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立憲民主党の基本政策「公務員人件費削減」は官製ワーキングプア増大で更なる貧困・自己責任社会まねく

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 また、公務員の人件費削減は消費支出減少をもたらし景気を悪化させ結局、税収の減少をもたらします。2012年2月に当時の野田政権が人事院勧告を大幅に超える国家公務員の賃下げを強行しましたが、その際、「国家公務員の賃下げは財源確保どころ財源を減少させる」ことを指摘しました。



 上の表にあるように、国家公務員の賃金は、地方公務員や、公務員に準拠する民間労働者625.8万人に直接影響します。この625.8万人は日本のすべての労働者4,898万人の1割を超えて12.7%になります。



 上の表は、労働運動総合研究所(労働総研)が、「国家公務員賃金7.8%削減の経済に対する影響」を試算したものです。野田政権が狙う7.8%の賃下げで、家計収入は2兆7千億円も減少し、家計消費は2兆円減少。国内生産とGDPも大幅に減少し、税収が4,213億円も減少してしまいます。



 民間企業の中には自社の賃金決定に国家公務員の賃金水準を活用する例も見られるため、上記で指摘した直接影響する労働者の賃下げだけでなく、民間全体の賃下げに連動していきます。そうすると、民間の賃金水準を毎年調査し、役職や年齢、学歴など同種同等の比較をして出される人事院勧告に基づいて決められる国家公務員の賃金もさらに下がることになります。「国家公務員の賃下げ」→「民間労働者の賃下げ」→「国家公務員の賃下げ」という公務員と民間労働者の賃下げが互いに連動する「賃下げの悪循環」は、労働者の生活悪化をもたらすとともに、内需を冷え込ませ、景気をますます悪化させてしまいます。こうして、実際に以下のグラフにあるように主要国で日本だけ賃下げになっているのです。



 私は国立研究機関も担当していますが、立憲民主党の「基本政策」の中に「■基礎研究を強化し、イノベーション(技術革新)につながる環境を整備します。」という項目もあります。国立研究機関の多くは「公務員人件費削減」によって民間型の独立行政法人化されました。加えて基礎研究を進めるための運営費交付金も「公務員人件費削減」と同じ流れの中で削減され続けています。そして、研究者を非正規で使い捨て荒む研究現場、職業として崩壊しつつある研究職、ポスドク若手研究者は育休も産休もなく家族形成すら困難、というのが国立研究機関の現場の実態です。基礎研究を強化するためにも公務員人件費削減の流れを反転させる必要があるのです。

 最後に以前紹介した斎藤貴男さんと田端博邦東京大学名誉教授の指摘を、立憲民主党に贈りたいと思います。

 ▼斎藤貴男さんの指摘

 公務員バッシングすればするほど政府・財界の“思うツボ”、政府・財界・特権官僚による悪政から目をそらす“うっぷん晴らし”の代償は“自分で自分の首を絞める”民間・公務労働者共倒れ貧困社会の到来

 国家公務員の給与削減は、政府・財界にとって「一石二鳥」をもたらします。なぜなら、公務員給与削減は、結果として公務員と民間労働者を共倒れさせることができるからです。

 非正規労働者が増え、貧困が広がるなかで、相対的には少しだけめぐまれている公務員に対して意図的に攻撃を加えるのは、民間でひどい目にあっている人たちの感情を公務員バッシングにもっていくことで、事態の本質から目をそむけさせるためです。今は一般の人たちも悲しいかなそれにまんまとだまされてしまっています。

 多くの民間労働者、非正規労働者が苦しい生活を強いられている事態の本質は、企業の収益がどんどん株主に回り、経営者たちが何億円、何十億円の報酬を手に入れる一方で、民間労働者の賃金をカットし続けていることにあります。民間労働者が怒りをぶつける本来の相手は、そういう理不尽な報酬を手に入れている経営トップたちです。また、今の格差社会をつくった政治や特権官僚に対して怒りを向けるべきです。そうしてこそ、労働者にまともな賃金と権利が保障されていく、まともな社会、公平な社会に変えることができます。

 ところが、今の事態は、すべて公務員が悪いからだと問題をすりかえ、問題の本質を見えなくさせられてしまっているわけです。これはかつての国労バッシングと同じで、問題の本質をすりかえるために、つねにスケープゴートを作り出す手法で、今は公務員そのものがバッシングにさらされていて、それが橋下徹大阪市長のようにさらにエスカレートする傾向になっています。

 しかし、民間労働者と一般市民が、公務員バッシングをやればやるほど、政府・財界の“思うツボ”にはまってしまうことになります。公務員の給与が下がったら民間労働者には何が起こるでしょうか? そのときは一時的に“うっぷん晴らし”ができたということでうれしいかもしれない。ところが大変な事態に気づくことになります。多くの経営者は当然のように「公務員の給与が下がったんだから君らの賃金はもっと下げますよ」と言います。結果的に、“自分で自分の首を絞める”ことになってしまうのです。

 消費税増税が強行されれば、多くの中小零細業者はつぶされます。政府・財界は中小零細業者をつぶすために消費税増税をやろうとしているとも言えるのです。国鉄の分割民営化を見ても分かるように、政府・財界にとって労使一体ではない労働組合は許せないので、つぶしたいのです。公務員の労働組合が労働者の権利と労働条件の向上のために声をあげ運動していることを、政府・財界は許せないのです。だから、公務員バッシングによって、公務員と民間労働者を敵対させて、公務員の労働組合を解体したいのです。

 公務員の労働組合は、自らの労働条件を守るためには、民間労働者に理解してもらう方向の運動をする必要があります。民間労働者、一般市民に理解を広げて、公務員給与削減や公務員バッシングを跳ね返す必要があるのです。

 ▼田端博邦東京大学名誉教授の指摘

 「幸せになる資本主義」には「小さな政府」=「自己責任社会」でなく「大きな政府」による福祉国家と「大きな労働組合の力」が必要


 雇用や教育、社会保障、住宅などの公共的な支えが弱くなればなるほど、人々は「自己責任」で暮らさざるをえません。公共性の欠如は人々の利己心を増殖し、公共支出の増加は、利己心から人々を解放するといえるでしょう。

 そして、雇用や教育、社会保障、住宅などの公共支出は、先進主要国の中で北欧がもっとも高く、日本がもっとも低い水準にあります。ところが、新自由主義の台頭や「大きな政府」批判は、先進国でもっとも「小さな政府」である日本において猛威をふるっています。

 世界でもっとも「大きな政府」を持つ国のグループに入るスウェーデンで、2006年9月に保守政党が政権をとるという政権交代がありましたが、そのとき選挙で勝利した保守政党が掲げた政策は、「大きな政府」「福祉国家」を維持するというものでした。北欧では保守政党にまで「大きな政府」が国民の利益になると考えられているのです。

 日本のようなもっとも「小さな政府」の国で、「大きな政府」への批判が起きるのは、政府に対する不信がベースにあるからだと考えられます。それは、日本における民主主義の欠如などから、政府支出をコントロールできないので、高い税金を払っても、国民のためには使われないだろうとする考え方が支配的になっているということでしょう。そうだとすると、日本において「大きな政府」「福祉国家」をつくっていくためには、政治的な民主主義をきちんと確立していくことと、自己責任ではなくて、お互いがつながっていく共同・連帯を、国民の間で発展させていく必要があるということになります。

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