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お馴染みPewが選ぶ今年の重大発見

ジャーナリズムやインターネット関連などを含め、アメリカ人の意識や行動について興味深いトレンドを数多くレポートしている米国のシンクタンクPew Research Centerが年末恒例の今年の重大発見( striking findings from 2017)をようやく発表しました。

”発見数”は、西暦末尾の数字に合わせて毎年1項目づつ増えて、今年は17項目です。米国の調査ですからアメリカ人の意識や行動を分析した内容ですが、それらの中には日本や世界に通じ、いずれ日本にも押し寄せるかもしれないトレンドも少なくないと感じますのでかいつまんで紹介します。

なお、Pew Research Centerは、石油で成功したJoseph Newton Pew夫妻の子孫が1948年に設立、数々のプロジェクトを行っているPew Charitable Trustが、前身を含め1996年から支援している事業で、スタッフ160人に及ぶ大型組織です。米国のシンクタンクでよくあるような党派性はありません。では17大ニュースをグラフとともに見ていきます。

1,共和党員/その支持者と民主党員/その支持者の間で、政治的価値判断をめぐるギャップが一段と拡大した。10項目の政治的課題をめぐる両党員・支持者のギャップは1994年には15%に過ぎなかったのに、今や36%に広がった。人種や性別、年齢、宗教、教育程度によるギャップが10%前後に止まっているにも関わらずである。

2,トランプ大統領の登場を世界は不安を持って眺めていた。37か国で行った調査では国際問題に真っ当に対処できると確信している人はたったの22%だった。これはオバマ政権最終盤の64%を大きく下回る。また、米国に好感を持つ人も、オバマ政権最後の64%から49%に下落した。

3,今年も銃撃事件が相次いだが、米国人家庭の42%に銃があり、個人的に銃を所有している割合は30%にも及ぶ。しかも、撃ったことがあるという大人は72%もいる。まさに病める銃社会。

4,報道機関の役割についての見方は、民主、共和党員・支持者間で大きく異なる。民主党系は、メディアの批判が政治家の行動を誤らせない、いわゆるWatch dogの役割があると89%が認めるのに対し、共和党系のそれは42%に止まる。オバマ政権時代の評価は民主74%、共和77%だったのだが。ここでも、トランプ政権誕生で大きな分断が生じている。

5,2015年から2060年に世界人口は32%の増加と見られるが、イスラム教徒の伸びは70%とダントツの見込み。人口構成が比較的若いのと出生率が高いため。日本を含む仏教徒はマイナス7%だそう。

6,米国に住むヒスパニック系住民のアイデンテティが徐々に薄れていく。高い人種間結婚率と移民制限のため。ヒスパニックまたはラティーノのアイデンティティーを自覚する人は移民第四世代になると5割。こうして「人種の坩堝・アメリカ」が形造られる。日本の在日の方々はどうなんだろう。

7,アメリカ人の誰もが、男女には「基本的な違い」があると思っているが、その判断の理由は、男性が生物学的に違うと思うのが多数派なのに対し、女性は社会的な役割や働き方などからと考える。男女の溝は深い?

8, 多くのアメリカ人は、様々な「自動化」でいくつもの仕事が無くなると思っているが、自分の仕事がそうなると思っている人は30%に過ぎない。ファストフードの店員の77%が仕事が無くなることがありうると思っているが、看護師の80%は「ありえない」と答えた。

9,大学の存在が米国にネガティブな影響をもたらしていると判断する共和党系の割合は2015年から急増し、58%にも及ぶ。この逆転は何故なのか。元の調査報告にも見当たらない。民主党系は一貫してポジティブな評価をしている。

10,移民は米国の労働力人口の増大に大きな役割を果たしている。2035年までに460万人の移民労働者が見込まれるが、それ無しだと米国の労働力人口はマイナスになる。

11,トランプ政権の最初の60日についてのメディアの評価は、それ以前の政権発足時に比べてずっと厳しい。全記事の62%がネガティブで、ポジティブな記事はたったの5%だった。(どっちでもないのが33%)  オバマ政権発足時のポジティブ記事の割合は42%だったし、ブッシュ政権の時ですらポジティブは22%だった。

12,過去10年で配偶者やパートナー無しで生活する人が増加した。2007年には39%だったものが、今日では42%だ。著しいのは若い層で、35歳以下だと61%。もちろん、職のない人の割合が高い。

13,2015-2016年の難民大発生でヨーロッパに亡命先を求めた220万5千人のうち、その半数強の114万5千人が、2016年末までに亡命を認められていない宙ぶらりん状態だった。

14,アメリカの一般市民の83%が警官のリスクや職務の大変さを理解していると答えたが、当の警官たちの86%が一般市民はそれを理解していない、と真逆な数字となった。例えば、一般市民の半分は、(警官によく撃たれる)黒人に白人と同等の権利を与えるために変わらなければ、というが、警官でそう答えたのは16%だ。市民と警官の溝も深い。

15,ネットのストリーミングサービスでテレビを見る若者が増えた、18−29歳でそれが主な手段になっている人は61%にも達する。しかし、30歳以上はまだ従来通りの方法で視聴しており、65歳以上だとケーブルが84%、アンテナ視聴が7%と圧倒的。

16,白人は黒人が持っていない社会的アドバンテージで利益を得ているかどうかでも、民主系、共和系での見方が分裂。民主系は78%がかなりの利益を受けていると認めるが、共和系は72%が否定する。また、人種別では、黒人の92%が、白人だということで利益を受けていると見なしている。

17,科学知識のあるなしは、民主系では気候変動による自然災害についての理解に関連するが、共和系では、そうした関連は見られない。例えば、ハリケーンなどの嵐が増えるかどうかについて、民主系の人々は科学知識が高いほど、「そうなる」と答えるが、共和系では科学的知識の低い人の方ほど「そうなる」と答えている。

以上が17大ニュースの要約です。そこここに民主党員・支持者と共和党員・支持者との深い亀裂が現れているのが、今年の特徴です。ただし、一致していることが唯一あります。それは北朝鮮の核ミサイル脅威への対応です。

これは、この17項目には入っていませんでしたが、同じPewが12月20日に掲載した「From #MAGA to #MeToo: A look at U.S. public opinion in 2017」の中で紹介したもので、10月下旬の調査結果です。質問項目は、左から「米国は北朝鮮の脅威を真剣に受け止めるべきか」「北のトップは米国への核兵器使用の脅しを貫こうとしているか」「北朝鮮には米国に届く核ミサイルの能力があるか」です。

2013年というのは北朝鮮がミサイルを連続発射した年です。それを、現在と比較しています。ブルーが民主系、赤が共和系、グレーがそのトータルですが、2013年当時は、比較的冷静に見ていたかに見える民主系の見方が、今は共和系とほぼ同じように、真剣になってきたのがわかります。

なお、この件も含め、元記事には、それぞれの項目に関するレポートへのリンクがありますので、ご参照ください。

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