韓国の康京和外相は9日、従軍慰安婦問題の解決を確認した2015年12月の日韓合意に関する韓国政府の新方針を発表いたしました。
本件では基本的に日本政府は静観でよろしいでしょう。
韓国政府が勝手に日韓二国間の国際合意を見直して再交渉を目指し、勝手に再交渉を諦めたわけです。
しかしながら韓国政府がこの「新方針」で何を成し遂げようとしたのか、そして何をどう諦めたのか、諦めてないのか、は、冷静に分析する必要があります。
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韓国、慰安婦で10億円拠出 再交渉求めず、新方針発表
http://www.sankei.com/world/news/180109/wor1801090029-n1.html
新方針を整理します。
基本は、「合意は同問題の真の解決にならない」としながらも、「合意の再交渉は求めない」ということです。
で、朴槿恵(パク・クネ)前政権時代だった2015年末の同合意に基づき設立した慰安婦被害者支援財団「和解・癒やし財団」に日本政府が拠出した10億円に、韓国政府も同額の10億円の予算で負担し、拠出金のだぶった扱いについては日本側と協議するとしました。
ここは非常にわかりづらい新方針であります。
時系列で整理します。
最初韓国政府は一部慰安婦本人や支援団体の意向もあり、日本政府が拠出した10億円を全額韓国政府が肩代わりし、日本政府には拠出金を返却、その上で、慰安婦被害者支援財団「和解・癒やし財団」を解散、実質2年前の日韓同意を骨抜き・無効にしようと計画いたします。
しかし外交裏交渉で、日本政府は同意の変更は一切認めない、すなわち10億円の返却は一円も認めず、日本政府が慰安婦に援助金を拠出した実績を無にしようとする韓国政府の動きに、てこでも同意しませんでした。
日本政府の強い反発と国内支持団体の板挟みにあった韓国政府は、日本政府の同意なきまま韓国政府による10億円の拠出を強行、しかし日本政府への拠出金返却はあきらめ、そうなるとお金がダブりますから、その使途は「日本側と協議」とうやむやにしたわけです。
この苦肉の策を説明しつつ、康氏は「被害当事者の意思を十分に反映しなかった合意は慰安婦被害者問題の真の解決にならない」と表明する一方で「合意が両国間の公式なものだったことは否定できない」として、「これを勘案し、日本政府に再交渉は要求しない」と述べたのです。
財団の解散についても、財団の今後の運営に関しては、「当該官庁で被害者、関連団体、国民の意見を幅広く聞き、後続措置を講じる」との方針でぼかしました。
そして日本に対しては、「日本が自ら国際的かつ普遍的な基準に基づき、真実をありのまま認め、被害者の名誉、尊厳の回復と心の傷を癒やすための努力を続けることに期待する」とし、「被害者がいちずに望むことは自発的かつ真の謝罪」と強調します。
2年前の「不可逆的な解決」は完全に無視、これからも無期限に韓国側は慰安婦問題を取り上げる権利を有し、日本は「自発的かつ真の謝罪」が求められ続けることを示唆します。