- 2017年12月26日 10:30
日本の残業が増えたのは、第3の居場所=サードプレイスを欲しているからかもしれない - 「賢人論。」第51回田中俊英氏(前編)
1/2
今回の「賢人論。」ゲストは、子ども・若者を中心に支援するNPO法人「officeドーナツトーク」の田中俊英氏。哲学者・鷲田清一氏に師事し、学んだ「臨床哲学」を福祉の現場で実践。不登校や中退、引きこもりや貧困など社会問題に直面する若者たちへ“居場所”を提供することをライフワークとしている。田中氏が重んじ、法人のミッションにも掲げている“サードプレイス”とは?
取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人
“第3の居場所”を提供することをミッションとしている
みんなの介護 田中さんは一般社団法人「officeドーナツトーク」の代表として、不登校や引きこもり、貧困など、子ども・若者に関する社会問題に取り組まれています。
田中 ドーナツトークでは、子ども・若者に“サードプレイス”、つまり「第3の居場所」を提供することをミッションにしています。「第1の居場所」は家庭、「第2の居場所」は学校や職場。そして、そのどちらでもない第3の場所が、私たちが生きていく上では必要です。家庭環境が良くなく、しかも学校に馴染めない、という子どもたちの場合ならなおさらそう。
「サードプレイス」の条件は、気軽に行けて、しかもコミュニケーションを強要されない居心地の良い場所である、ということ。誰か特定の人に会ったり関わる必要はなく、話したくなければ話さなくてもいい。なんとなく集まった人たちが周りに“ただいる”だけ、という感じが「居心地が良い」ということだと思うんですよね。
みんなの介護 具体的に、「サードプレイス」とはどのようなものなのでしょうか?
田中 例えば、日本において代表的な“サードプレイス”は「銭湯」。癒やしをくれる場所でさえあれば、出勤前の喫茶店や学校の放課後、あるいは残業時間さえも“サードプレイス”になりうる、と私は考えています。
現代の日本からは、この「サードプレイス」が失われつつあり、それが息苦しさにつながっていると言われています。日本人の残業が増えたのは、“就業後の会社は居心地が良くて、つい長居してしまう”という人たちが一定数いるせいでもあると思うんですよ。もちろん、仕事量が多いとか、残業代を稼ぎたいとか、それ以外の事情もさまざまあると思いますが。
みんなの介護 “第3の居場所”づくりとして、「ドーナツトーク」はどのような取り組みをしているのでしょうか?
田中 カウンセリングや、場所そのものの提供がメインです。例えばここ「住吉区 子ども・子育てプラザ」は住吉区が運営している、本来は子育て支援向けの施設なのですが、その中の2部屋を「面談用」「居場所用」としていつもお借りしています。ちなみに、大阪23区の全てにはこういった子育て支援用の施設が配置されています。居場所としての座敷部屋は、訪れた子どもたちがゲームをしたり、雑談をするスペースとして利用し、面談部屋では親御さんも含めたカウンセリングを行っています。
今は高校生向けの「居場所カフェ」などの10代後半支援、「tameruカフェ」などの大阪市南部に向けた支援、「ひらの青春生活応援事業」などハイティーン向け事業を軸としています。

高校の中で、カフェスペースを無料提供
田中 「居場所カフェ」は、高校の中でカフェスペースを無料提供することで、中退予防を目指していくもの。「tameruカフェ」は大阪市住吉区と共同で行っている事業で、不登校や高校中退者とその保護者向けに、安心して休みエネルギーを「ためる」ことができるサードプレイスを用意しています。彼らハイティーン向けの支援はまだ手薄なので、全国で見ても貴重な事業になっていると思います。
「ひらの青春生活応援事業」は、平野市の保健福祉課から事業委託されているもので、不登校になる恐れのある高校生を対象に面談。一人ひとりに合わせた支援を行うことで、高校卒業・正規雇用を目指しています。
みんなの介護 最近では大阪府立西成(にしなり)高校で「モーニングとなりカフェ」という取り組みを始められたそうですね。校舎の一室を使い、生徒たちに朝食を提供するというものだそうですが。
田中 家庭の事情で親が朝ごはんをつくってくれなかったり、お昼の弁当代さえもらえない、という生徒が西成高校には少なからずいました。そうでなくても、高校生は1秒でも長く寝ていたいものですから、朝ごはんをつい抜いてしまうもの。「モーニングとなりカフェ」はそんな彼らにパンやコーヒーとともに、傷ついた心を癒やすための居場所を提供しています。
これまでの6年間も「となりカフェ」としてお昼や放課後にはお菓子とコーヒーを提供していたのですが、モーニングを始めたのは先日、9月13日のこと。「キャンプファイヤー」というクラウドファンディングサービスでこの事業への寄付を呼びかけたところ、1ヶ月で22万円の支援金が集まりました。開始初日から17人の生徒が訪れ、メディアでも取り上げられたり、テレビドキュメンタリーになるなど反響は大きかったです。



