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ハフポスト、人気の源だったブログ投稿を廃止

アリアナ・ハフィントン(Ariana Huffington)女史。結果は惨敗でしたが、2003年に米・カルフォルニア州の知事補選に出馬したほどの政治好き。ギリシャ出身、ケンブリッジ大を出たあと米国に渡って石油富豪と結婚、夫は共和党下院議員に。その後、離婚しますが、文才があるので政治コラムを書き、テレビ、ラジオにも露出。美貌と相まって絵に描いたようなセレブ生活の延長で始めたのがブログとニュースアグリゲーションサイトのHuffingtonPost(ハフポスト)でした。2005年5月のことです。

そのごく初期のトップページがインターネットアーカイブに残っています。

ご覧のように、右側にはイラク戦争関連ニュースなどが載っていますが、その左には、「THE BLOG」の見出しの元に、いくつものブログの書き出し部分がずっと下まで続いていました。

そして、その最下部には「THE BLOG」の別ページへのリンクボタンがあり、その先には延々と無数のブログが並んでいました。

当時はまだ珍しかったBlogに、数多くの著名人がハフィントン女史の勧誘を受けて投稿し、それも話題を呼び大人気を博します。

しかし、HuffPostと改称した今日のHuffingtonPostには、どこにもBLOGの文字もボタンも見当たりません。先週木曜日に突然のブログ追放宣言が編集主幹からなされたからです。

HuffingtonPostがどれだけ人気だったかは、2008年、ネットに積極的に取り組んでいた英紙ガーディアンの<The world’s 50 most powerful blogs>という特集記事で世界一に選ばれたことでもわかります。

2005年と言えば、Facebookは出来て間もない頃ですし、Twitterはスタートしていません。ネットユーザーは発信の場を求めていました。そこに、彼女の華麗な経歴で培った人脈に連なる著名人ブログに並んで、誰もが差別なしで投稿出来たのが歓迎されたのです。

ただし原稿料はなし。どんな著名人でも同じです。超人気サイトで多くのアクセスを得て名声を得られれば、それが報酬になるという考えだったようです。中にはこの後ワシントンポストのコラムニストとして有名になる若き日のエズラ・クライン氏などもいました。

そして、2011年2月には、なんと3億1500万ドルの値がついてAOLに売却します。ハフィントン女史は引き続き指揮をとり、ブログも書き続けます。勢いは続き、まもなく、ビジター数がニューヨークタイムズを上回ったと報じられ、翌2012年には新興デジタルメディアでは初のピュリッツァー賞に輝きました。栄光の日々が続きます。

その後、2015年にAOL自体が通信会社Verisonに買収されて、彼女自身は2019年まで編集主幹の座を約束されていましたが、2016年に新たなベンチャー企業立ち上げのためにHuffingtonPostを去りました。当時すでに66歳。HuffingtonPostでやることはやったということだったのでしょうか。

そしてその後任に選ばれたのが、NYタイムズの上級編集者で、アフリカ、南アジアの海外報道経験の長いリディア・ポルグリーン(Lydia Polgreen)女史。当時41歳。就任1年余を経て、彼女がブログ執筆者(HuffingtonPostではcontributor=寄稿者=と呼んでいます)の10万人以上というネットワークを全廃するという声明を、この木曜日に出し、直ちに実行されました。

HuffingtonPostのオープンプラットフォームについてポルグリーン主幹は「発足した2005年当時、Facebookは揺籃期だったし、Twitterはなかった。その時代に有名、無名を問わずたくさんの人にメガホンを与え、民主化を進める上で革命的なアイディアだった」と評価します。

しかし、個人が発信する様々なプラットフォームが存在する今は、「誤った情報の津波で民主化は脅威に晒されている。全員がメガホンを持ってがなり立てては、何も聞こえない。我々は雑音の中で聞くべき声を示す」と述べ、編集部主導で、専門家による「オピニオン」と「パーソナル」のセクションを設けることにしたとのことです。

確かに、発足当初のHuffingtonPostは、ブログ以外の記事はリンクかパクリ記事めいた内容が少なくなかったのですが、今は210人のスタッフを擁しているので、編集能力も高まっているのでしょう。インターネットアーカイブで1年ほど前のページを見ると、初期のようにブログ記事は目立つ体裁ではなくなっていました。

そして、ポルグリーン主幹の頭にあったのは、就任直後からメディアを揺さぶっているFake newsへの対応ということでしょう。世界最大数のcontributorを抱えるサイトだけに、fake newsが紛れ込む危険性も最も高いでしょうから。

折しも、簡潔で質の高い記事で注目度が上がっているAXIOSのJim VandeHei CEOが、2年目を迎えるにあたって「より大きなニュースと情報のハブになるために、国際報道を充実させ、200人のエキスパートを協働して、さらに質を高める」と水曜日に記事で宣言していました。

一時は破竹の勢いだったBuzzfeed、Vice、Mashableといった有力デジタルメディアにも陰りが見え始めた今、HuffingtonPostにしろAXIOSにしろ、そのトップは、記事の質の高さを追い求める以外、生き残りの道はないと見定めているのでしょう。おそらくは将来の課金を念頭に置きながら。

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