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政治局委員の学歴“水増し”疑惑と王滬寧 - 澁谷 司

『ラジオ・フリー・アジア<RFA>』(2017年11月28日付)の中で、高新は「21人の『高学歴』、4人だけ『水増し』なし」を発表した。そこで、「19大」(中国共産党第19回全国代表大会)で決まった政治局委員25人中、21人が学歴を“水増し”していると指摘している。

高新によれば、博士の学位を持っているのは少なくても7人いるという。修士号を持つ者は、少なくても14人いる。また、大卒者は2人である。従って、大卒以上の学歴を持つ者は全体の9割以上に及ぶ。

7人の博士とは、習近平、李克強、李希、黄坤明、楊潔篪、蔡奇、陳全国である。但し、彼らは皆、多忙な仕事をこなしながらの「在職博士」なのである。

7人の政治局常務委員(中国共産党最高幹部トップセブン)は、習近平主席と李克強首相の博士以外、4人が修士号取得し、残りの1人は中央党校研究生(大学院生)だったという。

習主席の場合、福建省長時代、北京の清華大学へ2000キロメートル近くの距離を通って博士号を取得した。常識的には、あり得ないだろう。一説によれば、習主席の博士論文は、ある女性研究者の論文を借用したと言われる。

その他、4人の政治局常務委員は、(王滬寧を除いて)1日も大学に通わず修士号を取得している。実に不思議な話ではないか。

栗戦書と韓正は、彼らの通った大学は“夜学”だった。また、汪洋に至っては自分の故郷である安徽省の市長時代、中央党校の“通信制”で大卒の資格を取ったという。

言うまでもなく、栗戦書、韓正、汪洋らは、実力があったので、党最高幹部になった。学歴の面で劣っていても、立派な実力者である事は間違いない。なぜ学歴を“水増し”する必要があるのだろうか。

因みに、台湾の游錫堃元首相は、はじめ致理商業専科学校(現、致理科技大学)夜間部国際貿易科を卒業している(その後、国立中興大学法商学院<現、国立台北大学>公共行政学系、東海大学政治学系の学士を取得した)。しかし、游錫堃は台湾の首相にまで、のぼりつめている。

他方、我が国の菅義偉官房長官は法政大学二部(夜間部)法学部政治学科を卒業した。だが、安倍晋三内閣を支える中心的存在である。

さて、著名な学者である王滬寧は、江沢民元主席・胡錦濤前主席・習近平現主席の3代にわたり、政権ブレーンの「国師」として仕えている。

王滬寧は、まず、江沢民時代には、「3つの代表」論―(1)中国共産党は常に中国の先進的生産力の発展の要請を代表しなければならない。(2)同党は常に中国の先進的文化の前進の方向性を代表しなければならない。(3)同党は常に中国の最も広範な人民の根本的利益を代表しなければならない(『人民日報』)―を創出した。

次に、王滬寧は、胡錦濤時代には「科学的発展観」(中国の経済発展を遂行するに当たって、「人を基本」とし「全面的で均衡のとれた持続可能な発展を堅持し、統一的な計画・全般的な配慮を堅持しなければならない」<中嶋嶺雄>)を産み出した。

更に、王滬寧は習近平時代になり「習近平新时代の中国の特色社会主義思想」通称「習近平思想」を考案した。「習近平思想」の核心は「中華民族の偉大なる復興」とされる。

この王滬寧という人物は如何なる人間か。

王は上海で生まれた。出身は山東省莱州市である。名門、復旦大学修士課程を修了し、同大学の教授となった。

王滬寧の元妻、周琪は同学である。周の父親は国家安全部副部長だという。1990年代半ば、王は周と秘密裏に離婚した。現在、周琪は中国社科院美国研究所政治室主任になっている。

王滬寧の2番目の妻、蕭佳霊(湖南省出身)は王より12歳下である。蕭はかつて王の学生だった。2人は、1998年秘密裏に結婚している。その後、蕭佳霊は、東京大学の博士課程で研究していた。

ところが、蕭佳霊が日本留学時、我が国の情報機関に監視されている事が中国国家安全部に知れた。当時、中国共産党は、王滬寧と蕭佳霊の関係を知らず、調査の過程で2人の結婚している事実が分かった。そのため、中南海に衝撃が走ったと言われる。

結局、蕭佳霊は1年間の留学予定を8ヵ月で切り上げて帰国している。現在、蕭佳霊は、復旦大学大学国際関係系・公共事務学院の副教授(准教授)である。
澁谷 司(しぶや つかさ)
1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。
専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

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