- 2018年01月07日 08:10
食通であれば知っておくべき2018年の飲食店に関する5つの課題・問題
1/22018年の飲食店の課題
私は<2018年のグルメトレンド予測!注目ポイントを解説>という記事で、2017年のグルメトレンドを踏まえながら、2018年のグルメトレンドを予測しました。
当たる当たらないは別として、こういった主旨の記事は年末年始に多いです。グルメのトレンドも非常に興味深いですが、多くの方が取り上げているので、今さらここで取り上げることはしません。
外食産業がより発展し、グルメがよい方向に進むようにと願いを込めて、ここでは飲食店に関連した課題や問題を取り上げます。
私が考える、2018年の飲食店に関連する課題や問題は以下の通りです。
- ノーショーやドタキャン
- 食品ロス
- 和牛
- 食の評価
- インフルエンサー
詳しい背景や解決の糸口まで書くと、非常に長くなるので、概要を説明します。興味があるようなら、多くの関連記事を紹介しているので、そちらをお読みください。
ノーショーやドタキャン
ノーショー(無断キャンセル)とドタキャンは飲食店の経営の根幹を揺るがす由々しき問題です。私が今最も力を入れている課題でもあり、昨年後半だけでも以下の記事を公開しています。
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飲食店のみならず、中長期的には客を不幸にし、さらには後述する食品ロスの問題にもつながるので、とても大きな問題です。
飲食店はノーショーやドタキャンが起きた場合、ウォークイン(予約していない)客を入れることができればよいですが、穴埋めできなかった場合には、そのために用意した食材や料理は無駄となり、廃棄されて食品ロスにもつながります。
ノーショーやドタキャンが多くなると、このようなリスクを通常のコースやアラカルトの値段に転嫁します。そうなると、ノーショーやドタキャンを行うごく一部の非常識な客のために、常識のある客が負担を負うことになるのです。
予約台帳を中心として、FoodTech(食のIT)で解決する動きが活発化しており、非常に頼もしいと考えていますが、当然のことながらサービスの利用料やクレジットカードの手数料が必要となるので、体力がない飲食店は導入が難しいでしょう。
人気がある飲食店であれば、予約台帳やクレジットカードを導入したり、強気なキャンセルポリシーを採用したりしても、集客にほとんど影響ありませんが、そうでない飲食店は簡単に移行できません。
FoodTechは素晴らしいですが、さすがに全ての飲食店を救えるわけではないのです。
メディアは「ある飲食店で団体の予約キャンセルが起きたが、SNSに投稿したら親切な人が客として訪れてくれたので、何とか危機を免れた」という感動話を無自覚に流すのではなく、ノーショーやドタキャンが起きると、飲食店にどのような不幸が起こるのかということを淡々と伝える必要があります。
ノーショーやドタキャンを矮小化するのではなく、大きな問題としてしっかりと配信していかなければなりません。
食品ロス
2017年は食品ロスの問題が大きく進展しました。農林水産省を始めとする各省庁が連携して、食品ロスの重要な問題であるとして、宴会での食べ残しを削減する「3010運動」を広めようとしたり、食品ロス削減国民運動のロゴマークとして「ろすのん」を制作したりするなど、取り組みを始めています。
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ホテルではたくさんの食材や料理を扱っているので、食品ロスの問題と関係が深いです。特に規模の大きなホテルブッフェでの食べ残しは問題として挙げられることがありますが、私が代表理事を務める一般社団法人 日本ブッフェ協会では「ちょうどいいが いちばんおいしい」をスローガンとし、バイキング発祥の帝国ホテルを始めとしたホテル会員が農林水産省と共に連携し、食べ残し削減の取り組みを行っています。
外食産業における食品ロスは大きく分けると、調理過程における食品ロスと、食べ残しによる食品ロスに分けられます。
多くのホテルや飲食店を取材して判明したのは、調理過程における食品ロスは、ほとんどないということです。営業利益に直結するところなので、捨てる部分をできるだけ少なくしたり、ひとつの食材をより多くの料理に使ったりと、しっかり努力しています。
つまり、外食産業における食品ロスは、調理過程ではなく、食べ残しが大きな問題となっているのです。
特に外食産業の食品ロスの4割を占めるとされている宴会での食べ残しが、問題となっています。
社内の忘年会から、異業種が集まるミートアップ、企業が行うレセプション、婚活イベントなど、宴会の大きな目的は食べることではなく、コミュニケーションを促進したり、親睦を深めたり、出会いを増やしたりすることです。それだけに、食べることに集中して、食べ残さないようにすることは非常に難しいと考えています。
食品ロスを削減するには、事業系一般廃棄物の処理に要する費用を上げたり、エコシステムを積極的に取り入れているホテルや飲食店を補助したり、食べ残しを持ち帰ることができるように「ドギーバッグ(Doggy Bag)」や「トゥーゴーボックス(To Go Box)」を促進したりすることが必要でしょう。
食品ロスの重要性を伝えていくことはもちろん、ホテルや飲食店、客にとっても何かしらのインセンティブが得られるような施策を考えなければ、なかなか前に進みません。
メディアの役割も非常に重要です。「全メニューを食べる」「長時間食べる」や大食いしたり早食いしたりして「競って食べる」というコンテンツは既に時代錯誤なので、控えるべきであると考えます。
こういったコンテンツは食材やそれを生み出した生産者、料理やそれを作り出した作り手の苦労や努力、思いやこだわりを覆い隠してしまい、安っぽいエンターテインメントに落とし込めてしまうからです。ブッフェにおける「元をとる」も同じことでしょう。
食材や料理、生産者や作り手に尊敬の念を払うことによって、食べ残しが減って食品ロスを削減できるので、メディアは食をおもしろおかしく扱ったコンテンツを作るのではなく、食が尊敬されるようなコンテンツを作り上げるべきだと考えています。