- 2017年12月24日 16:14
ノーベル賞と日本のモノ作り ノーベル賞の都市伝説4
1/2ノーベル賞授賞式での山中伸弥氏 出典)京都大学
林信吾(作家・ジャーナリスト)
【まとめ】
・日本は非白人国家として最も多くノーベル賞受賞者を出しているが、候補に挙げられながら受賞しない人も多い。
・日本の研究機関の基礎研究に十分な予算が回らず、ノーベル賞受賞者が出ない国になるのではないか。
・基礎研究や品質管理などの基本的な部分に目配りがなされていない現状は問題。
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わが国は、非白人国家としてはもっとも多くのノーベル賞受賞者を輩出している。そして同時に、候補に挙げられながら受賞に至らない人が多い国としても知られている。最近では村上春樹氏がよく知られるが、医学・生理学賞の分野では、北里芝三郎や野口英世が受賞に至っていない。
画像を見る写真)村上春樹氏 出典)photo by wakarimasita
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写真)北里芝三郎氏 出典)WIKIPEDIACOMMONS
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写真)野口英世氏 出典)WIKIPEDIACOMMONS
1930年代には、東京帝国大学の医学者で、脊髄副交感神経を発見するなど、脊髄機能や心臓機能研究の第一人者とされていた呉建(くれ・けん)が6度も候補になりながら、受賞に至らなかった。
これについては、日本がナチスと同盟した枢軸国だったから、と見る向きもあるようだが、日独伊三国同盟が締結されたのは1940年9月のことで、呉は同年6月に心筋梗塞で急逝している。つまり、候補になった時点では「枢軸国」など存在していなかったので、明らかな事実誤認である。
その一方、1930年代においては、ノーベル賞そのものについて「ヨーロッパの学術振興に寄与すべきもの」とする考え方が根強く残っており、「東洋人の受賞はまだ早い」との発言が実際に選考委員の口からなされた記録がある、などという話もある。
私自身は、その記録を見ていないので、文字通り話半分くらいにしか聞く気になれないが、かと言って、まったくあり得ない話でもなさそうで、ビミョーなところだ。このビミョーな真実性が、都市伝説の特徴なのだろう。
そうかと思えば、日本人の受賞率は、各分野における日本の研究水準に比して実は低い、という話も聞く。どういうことかと言うと、ノーベル財団が各国の研究機関や過去の受賞者に「推薦状」を配布しており、これに基づいて第一次選考が行われるのだが、日本人研究者は、この推薦状の返信率が、他国に比べて非常に低いのだとか。
この話が本当なら、もったいないことをしている、としか言いようがないが、私見ながら、実はもっと深刻な問題が存在するのではないか。
冒頭で述べたように、わが国のノーベル賞受賞者は、物理学賞9人を筆頭に、経済学賞以外の5部門すべてにわたって計23人にのぼるが、これは正確に言うと「日本国籍の受賞者」である。
本シリーズ第一回で取り上げたカズオ・イシグロ氏は、親の仕事の都合で子供時代に日本を離れた、いわば特殊な例だが、他に、物理学賞を受賞した時点で日本国籍でなかった人が2人いる。
素粒子の研究で2008年に受賞した南部陽一郎氏と、青色発光ダイオードの発明で2014年に受賞した中村修二氏である。いずれも、よりよい環境で研究を続けるべく、米国籍を取得した。
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写真)南部陽一郎氏 photo by Betsy Devine
写真)中村修二氏 photo by Ladislav Markus
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