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「日本財政~現実味を帯びる破たん、国民心理を理解し資金を表に出せ」

ドル資金供給3ヶ月物ドル資金応札額約3兆9000億円
資本流出規制新興国がマネー引き留め策
人民元相場6営業日連続でストップ安

▼埋蔵金であれ何であれ、表に出てこなければ意味はなし

欧州中央銀行(ECB)が7日実施した資金供給の入札で、ユーロ圏の金融機関からの3カ月物ドル資金の応札額が500億ドル(約3兆9千億円)と、前回11月10日の入札分の128倍に達しました。

世界の主な6中銀が11月30日に決めた協調策で、ドル資金供給の金利や担保の基準が軽減されたことから、利用希望が急増したとのことです。

ドル資金供給については一応の合意を見たので、市場は一安心という状況になっていますが、実際には未だ不安材料は消えていません。

2011年12月12日号のNewsweek誌にはバーナンキFRB議長の「Double Dip Depression(2番底)」という記事が掲載されていました。

大統領選を控えてもオバマ米大統領は、米経済復活の明確なポリシーを打ち出せず、何をやっても経済が上向いて行かないという厳しい状況が語られています。

もうすぐクリスマスを迎えようという時期に何とも情けない話です。

日本も米国のことを言えた状況ではありません。今財務省のHPでは、我が国の財政状況が危機的になりつつあることを説明した映像を見ることができます。

財務省『日本の財政を考える』映像を見る →http://www.zaisei.mof.go.jp/movie/zaisei/

私は日本国債の危険性などについて10年以上前から訴えてきましたが、ようやく財務省もそれを認める立場をとるようになったのだと思います。

十数年前、大蔵省の官僚と一緒に私は勉強会を開催していたことがあります。彼らは一様に、日本の経済成長率は約4%あり、増税の余地があるので大丈夫だという趣旨のことを述べていました。

私の4%の経済成長率も危うい数字だし、労働人口も減少するので厳しい状況になるはずだとの意見とは平行線でした。

当時、最も楽観的だったのは証券会社の人で、日経平均株価は6万円まで上昇するという見方をしているほどでした。

こうした見解を持っていた一部の人達は、バブル崩壊後、地価は10分の1以下に下がると主張し続けていた私に、「大前が言うから、それが実現してしまうのだ」と圧力をかけてきたことさえあります。

また未だに日本国債は大丈夫だと考えている官庁エコノミストがいます。日本にはいわゆる「埋蔵金」があるし、バランスシートで見ると借金相対する「資産」があるので問題ないという意見です。

または国民の1400兆円に及ぶ個人金融資産があるので、まだまだ余裕だと見る人もいます。

この種の意見の致命的な問題点は、「埋蔵金」でも何であっても「表」に出てこなければ意味がなく、国民心理を理解して「表」に出てくるように仕向ける必要性を理解していないことです。

ギリシャやイタリアに対するマーケットの反応を見ていても、「表」にでてこない限りは無意味だということは理解できるはずです。

日本にしてもいくら国民の資産があっても、それを全て日本国債の購入に充てられるわけではありません。特に今後、日本国債の危険性が高まれば高まるほど、国民にしてもバカではありませんから「もう買わない」という判断になっていくでしょう。

あと5、6年は大丈夫だと主張する官庁エコノミストがいますが、実際には相当厳しいと私は思います。

重要なことは、国民心理を正しく理解して資金を表に出すことです。それが私の提唱する「心理経済学」です。

▼インド経済、中国経済の動向

新興国で資本流出を懸念した政府当局の動きが目立ってきました。インドは海外投資家の債券・株式購入規制を緩和、ロシアは資本流出規制の検討に着手したもようです。

欧州債務問題の深刻化に伴い、手元資金の確保を迫られた欧米金融機関の資金引き揚げが新興国に波及しています。

新興国に貸し込んでいるのが欧州、その欧州に貸し込んでいるのが米国という構図になっています。ゆえに新興国から資金が欧州に引き上げられると、そこからまた米国へ資金が引き上げられていくという循環になっています。

こうした影響もあって、インドではルピー安が進み、ムンバイSENSEXも年初と比べて、20%ほど下落しています。ただしインドの場合には政治のリーダーシップ問題が影響している面も否定できないと思います。

インドの動きに対して不思議な動きを見せているのが、日本です。株価は下落しているのに相変わらず、為替が強くなっています。

海外の投資家は、「まだ日本国民が国債を買っている。資本逃避が起きていないので安全だ」という認識をしているのかもしれません。これは明らかに誤解です。

日本国民は実態を知らず、反応していないだけです。そういう日本の国民性を理解していないために、為替だけが強くなるという状況を生み出しているのだと思います。

一方で7日の上海外国為替市場では、人民元の対ドルレートが一時、1ドル=6.3659元を付け、ストップ安となる0.5%まで下落しました。

取引時間中のストップ安は6営業日連続とのことですが、長いトレンドの中で見るとそれほど大きく「元安」に振れているという状況でもありません。

基本的な値動きは、ある一定のレンジ(幅)の中にあり、最近はその中でも行き過ぎの感があったものが調整され、元安の方へ張り付いているという状況です。

人民元を完全フロート制に移行すべきか?という議論がありますが、その場合には相当な危険があると私は思います。

一時的に「元高」に振れた後、「中国経済の実力はそれほどでもないのではないか?」と言われはじめ、一気に空売りを仕掛けられる可能性が高いからです。いわゆる「メキシコ型」と言われる破綻への道です。

実際、中国経済について指摘できそうなポイントはたくさんあります。「中国経済はそれほど競争力もないし、強くない」「これからは人件費も上がるし、通貨も人為的に安く押さえられてきたに過ぎない」などと言う事は簡単です。

管理相場とは違い完全フロート制の場合だと「空売り」ができるため、実体経済よりも先んじて強くなってしまった通貨は、空売りによってひっくり返されるということが歴史上何度も起こってきました。

米国はまだまだ人民元が高すぎると主張し続けていますが、これは口癖のようなものでしょう。

人件費のことなどを考えても、今後も人民元が一方的に高くなりつづけることはないと私は見ています。

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