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性暴力被害者に寄り添う社会を作るために


2018年1月20日

 性暴力被害やセクハラが、世界的に社会の大きな争点として浮上している。

 去年10月、ハリウッドの超大物プロデューサーのセクハラ疑惑が明るみに出て、映画界から追放となった。その後、被害にあった有名女優らの呼びかけもあり、世界中で女性たちが次々と性暴力やセクハラ被害を訴える「#me too(ミートゥー)」が大きな運動に発展した。これまで泣き寝入りを余儀なくされていた性暴力やセクハラ被害の実態が明るみに出る一方で、一方的な告発によって加害者とされた男性を社会から抹殺するような動きを問題視する向きも出てきている。また、今月になってフランスの女優たちが、行き過ぎた告発が性的自由を奪う恐れがあると反論するなど、セクハラや性被害を巡る論争は世界的に大きな広がりを見せている。

 一方、日本ではジャーナリストの女性が、著名な男性ジャーナリストによる性暴力被害を実名で訴え出たことで、性暴力被害の問題や被害者救済のあり方が関心を集めている。

 その女性は、性暴力を受けた時の状況を克明に男性警察官に説明しなければならなかった時の精神的な苦痛や、男性警察官から被害届けの提出を思いとどまるよう促された経験などを証言し、性暴力に対する警察や検察の捜査が「ブラックボックス」状態にあると訴え続けている。しかし、欧米諸国と比べて日本では、セクハラや性被害を訴え出る女性に対する社会の偏見が根強く残っていることもあり、依然として性被害を告発することが女性に取って大きなリスクになっている面があることは否めない。

 内閣府のデータでは日本で過去に無理矢理に性交された経験のある人の割合は6~7%。しかし、その中には、本当は嫌だけどしょうがないと受け止めているケースは含まれていないのではないかと、千葉大学大学院教授の後藤弘子教授は指摘する。また、セカンドレイプを恐れて泣き寝入りする被害者の数も相当な数にのぼると考えられている。

 実際、性暴力は上司や学校の先生、親・兄弟など知っている人からの被害が多くを占めている。被害にあいながら誰にも相談しなかったと答えた人の割合も7割近くにのぼる。また、誰かに相談しても「早く忘れなさい」、「あなたにも非がある」と言われたり、被害自体を認めてもらえないことが大きな心の傷となっている場合も多い。

 昨年、刑法の性犯罪に適用される条文の改正が110年ぶりに行われた。強姦罪は強制性交等罪と呼称が変わり、それまで女性のみに適用されていた性犯罪の規定が、男性にも適用されることになった。刑の下限も懲役3年から懲役5年に引き上げられ、被害者の告訴を必要としない非親告罪化も行われるなど、性犯罪被害者に寄り添う社会の実現に向けて少しずつ前進はしているように見える。しかし、刑法には「暴行または脅迫」の事実を立証しなければならない規定は残り、刑事告発のために被害者の協力が不可欠なことに依然、変わりはない。密室のなかで行われることが多い性犯罪で、同意の有無を立証することは容易ではない。

 後藤氏は、被害者救済の仕組みは、以前よりは整ってきてはいるが、まだ本当に被害者の立場に立ったシステムにはなっていないとした上で、制度の設計者や法律の立案者たちが、被害者のニーズを受け止められていないところにその原因があると指摘する。

 セクハラや性暴力被害者に寄り添う社会を作るためには何が必要なのか。被害者救済や支援の仕組み、性教育の在り方、社会として性の問題をどう語るのかなども含めて、刑事法とジェンダーが専門の後藤弘子氏と、社会学者・宮台真司、ジャーナリスト・迫田朋子が議論した。

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