- 2017年12月29日 09:50
埼玉県川口市・いじめによる不登校 学校や市教委の対応に保護者が抱く不信感(下)〜学校や市教委の言い分は?
1/2埼玉県川口市の男子中学生・栃尾良介(3年生、仮名)がサッカー部のLINEグループから外されたり、乱暴されたことなどをきっかけに、2016年に自傷行為をするなどし、不登校となったことで、市教育委員会のいじめ問題調査委員会が設置された。
実は、調査委設置まで母親は非常に苦労している。学校や市教委側に対して「重大事態だ」と主張しても、なかなか、市教委は動かなかった。そのため、県教委も文科省も、市教委に対して指導をしている。
文科省が調査委設置を求める。「やっとわかってくれる人が現れた」
16年11月1日、校長が自宅で初めて良介に会い、「校長として指導不足だった」と直接、謝罪をした。ただ、このころ、校長は保護者たちには「いじめはない」と報告している。そのため、周囲では「母親が良介を学校に行かせないのが悪い」「良介がいじめられたと嘘をついて登校しない」との噂が流れていた。
「校長が嘘をつけば、良介が嘘つきとされてしまうんです」(母親)

16年12月、文科省に対し母親は「謝罪はしているのに、いじめと認めていない」と状況説明。そのため、文科省から「県教委に対して1月4日付けで、良介に対するいじめの重大事態として第三者委員会を設置するように求めました」との連絡が入った。良介は「やっとわかってくれる人が現れた」と喜んだ。サッカー部の顧問に母親が相談したのは3月。9か月も後のことだった。
「学校側が嘘の説明をしていたので、一時は保護者は全員敵でした。昨年12月には、『この子と死んじゃおうかな?』と思ったこともあります。しかし、やっと学校側がきちんとした説明をしたので、保護者たちにもわかっていただけました。ゴールは学校側に全部のいじめを認めさせることです」(同)
法の定義ではなく、社会通念上の定義で?
良介は17年3月から登校するようになった。しかし、いじめ問題調査委員会がいじめの定義について、「いじめ防止対策推進法の定義ではなく、社会通念上の判断でやる」、と言っていたことがわかった。そのため、母親は文科省と県教委に相談。県教委を通じて、市教委に対して指導をした。
いじめの定義は変遷している。文科省がいじめを初めて定義したのは1985年度。「児童生徒指導上の諸問題に関する調査」で初めて、いじめ調査を行ったのだ。当時はいじめ自殺が社会問題となり、86年2月、中野区立中野富士見中学校の生徒がいじめを受け、父の故郷・岩手県の盛岡駅ビルのショッピングセンターの公衆トイレ内で自殺している。
当時の定義は、「自分より弱い者に対して一方的に、身体的、心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実を確認しているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わないものとする」だった。
現在は、いじめ防止対策推進法で、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」になっている。ただ、同法が施行される以前から、文科省は、いじめの定義から「学校としてその事実を確認しているもの」や「一方的に」「継続的に」「深刻な」は削除した。
学校が保護者説明会を開くが不十分な内容
学校側は10月20日、保護者会を開き、説明会を行った。
「このときに調査委の設置を知った保護者が多く、サッカー部以外の保護者は知らなかった。校長の説明は、“最大限、努力して取り組みましたが、被害保護者から理解が得られていない"と話しましたが、事実とは違います」(母親)
すでにインターネットの匿名掲示板では、この問題のスレッドが立ち、事実かどうかはわからないような情報が多く書き込まれていた。説明会での不十分な説明が影響したのか、生徒の実名が書き込まれた。それを知った良介は11月から再び学校へ行かなくなった。
「保護者会後、ネットの書き込みにも(削除依頼をするなど)早急に対応してほしいと言っていたのですが、学校や市教委は何もしていません。学校が削除依頼をしたのは11月の第2週目ですが、注意の呼びかけが先ではないか」(同)
県教委と連絡を取っていた母は「やっと学校が注意の呼びかけをする手紙を配布した」との連絡を受けた。しかし、そんな手紙をどの保護者も見ていない。学校に確認をすると、「印刷漏れがあった」との理由で配布してないことがわかった。そのため、11月末になって、やっと配布。同時に、保護者会でこれまで不十分だった説明を、改めて説明をする案内もした。
被害生徒が調査委にあてた手紙を執筆
12月8日は調査委員会には、母親と弁護士が参加した。その席のために、良介は手紙を書いた。

良介さんは「もういいよ」と、諦めるかのような気持ちを母親に話したという。15日には保護者説明会が再度開かれた。母親によると、学校側は「いじめ重大事態と判断を受けている」とした上で、文科省や県教委を通じて、1)法律に基づいて実施すべきことができてなかったこと、2)受け入れ体制ができていなかったこと、3)学校として機能していないことーーなどの指摘があったとした。
冬休みが迫った12月18日、高校に進学したい気持ちから、良介は登校した。学習面での支援も課題だが、長期欠席をした場合、内申書でも特別な配慮がされるが、母親は学校側と話し合い中だが、母親は学校や市教委との交渉で疲弊してしまっている。
「学校側が最初に、『一年生の頃から嫌がらせなどされてた事は認識してました。学校としての配慮が欠けてた事は申し訳ございませんでした。重く受け止めます』と謝罪したのに自傷行為をし不登校になったと把握してても、1ヶ月以上欠席が続いてても、私から重大事態だと申告しても、県教委 文科省其々から重大事態と考えなければいけないと指摘されても 市教委も学校も対応しませんでした」(同)