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ノーベル賞と日本のモノ作り ノーベル賞の都市伝説4

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 これもシリーズ第一回で触れたが、わが国は二重国籍を認めていないので、米国籍を取得するということは、自動的に日本国籍を喪失することを意味する。

 しかしそれが、問題の本質ではない。ここ数年、日本の研究機関において、基礎研究に十分な予算が回らず、このままでは将来的に、ノーベル賞受賞者など出ない国になるのではないか、と心配する声が聞かれるのだ。前述のふたりの研究者が日本国籍を捨ててまで米国での研究生活を選んだのは、そのひとつの現れだと考えられる。

 昨今こういう問題提起をすると、「大学の研究予算より、待機児童問題を先になんとかしないと」といった反論を受けたりするが、教育や研究への投資というのは、そういう問題ではあるまい。

 問題視せざるを得ない事柄は、他にもある。数年前、STAP細胞なるものを発見したとして、マスコミの寵児となった女性研究者がいた。その当時、TVの情報番組がどのような報道をしていたかと言うと、彼女の研究内容を冷静に検証する態度とはほど遠く、研究所で白衣でなくおばあちゃんからもらった割烹着を愛用しているとか、髪型やアクセサリーの好みを取り上げて、「女子力高い!」だったのである。

その後の騒ぎは、今も記憶に新しいところだが、たまたま私の親類に理系の研究者がいて、意見を聞くことができた。

iPS細胞(2012年に山中伸弥氏が発見し、ノーベル医学・生理学賞を受賞)は、びっくり仰天だったけど、有無を言わさぬデータがどんと出されたので、なるほどこれはノーベル賞だ、と拍手喝采だった。

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写真)山中伸弥氏 出典) National Institutes of Health

その点STAP細胞というのは、最初の論文が出た時点で、うちの子供の背中に羽が生えて空を飛ぶのを見ました、というくらい、ぶっ飛んだ話だったわけですよ。でも、レシピが添えられてるから、出来るのかなあ、と思ったけど、世界中の研究者がチャレンジして、できないじゃないかよ、となったわけで」だそうである。

 昨今、家電や自動車メーカーといった、日本経済と「ものづくり」の屋台骨を支えてきた企業で不祥事が続いているが、これと、STAP細胞をめぐる騒ぎの根底にあるものは共通していないだろうか。

 ノーベル賞に象徴される、研究の華々しい成果や、メーカーの売り上げといったことばかりに目を奪われ、アカデミズムにおいては基礎研究や検証システム、メーカーにおいては品質管理という、地味だが非常に大切な、基本的な部分に目配りがなされていないのである。

 これはまさしく亡国への道で、ノーベル賞受賞者が少しばかり増えたり減ったりどころの問題ではない、と思えるのだが、どうだろうか。  

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