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“虐待の連鎖”を防ぐためには、保護者支援が欠かせない。特に要対協の対象から外れた未熟な親たちのケアは最重要 - 「賢人論。」第51回田中俊英氏(中編)

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臨床哲学の研究は、一から問題に向き合う訓練になった

みんなの介護 大学に入り直して研究した哲学を通じ、どのようなことを学びましたか?

田中 師事したのは、大阪大学の鷲田清一教授。臨床哲学というジャンルの研究をしていました。根源的な問題を考える学問である哲学を、実際の現場に活かすというのが鷲田先生の教えで、「ドーナツトーク」はそれを子ども・若者支援に実践したものなんです。

臨床哲学の授業に来ていたのは半分以上が社会人で、医療や教育関係の仕事をされている方が多かった。それぞれが持ってきた問題をみんなで議論しながら抽象化・言語化していく、というのが授業の中身でした。

例えば、ホスピスに勤めていた方が「患者さんがこんな言葉を語って、そのとき自分はこんな風に揺れたんです」というような話をする。それについて、哲学はもちろん、各業界の専門用語は一旦抜きにして、その患者さんの苦しみや感情について、素朴でもいいので自分の言葉で解釈していく。

専門的な用語は抜きにして、日常生活の中で経験する問題を一から考えてみる、というのが、臨床哲学のスタイルなんです。そんな中、私が修士論文のテーマとして選んだのは、PTSD(※心的外傷後ストレス障害)の問題でした。

みんなの介護 PTSDとは、暴力や災害などで受けた強いストレスが心の傷となり、その後長きにわたって当人を苦しめる症状のことですね。

田中 虐待を生き延びた若者たちは、一見普通に社会生活を送れているように見えるのですが、実は重篤なPTSDを抱えていることもある。

PTSDは案外18歳以上になってから発症することもあって、抑うつ状態になったり、ぼーっとしたり、いろんな形で出てくるので判定が難しい。社会生活からだんだん離れていって引きこもっていく…というケースが多いんです。

みんなの介護 幼少期のつらい経験が、何年も経った後で本人を苦しめるのですか。

田中 それがPTSDの厄介な特徴なのですが、専門家からのアナウンスもまだまだ足りていないところです。PTSDは一生もの。“何歳になったから克服できる”というような甘いものではない。一見引きこもっているだけだったり、アルバイトが続かなかったりするその大元の原因が、実は幼少期の虐待だった、ということもあるんです。

児童虐待の問題は特に、発見が非常に難しいですね。現在進行系の当事者たちは、こういった事業には滅多に引っかかってこない。“虐待の連鎖”を防ぐという意味では、保護者支援の役割も非常に大きいです。子どもに虐待をしてしまう親の中には、まだ10代後半の未熟な人も多い。特に、18歳を越え要対協(※要保護児童対策地域協議会)の対象から外れてしまった親たちを誰が支援するのか、という問題は残っています。

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