- 2017年12月27日 09:15
なぜ日経の新幹線社説は10日遅れたのか
2/2■「構造上の問題や経年劣化か」と読売
読売新聞の社説(12月19日付)は「もっと早く運行を打ち切るべきだった。石井国土交通相が『判断の妥当性を検証する』と述べたのは当然である。走行を続けたことにより、亀裂がさらに進んだ可能性も指摘されている」と書き、次のように指摘する。
「異常が生じれば、最悪の事態を避けるため、迅速に対処するのが安全運行の鉄則である。多少の異常に目をつぶっても、ダイヤ通りに運行しようという意識が現場で働いたのではないか」
さらに読売社説は「気がかりなのは、台車の亀裂が溶接部ではない部分で起きたことだ。溶接部の亀裂であれば、過去にも私鉄車両で発生している」と指摘し、「構造上の問題や、経年劣化の可能性もある」と分析したうえでこう主張する。
「鉄道各社は、検査マニュアルの見直しを迫られよう。亀裂が入った原因を早急に突き止めることが、何より重要である」
新幹線は東京ー新大阪間だけでも1日に350本以上も運行し、多い時間帯では数分おきに発着している。スピードは時速200キロ以上だ。
それだけに車両に与える負荷は大きく、年月とともに劣化も起きる。仮に今回の亀裂の原因が経年劣化や共通の構造上の問題に由来するとしたら、他の新幹線車両にも同じトラブルが発生する可能性がある。
■朝日新聞は東京新聞から6日遅れて展開
朝日新聞は東京新聞から6日遅れて12月20日付で社説を展開している。
朝日社説は「JR西は『今後は異常がないことを確認できない場合、ちゅうちょなく列車を止めることを徹底する』と説明したが、なぜ速やかに止められなかったのか、現場と指令所との間でどんなやりとりがあったのか、細部にわたる検証が必要だ」と主張する。
そのうえで「JR西日本は12年前の宝塚線脱線事故後、『安全性向上計画』をつくり、安全が何よりも優先すべきだと誓った。その精神を忘れてはならない」と訴える。
産経新聞は12月21日付の紙面に社説(主張)を掲載し、「安全最優先は名ばかりか」(見出し)と皮肉る。皮肉を込めた見出しは産経社説にしては珍しいと思う。しかも今回の皮肉り方は朝日社説のようなノリがあり、実におもしろい。
■「JR同士で責任を押しつけるな」と毎日
次に毎日新聞の社説。「危機感があまりに乏しい」との見出しで12月15日付紙面に掲載された後、12月22日付紙面にも掲載され、その見出しで「JR全体で深刻さ認識を」と主張している。
22日付社説の中盤では「おととい記者会見したJR東海の柘植(つげ)康英社長は、新大阪駅でJR西日本から『運行に問題はない』との引き継ぎを受けたと明かし、新大阪駅で床下を点検してほしかったとJR西日本の対応を批判した」と書き、さらに「一方、JR西日本の来島達夫社長は記者会見で、引き継ぎについて『調査中』と述べるにとどまった」と指摘する。
毎日社説は「責任を押しつけるのではなく、JR全体で安全運行を図る姿勢を利用者に示すべきだ」と主張するが、JR東海とJR西日本はともに乗客の生命を預かっているとの認識に欠けている。
全国紙のなかで一番最後に社説を掲載したのが日経新聞だった(12月23日付)。経済専門紙を名乗っている以上、日本の経済活動を支える新幹線のトラブルを軽視できないはずだ。それにもかかわらず、12月11日のトラブル発生から社説で論じるまで10日以上も経過しているのは不可解だ。
見出しは「新幹線の安全を守るために」で、その内容は「徹底した原因究明と再発防止策を求めたい」との趣旨を中心に書いているが、各紙の社説と似たり寄ったりで日経独自の視点は見当たらない。それなのに、どうして掲載までにこれだけの時間がかかったのだろうか。
■「あわや大惨事」という認識があったのか
繰り返すが、トラブルが発生したのが12月11日。JR西日本が公表したのが翌12日で、運輸安全委員会もこの日に「重大インシデント」に認定している。
19日にはJR西日本の副社長が記者会見し、続けて20日に社長の定例の記者会見があり、同じ20日にJR東海の社長も会見していた。ニュースとしては各紙とも公表があった次の日の12月13日紙面の1面や社会面で展開している。だが社説での扱いは、新聞によって対応がわかれた。
社説で2回取り上げている毎日新聞の認識は正しい。他紙は「あわや大惨事」という認識に欠けていたのではないだろうか。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)
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