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都心の大学、本当に必要? 東京都長期ビジョンを読み解く!その56

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■疑問な反対ロジック

反対の主な理由・反対ロジックを見てみよう。

理由1:大学の教育、研究体制の改革、革新を停滞させる

理由2:大学の国際競争力を低下させる

理由3:人材が資源の国益を損なう

理由4:大学の自主性を尊重していない(新たな大学・学部などの新増設ができない)

理由1については、たしかにそうかもしれない。しかし、改革や革新が進んでいるのか、都心のほうが有利な研究は見たことはない。23区でなくても停滞するものとは言えない。23区の方が逆に、オフィスなどの地代や人件費などコストがかかる。

理由2、国際競争力のある大学はマンハッタンなどの都心に集中してはいない。世界的に言えば、ボストンのような中小都市(ハーバード、MIT)、ニューヘイブン(イエール)、オックスフォード・ケンブリッジ(ともにロンドン郊外)など、郊外の大学の方が多かったりする。

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▲写真 米ハーバード大学 Photo by Ingfbruno

理由3、別に定員増がたかだか抑制されたくらいで、国益を損なうというのは言い過ぎだろう。定員が400名を410名に増加できないだけで何が変わるのか。多くは大学を卒業して会社で働く現実を考えると眉唾の論理だ。

理由4、確かにそういうこともあるだろう。しかし、私学助成金など国の支援を得て経営をしている以上、自主性を最大限に発揮していいものでもないことは言うまでもないだろう。

東京都や関連団体の反対の背景には、23区にキャンパスを置く私立大学や日本私立大学連盟の反発を受けたといわれている。そこが本音だろう。私立大学としては短期的には困るし、私も経営サイドの立場で短期的な成果を問われる立場だったら反対をするのは当然のことだ。

詳細は国会図書館のレポートに詳しいが、平成 14年以降、大学の都心回帰や都市部での定員増の傾向がみられていた。そうした中、「平成28年の東京圏への若者(15~29歳)の転入超過人数は11万5千人」で「そのうち大学等進学者は6万7千人と、半数以上」という現状から見ると、その流れを抑制するのは地方創生の意味で当然のことだろう。

さらに、「23 区の大学等の学生数は46万7千人で、23区で全国の学生数の17.4%」と全国の人口と比べても、「過度な集中」といえる。

個人的には定員抑制どころか、定員削減くらいの抜本的な改革を後押しすべきだと思っている。

■「都心ファースト」の限界?

東京都の考え方は仕方のないことかもしれない。しかし、東京こそ、私立大学の新たな改革案を誘導する取り組みを掲げればいいのにと思う。

16世紀の大学、19世紀以来の国民国家の関与が大学をどう変えてきたのか、その成り立ちを考えれば、早急に大学の在り方が変わっていかざるをえない(吉見俊哉さんなどの言説に詳しい)。今後の大学の存在意義やあり方の改革を進めていく活動を国に先んじて方向性を示す、支援してみてはどうだろう。短期的な大学の収益改善、生き残りなどしか考えない浅い思考では「既得権益の打破」という言葉もむなしく響く。

そもそも「地方創生」の必要のない東京23区が、「地方版総合戦略」の策定、各種交付金などを国からいろいろもらってきた。その時に「必要ない」と言って断っていれば、今回の発言も論理一貫性はある。地方創生の中で議論され、打ち出されてきた方針に反対するのは筋が通らないといっても過言ではない。

そもそも、東京一極集中についての配慮や解決策を打ち出せなかったからこそ、「希望の党」は負けたという面もあることをわかっていない。全国から見ると小池さんたちはなんか東京でやっているね~と思え、都会のことだけやっているように(有権者には)見えた。「排除」発言よりも「都心ファースト」すぎた姿勢こそが党の選挙における敗北の理由ではないかと個人的には思ってしまう。

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▲写真 明治大学駿河台キャンパスリバティタワー Photo by Suginami 

高層ビルがキャンパスという大学も増え、人気も集めていて、ますます競争が加速しそうな現実。「23区内の大学の定員数だけを抑制するといったような弥縫策では、日本が抱えている課題を解決できない」(小池知事発言)のなら、そうしたビジョンの打ち出しを期待したい。

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