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働く意欲があるにも関わらず年齢が理由で職がないなど、老後の過ごし方が一律かつ機械的に規定されている - 「賢人論。」第52回須賀千鶴・藤岡雅美氏(中編)

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賢人論。今回のゲストは、「経産省 次官若手プロジェクト」から須賀千鶴氏・藤岡雅美氏の2名を迎えた。今年5月に発表し大反響だったレポートでは、高齢化問題や格差問題をはじめ、現代社会に存在する問題が誰にも分かりやすい形で提出された。中編のメインテーマは高齢者雇用の問題。「年齢によって生き方の選択肢が規定されるのはおかしいこと」と藤岡氏は指摘する。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

「人生100年」時代になり、高齢者はますますお金を溜め込んでいる

みんなの介護 超高齢社会と言われる今、老後への不安をもつ方も多くいらっしゃいます。

須賀 大企業にいた方は、手厚い退職金を出してもらえるなど比較的安心できるのかもしれませんが、一方で、就職氷河期にぶつかったせいでそういうコースに入るチャンスすらなかった世代もある。

生まれる時代によって、老後資金を蓄えるインフラがなかったせいで、はたと気がついてみると、格差がついてしまっている。同じように生きていても、不運としか言いようのないことで一生そこから抜け出しにくくなってしまう、というのはおかしいです。

藤岡 退職金に関して言えば、「20年以上企業に勤めてるか否か」で税控除額にも大きな差があります。現代ではミスマッチなシステムになってきたなあと思います。昔は一社で勤め上げることが当たり前だったから良いかもしれないけれど、今は途中で会社を移るのが当たり前、という時代ですから。

みんなの介護 退職金の支払い方や年金制度を含め、安心して老後を迎えられる制度の再設計が求められているのですね。

藤岡 今の社会保障は、高齢者が“誤差”程度の割合しかいなかった時代につくられたもの。当時はそれで上手くいっていたのだとしても、今のような超高齢社会になると、それと違った社会保障のあり方が必要でしょう。

みんなの介護 具体的には、どういった制度変更が必要なのでしょうか?

藤岡 年金に関しては、2030年までに支給開始年齢が65歳へ引き上げられることが決まっていますが、その65歳というラインが本当に今の日本人の現状に合っているかどうかと言われると、少し疑問が残ります。例えば、年金は自己申告によって受給開始年齢を引き上げ、その代わり、毎月多めに支給を受け取ることができる、という仕組みが用意されているのですが、ご存知でしたか?

こういったあまり知られていない、あるいは使われていない制度をきちんと広報していくということも含めてちゃんとやっていくことが、今後社会保障をうまく機能させていくためにはますます必要になってくるでしょう。

みんなの介護 藤岡さんは高齢者雇用の問題にも注力して取り組んでいるそうですが。

藤岡 雇用制度は、僕がメインテーマとして取り組んでいる領域でもあります。高齢者個人の働く意欲や、抱えている将来不安なども含めて、老後の生活を設計していくことは直近の課題です。将来不安が「収入の不安」と「支出の不安」の2つに分類できるとしたら、このうち大きいのは、やはり後者。「いつ収入が途絶えるか分からない」ということより、「いつ支出が必要になるか」ということの方が怖いでしょう。

「人生100年」時代になり、この先いくらお金がかかるか見えづらくなってきていることで、高齢者の方はますます、お金を貯め込むようになってきている。それが消費の停滞にも影響を及ぼしています。

みんなの介護 いつ医療費用や介護費用が必要になるかわからないので、お金を使うのが怖い、と。

藤岡 働き方に関しても、65歳を越えても働きたい人は働けばいいし、反対に、早めにリタイアしたい人はできる、という風に、生き方を選べる環境にしていくべき。制度上「65歳から年金支給」とされていることで、どこか「65歳になったら人生アガリ」という感覚が刷り込まれ、それによって老後の生き方の選択を狭めてしまっているとしたらよろしくない。制度は、ともすれば人の意識まで左右してしまうものですから。


年齢がその人の「実体」まで切ってしまうのはいかがなものかと

みんなの介護 今はまだ、老後の暮らし方を選びにくい状況でしょうか?

藤岡 定年退職後の働き方に関しては、一律かつ機械的に規定されてしまっていますね。定年になると一律解雇したり、給料が下がる、というのはおかしな話。定年延長・年金延長をどう変えていくか、という議論は盛んになってきています。

定年延長期間の65歳が終わると、まだ元気なのに家で寝ているしかなくなったり、働きたくてシルバー人材センターに行っても、自転車の整備など限られた仕事しか回してもらえない、ということになりがち。個々人の意欲や体調に関わらず、年齢で生き方をバスン、バスンと切られてしまう感じです。

「ライフスタイルを変えるキッカケ」程度にするのなら、年齢はちょうど良い指標だと思うんですが、その年齢が個人の実体まで切ってしまうというのはいかがなものかと。「何歳から受給開始」という線引きにこだわらずに、もっとフラットな制度にしてもいいと思います。もう一律かつ機械的に制度をつくる時代ではないので、やはり「選べる」ということがこれからの時代、キーワードになってくるのかなと。

みんなの介護 なぜそういった不自由さが生じてしまっているのでしょうか?

藤岡 現状、日本の雇用制度には全般的な歪みがあって、高齢者雇用の問題は、そういったものの結果として表出した問題であると捉えるべきです。

アメリカ等諸外国はほとんど、職務を限定して雇用する「ジョブ型」雇用を採用しているのに対し、日本は「メンバーシップ型」雇用であると言われています。日本の雇用は、いわば就「職」ではなく就「社」と言うべきもの。

みんなの介護 つまりある特定の仕事に専門的に取り組むのではなく、会社の中でさまざまな仕事を回されていく。

藤岡 メンバーシップ型雇用、新卒一括採用、終身雇用といった日本型の雇用制度が、効率的な仕組みとして機能していたのは昔の話。

最近は世の中の情勢が変わってきて、そうでないものが求められるようになってきた。しかし企業だけでは従来の雇用・人事システムを変えることが難しいので、国も協力しながら一緒につくっていきたい、というところです。

日本の中でも介護士や看護師さんのような資格系のお仕事は「ジョブ型」に近いですよね。各職場によって多少業務のやり方に違いはあるにせよ、スキルそのものは連続性があって、それぞれの施設を渡りながらキャリアアップできる、というイメージ。もちろん、「雇用の流動性が高い」ということは「定着率が低い」ということと表裏一体ではあるのですが、一般企業のように極端に流動性が悪い、というのもまた問題だと思います。

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