている。

この認容には一部認容も含まれているので、実質原告敗訴ともいうべきケースも含まれている可能性があるが、いずれにしても低い水準であることは間違いない。
ただし、医療事故訴訟の和解率は50%前後で一貫しており、これはこれで高いので、医療側の責任が認められるケースはかなり和解で救われいるということもいえよう。

 これだけではその原因分析を行えるものでもないが、いくつかの可能性が指摘できる。
 一つは、医療事故において患者・遺族の救済が急務との認識が一般的だった時代から、医療崩壊の原因に過剰な医療事故責任の追及が指摘され、しかも刑事事件として立件された中には無罪となったものもあり、医療事故訴訟に対する一般的な見方が変化したということが挙げられる。
 また医療事故訴訟の迅速化が事実関係の究明不足を招いて、認容率が下がっているというシナリオも考えられる。もっともその裏付けとなる資料はないので、単なる可能性だし、迅速化のペースも上記の統計によればそれほど無茶な訴訟運営をうかがわせるような数字には見えない。個別のケースでは問題があることもあっても、全体傾向として粗雑な審理とはいえなさそうである。

 医療事故の迅速な解決のために、わざわざ専門委員制度を一般民事訴訟法に導入したのだが、これが活用はされていないということをTwitterの書き込みで見かけた。折角の制度であるだけに、事実とすれば改善方策が検討されるべきだ。

 ともあれ、医療事故訴訟というのは、一方では重大事故に関わる深刻なケースであり、他方では医療行為自体が完全なものではあり得ないという前提で最善を尽くすことが求められ、これを専門家ではない裁判所が裁くという構造がなくなることは決してない。
 医療事故ADRの試みや、医療事故調査委員会の試みなど、事態を改善する試みがいくつも行われ、それなりの進展も見せているが、今後も困難な紛争類型として様々な問題点を提供し続けるものと思われる。

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