- 2017年12月24日 18:00
日本テレビのみなさまへ、生活保護についての悪意のある番組放送はやめてください
2/22つの事例ともに詐欺罪で告訴はしていない
そして、重要なポイントですが、2つの事例とも詐欺罪での告訴はされていません。
要するに、「返還請求」といって、費用は返さないといけないけれども、告訴するほど悪質だとは松山市も加須市も考えていない、ということです。
告訴するほど悪質ではないと両市が判断している事例を、通報から面談(ほぼ取り調べ)まで、それこそ、張り込みや尾行も含めて、取材陣が密着して映像を撮るというのは、強烈な違和感があります。
もし、日本テレビ側が「「迷惑な奴ら(番組タイトルより)」だから、こういった取材をしてもかまわないんだ」と考えたのであれば、その人権感覚を疑いますし、松山市や加須市も同様に考えていたのであれば、行政機関としてあるまじきことだと思います。
不正受給の放送の仕方について
番組内では、不正受給について、「近年増え続けている」と放送していました。
たしかに、近年、不正受給自体は増加傾向にありますが、それは受給者増が背景にあり(母数が増えている)、むしろ、一件当たりの金額は減少しています。
また、金額ベースでは生活保護費全体の0.4~0.6%と言われており、もちろん、なくなるにこしたことはありませんが、一般に思われている以上に、かなり割合としては少ないというのが実情です。
こういった番組放送により、「不正受給が多い」という誤った認識が拡がってしまうことに危惧を感じます。
不正受給については過去に書いたこの記事でデータ等も紹介しています。
また、番組のなかでも、「不正受給」の問題を取りあげるのであれば、その実態について学識経験者などの専門家のインタービューをとるなど、バランスを考えた配慮をするべきと思います。
必要なのは摘発でなく支援
実際に、例えば、松山市の事例については、放送された内容をみる限り、1年のあいだに生活保護になったり生活保護から外れたりとかなり収入に変動がある状況なのだなとわかります。病気があるということなのでなかなか安定した収入を得る仕事につくことが難しいのだと思いますが、であれば、丁寧な支援をおこなうことこそが肝要なのではないでしょうか。
加須市の事例ついても同様で、2年2か月滞納があったというのはかなりショッキングなことで、市側もこのことを2年2か月知らなかったのだな、と。いまは代理納付と言って家賃を本人を介さずに直接大家さんに渡す仕組みもあり、それを市側が使えば滞納はおこらなかったのに、と思います。
また、支出が多すぎてしまうことについては家計の支援が必要ですから、無料低額宿泊所に入所させて現金を渡さない、という手法をとるのではなく、金銭管理の支援を考えたほうがいいのでは、とも思いました。
特に、終わりのナレーションで滞納された分の金額はまだ返金されていない、とありましたが、そもそも、無料低額宿泊所では3食つきのところも多く、この方が入所したところの状況はわかりませんが、もし3食つきのところだと、本人の手元に残る生活保護費は数千円程度に抑えられてしまいます。ここから加須市への返還と大家さんへの返還になるわけですから、加須市が先にお金を返金してもらっているのだとすると大家さんへの返金は不可能です。
こういったことも含めて、放送する際にある一面のみを意図的に放送しているのであれば、それは非常に問題だと思います。
生活保護をめぐる番組放送は丁寧に
これは、日本テレビのみならず、他のテレビ各局や新聞、雑誌等のメディアにかかわる多くの人にお伝えしたいのですが、生活保護をとりあげるときは丁寧な取材をしてほしいということと、当事者への配慮はもとより、安易に誤解や偏見を招かないような工夫をしてほしいということです。
これは、今年の1月にTBSの「ビビット」という番組がホームレス問題を特集したときにも同様のことを書いたのですが、配慮のない番組や記事によって、不安を感じたり、傷つく当事者がたくさんいます。
また、生活保護への誤解や偏見が拡がってしまうと、必要な人が支援を利用することへの心理的な妨げになる可能性もあります。
特に、今回の番組では、個室のブースのなかでの面談の様子が撮られていたり、張り込みや尾行などが取材陣とともにおこなわれており、プライバシーへの配慮について大きな懸念を感じました。
正直に言って、一般の人に対して(しかも重大犯罪を起こして逮捕状が出ているなどでもなく)、ここまでするのかと驚くとともに、悪意を感じました。
「ずるい奴ら(番組タイトルより)」にはここまでやっていい、という考えが透けて見えるようで、そのことは明確に批判したいと思います。
※Yahoo!ニュースからの転載


