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神話の国・日本、教科書会社は「原発安全神話」から抜け出せず、ウソを言い続けるしかないのか

◆日本人は、むかしから「神話」を信じやすい民族である。だから、大東亜戦争時には、「神州不滅」とか、「神風が吹く」、「浮沈戦艦大和」、そして極めつけは「現人神」である。国民の多くが、これらの言葉を信じ切っていたらしい。

だが、神州は不滅どころか、2発の原爆でギブアップして、国土は縮小された挙句、進駐軍に占領された。蒙古襲来の時のような神風は、ちっとも吹かず、戦艦大和は1945年4月7日、沖縄に向けての海上特攻の途中、待ち伏せしていた米海軍機動部隊の艦船、爆撃機などによる猛攻撃を受けて、沈没(北緯30度43分17秒 ・東経128度04分00秒)の海底で藻屑にされてしまっていた。昭和天皇陛下は1946年1月1日の年頭詔書で、いわゆる「人間宣言」を行われる始末だ。天皇の神格性や「世界ヲ支配スベキ運命」などを否定され、新日本建設への希望を述べられた。

当時の国民学校(現・小学校・中学校)では、進駐軍の命令で使われた教科書のうち、国家主義や戦意を鼓舞する文章の箇所ついては「墨汁で塗りつぶして読めないように」という指示が出された。「教科書の墨塗り」である。教科によっては、ほぼ全行に抹消線が引かれたものもあったという。敗戦まで教え子を戦場に送っていた教師の大半が、一夜にして、思想信条を変更、変わり身も早く、あっさりと宗旨替えした。戦争遂行に消極的だった者たちに「非国民」のレッテルを貼り、隣人たちを「村八分」にして差別していた連中も、いつの間にか、「戦争反対論者」に化けていたのである。

◆ところが、あれから66年経てきた間に、また同じような過ちを繰り返してきた。今度は、「原発安全神話」であった。科学者まで、まるで物の怪に取り付かれたかのように、この神話を信じ切っていたのだから恐ろしい。経済産業省や東京電力御用を務める「似非学者」たち多数が、テレビに出演して、東日本大地震・大津波を「想定外のことだった」と恥ずかしげもなく、言い分けする姿により、原子力学会の「思考停止」を印象付け、学問的堕落を曝け出していた。

一般国民、素人が「想定外のことを想定」して、「科学的知見を深め、だれよりも早く、社会に警鐘を鳴らし、災害の予防措置を政府に講じさせる。これが、学者の基本的な務めであるはずなのに、これを怠ってきた。その責任は、実に重いのである。

朝日新聞デジタル版は12月16日午前3時、「原発の負の側面、教科書でも強調各社が訂正申請」という見出しをつけて、以下のように配信している。
「東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故を受け、来年度の小中高校の教科書の多くが書き換えられる。文部科学省によると、中学の教科書では全体の3割で訂正申請が出された。原発については安全性の記述が弱まり、負の側面を教える記述が増えた。
『シーベルト』などニュースでよく耳にする言葉も盛り込まれた。文科省によると、来年度発行予定の教科書は小中高で計約1300点。今月8日までにこのうち106点について震災・原発事故関連の訂正申請があり、認められた。とくに中学校用は全131点の3割近い37点に及んだ。
検定作業が終了したのは3月末で、直前に起きた震災と原発事故は盛り込めなかったため、検定段階の内容から改めた。高校用の大半と小学校用は現行の教科書を書き直した。原発関連はこれまで効率の良さや温暖化への影響の小ささの記述が目立ったが、負の側面の記述を大幅に増やした教科書が多い。
東京書籍は高校現代社会で『原子力発電の《安全神話》は根底から覆された。
世界では『Fukushima』の事故を契機に、原子力発電所の全廃を決めるなど《原発推進》を見直す国が出てきている』とした。
開隆堂出版は中学技術・家庭(技術分野)で『原子炉は、コンクリートなどでできた何重もの厚い壁で守られ』との記述を削除した。清水書院の中学社会(公民)も『(事故が起きれば)大きな被害が生じる危険性がある』を『とり返しのつかない大きな被害が生じる』と強めた。一方、太陽光などのクリーンエネルギーの記述は『石油や石炭をおぎなえるようにはなっていない』から『大きな期待がかけられている』へと前向きに書き直した。
放射線への関心の高まりを受け、放射線の強さと体への影響の関係を示した図や『暫定規制値』といった言葉、『シーベルト』の説明などを書き加えた教科書もある。数研出版の高校物理基礎は、放射線の影響を『将来のがんの発症の原因となったり、被曝(ひばく)量が大きい場合には急性の障害を引き起こすこともある』と説明した。(花野雄太)」
朝日新聞は12月16日付け朝刊「1面」でこの記事を掲載したほかに、「社会面」(39面)で、「『原発の判断材料提供』『教科書各社表現・分量に悩む」「津波想像する比喩変更」という見出しをつけて、原発」「反原発」の狭間で表現の仕方に苦労する教科書会社の悩みをレポートしている。「原発安全神話」の妖怪にも依然として取り付かれたままでなければ、文部科学省の検定が通らない。

国家のコントロール下にある教科書会社の宿命でもある。「原発安全神話」から抜け出せず、ウソを言い続けるしかないのか?

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