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エジプト人は軍部=性善説。未来は大丈夫か

 独裁者ムバラクは追い出したのだけれど、その独裁者が出身母体とした軍部に民主化への段取りを丸投げ――エジプトで起きている事態は歴史を知る者の常識からは目を疑うものです。行政府が倒れたなら国会に実権が移るべきですが、エジプトの国会は露骨な選挙干渉の結果、オール与党の異常さであり、国民の信頼を得られない事情があるのでしょう。憲法の規定は無視し、一夜明けて軍最高評議会は現在の内閣を暫定的に延命させ、国際間の条約、約束は維持することを明らかにしました。これにはイスラエルとの平和条約も含まれます。

 カイロにある、イスラム教徒の大半を占めるスンニ派の最高学府アズハルが出した声明「アズハルは自由と正義という原則に導かれることを求める」はこう述べます。「アズハルがエジプトの行く末を決定する立場にある者たちの賢明さに信頼を置いていること、そして軍最高評議会およびその名誉ある男たちが約束したことは(イスラム法的に)正当なものであり、それは自由で誠実な人間の約束であることを確認した」「選出された(新しい)政権への平和的な移行が行なわれること、そしてできる限り早い時期に(非常時対応の)すべての例外的な処置が取り消されることを望んでいる点についても指摘した」

 何という楽天家ぶりでしょう。しかし、この国には他に打つ手が無いのも事実です。メディアの報道を比べるとウォール・ストリート・ジャーナルの《UPDATE2:ムバラク大統領辞任、揺れる中東》が最後に何があったのか一番、要領よく説明していました。

 「米当局者が11日明らかにしたところによると、ムバラク氏の辞任発表前の48時間に政府内で共有されていた機密情報報告では、エジプト政権は『状況を正しく把握していないほか、軍部はムバラクの取り巻きに一段と我慢できなくなっていた』ことが明らかになっていたという。同当局者は『特に軍部の転換点は10日のムバラク演説のトーンだったと』と語る」

 「エジプト軍高官に近い関係者によると、危機が長引く中、タンタウィ国防相とスレイマン副大統領の関係がほころび始めた。ある軍関係者は『スレイマン氏が野党からいかなる種類のコンセンサスも得ることできないと分かると、軍部は介入を決めたようだ』と指摘。『スレイマン氏がしたことはすべて状況を悪化させただけで、デモも増えた』」「デモ隊が11日、政府の主要機関などを取り囲み、抗議行動が拡大すると、軍指導部は行動する必要があると決定した」

 国民を代表できる民主的な政治勢力を育てるには、本来は相当な時間が必要です。迫害されてきたイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」以外には大きな政治勢力を欠いたまま民主化を進めなくてはならず、憲法の規定も無視せざるを得ない危うさは大変なものです。

 ところで、エジプトの事態を中国政府は報道統制を敷いて国民に出来るだけ知らせまいとしているようです。《エジプトは他人事でない、中国は5日に1回騒乱が勃発》(サーチナ)は「騒乱事件は全国 29省・自治区・直轄市で起きたが、43%は地元と上級の2つ以上の政府の介入でようやく鎮圧に成功している。また、事件が外部に露見するルートは、インターネット特にミニブログが大部分を占めた」「複数の政府が一時的に制圧しても、最終的にはエジプトのように大規模な火山の爆発が起こるだろう」としているのですが……。

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