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豚に真珠、野田内閣に経済統計

「(先行きは)各種の政策効果などを背景に景気の持ち直し傾向が続くことを期待している」。「東日本大震災の影響で依然厳しい状況にある中で、緩やかに持ち直しているというのが総合的な評だと思う」。

12月の企業短期経済観測調査(短観)で企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が2期ぶりに予想を上回る悪化を示したことに関して、藤村修官房長官は15日午前の記者会見でこう発言した。

「穏やかな回復」というのは大企業製造業のDIこそ▲4と、前回9月調査時点での先行き見通しの+4を下回ったものの、大企業非製造業のDIが+4と前回9月末時点の先行き見通しの+1を上回ったことや、中小企業のDIが製造業(▲8)、非製造業(▲14)ともに前回見通し(製造業▲12、非製造業▲22)を上回ったことなどを根拠にした評価のようだ。

しかし、「売上・収益計画」を見てみると、2011年度計画は大企業製造業で▲6.7%、非製造業で▲10.6% の減益計画となっており、前回調査からそれぞれ▲6.4%、▲13.9%の大幅な下方修正となっている。そして、さらに下方修正幅は上期から下期に大幅に拡大して来ており(大企業製造業上期修正率+7.7%、下期修正率▲18.0%、大企業非製造業上期修正率+5.7%、下期修正率▲11.8%)、統計内容を詳細に見ていくと「穏やかに持ち直しているというのが総合的な評だ」とはとても言えない状況である。

どのような弱めの統計が発表されても「(景気は)穏やかに持ち直している」「景気は踊り場にある」という評価を繰り返す野田内閣。その判断は客観的なものというよりも、「消費増税」を正当化するために「景気は回復基調にある」と国民を洗脳するための屁理屈。経済状況に応じた政策を打ち出す意思を持ち合わせていない政権にとって、日銀短観を始めとした経済統計など「豚に真珠」「馬の耳に念仏」といったところ。

「穏やかに持ち直している」ことを示す日銀短観が発表された15日、政府の国家戦略会議(議長・野田首相)は、東日本大震災からの復興や経済成長の道筋を示す「日本再生の基本戦略」素案をまとめた。再生可能エネルギーなど環境分野の育成やインフラ事業の海外展開を成長の柱に据え、2020年度までの平均で名目経済成長率3%程度とする目標を掲げ、今月下旬に決定する。

今回の国家戦略会議で掲げられた目標、「2020年度までの平均で名目成長率3%超、実質成長率2%超の経済成長」は、「民主党の政権政策Manifesto2010」で大々的に謳われていたもの。それが今まで放置され、今頃になって素案をまとめるというのは完全な「職務怠慢」。
しかも、ドラギECB総裁が「短期的なマイナス成長は不可避」と公言する「財政緊縮措置」が「断固たる決意」であるのに対して、「2020年度までの平均で名目成長率3%超、実質成長率2%超の経済成長」は、ユーロ圏の債務危機や急激な円高の進行などを踏まえた単なる「政策努力目標」と位置付けた。

「断固たる決意」で「増税を伴う緊縮財政」に臨むことを明言している野田総理が、「政策努力目標」に過ぎない「2020年度までの平均で名目成長率3%超、実質成長率2%超の経済成長」を軽視するのは火を見るよりも明らか。

「震災」「ユーロ圏債務危機」「円高」「タイの洪水」…。野田総理の「努力」を無に帰するリスク要因は現時点でもあるし、これからも起こり続けるのが現実の社会、経済である。既に現実となっている「震災」「ユーロ圏債務危機」「円高」「タイ洪水」に対して、積極的かつ有効な対応策を全く打ち出せていない野田政権が、これからも起こり続けることが確実な環境変化に、突然手腕を発揮することなど期待することは出来ない。
確かなことは、野田総理が「不退転の決意」で「増税を伴う緊縮財政」に邁進することによって、「長期的低成長」から脱却出来ずにいる日本は「短期的なマイナス成長は不可避」という状況にも追い込まれるということである。そして、そこから脱却するための処方箋はなく、その後は「神頼み」である。

外部環境の変化を理由に「民主党の政権政策Manifesto2010」で大々的に謳われていた「2020年度までの平均で名目成長率3%超、実質成長率2%超の経済成長」を「努力目標」に格下げした野田総理。外部環境の変化がない状況下でなければManifestoを守れないというのは、「自動車教習所でならうまく運転できるが、外部環境が刻一刻と変わる路上では難しい」と自らの運転能力の乏しさを示すようなもの。「外部環境が刻一刻と変わる」状況に対応出来ない総理は「無用の長物」でしかない。

思い返せばほぼ1年前の昨年の12月12日、菅前首相は「(首相就任から)半年たった。これまでは『仮免許』だったが、 これからが本番で、自分の色を出していきたい」と言い放って世間の批判を浴びた。同じ轍を踏まないようにしたのか、野田総理は「仮免許」期間にも関わらず「自分の色」である「増税を伴う緊縮財政」に邁進して来ている。その結果は、首相就任から僅か3か月での支持率急落、国民との「絆」の喪失である。

運転能力の乏しい首相が打ち出す「自分の色」は、「失われた20年」に苦しむ日本経済に止めを刺しかねない「暴走」である。教習所の練習車には、教官席に車の暴走を止めることの出来るブレーキがついているが、「増税を伴う緊縮財政」に向かうアクセルしか付いていない「完全素人内閣」の暴走を国民が如何に食い止められるか。日本の将来はそこにがかかっている。

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