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労働環境が劣悪でなく、コストパフォーマンスが良く、しかもサービスが良い。そんな介護業界を実現したい - 「賢人論。」第50回落合陽一氏(後編)

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賢人論。第50回のゲストは、メディアアーティストとして世の中にインパクトを与え続ける落合陽一氏。介護の効率化と、高齢者の視力・聴力補完に関わる開発を軸に、介護業界の問題解決に力を注いでいる。後編で落合氏は、介護こそいま科学が「絶対にやるべきこと」であると断言し、現場の効率化と介護士の未来についてビジョンを語った。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

介護はイメージ的にクリーンな技術で自動化する必要がある

みんなの介護 落合さんが介護に関わる開発をしていることを、意外に思う方も多そうですが。

落合 市場規模も大きいですし、ニーズも多いですから、絶対にやるべきなんですよ。海外に目を向けても、中国が高齢化する前に先手を打ってソリューションをつくっておけば、大きなビジネスチャンスにもなります。日本という国は製品の安定性が非常に高いですから、安全な製品を求める中国のユーザーに刺さるようなブランディングをしていけば良いんです。

介護とは少し逸れますが、例えば「ダイキン」という企業はビジネスモデルがとても手堅いんです。アジアの新興国にはこれからたくさんビルが建っていく。そのビルのエアコンを全てダイキン製にしてもらうだけで、海外成長戦略はバッチリ、という。それと同じことを介護でやればいい。

みんなの介護 国内に目を向ければ、現段階で介護士はイメージの良い仕事とは言い難いです。業務の自動化・効率化を進めていけば変わっていくかもしれません。

落合 介護士の賃金も上がっていくと思いますね。今の介護業界は「給料が安くてもいいから、働かないと」という変な意識がある。もちろん介護は立派な仕事なんですけれど、そういう意識は、市場経済としては破綻している。それに保険点数という仕組みで回しているので機械による自動化がなかなか進まないし、むしろ自動化をしていかないことによってお金を得ている、という人も生まれてしまっている状況です。

ただ、サービス付き高齢者向け住宅の場合だけはその逆。サービスをどれだけ良くし、コストをどれだけ抑えるか、という競争原理がきちんと機能している。そっちの方が正しいあり方です。この環境をより洗練させて、他のジャンルの介護施設に勤めている介護士さんが転職してきたくなるようなところまで持っていければなお良い。

みんなの介護 介護士の仕事と言えば、現在では低賃金で重労働で…というイメージがありますから、そういったつらい部分を技術の力で軽減していく必要があります。

労働環境が劣悪でなくて、コストパフォーマンスが良く、しかもサービスが良い現場をつくるべきなんですよ。そのためには、必要性の低いことのために時間を割かれている人員を、違うところに回すこと。例えば、高齢者をテレビの前に集めることに人手を使うのではなくて、どこにいても眼鏡でテレビを観られるようにしてあげる、というアプローチをとるべきなんです。

入浴系の設備には、すでにロボットアームなどのハードウェアが入ったものが結構ありますよね。それと同じように、移動や視聴覚の部分もテクノロジーで置き換えていかなければいけないと思います。しかも、その技術は印象としてクリーンである必要がある。


ベッドと車椅子を“融合”し安全性を高めたい

落合 こういう話をするとよく「落合さん、高齢者問題のことも考えていて偉いですね」なんて言う人がいるんですが、そういうことではなくて。単に最適化をしたいという話なんです。介護こそ、今いちばん解くべき課題だろうと私は思っているので、税金を使ったプロジェクトでは全部そういったことの開発をするようにしています。

うちのラボは、一方では「Microsoft」や「Apple」の光学系の研究と競っていながら、その技術を使う先が介護、というところがユニークで面白いと思いますね。

みんなの介護 そういった海外の大手企業に対して、日本は太刀打ちする力をもっているのでしょうか?

落合 ロボティクスに関しては、日本はまだまだ強いです。ロボットに関する世界中の論文のうち、50%ほどを日本の論文が占めている、という状況。一方で、コンピューターに関しては弱く、10~20%程度。

その中でうちのラボはコンピューターが専門ですから、その辺は得意分野。コンピューターのロジックでロボットを動かしたり、オーディオ、ビジュアル系技術を統御しています。日本の中で優位…というほどでもないですけれど、“今風”なアプローチを取っている研究室ですよ。

みんなの介護 コンピューターのロジックでロボットを動かす、というのはどういうことですか?

落合 簡単に言うと、ソフトウェアをしっかりつくり込むことで、スペックがそこそこのハードウェアでも正確に動くようにする、ということです。要は、安くて性能が良い製品ををつくることができる。スマートフォンはまさにその代表ですよね。今から2022年までの5年間で開発を終わらせて、高齢化がピークになる2025年にそういうものを実用品として出すことができれば、とても価値が高いと思いますね。

車椅子が進化して、介助が1人で済むようになれば、手の空いた1人は他のもっと付加価値の高い介護へリソースを割くことができる。麻雀の相手をしてあげたり、一緒にテレビを見ながら話し相手になってあげたり。あとは、ベッドと車椅子の融合もやっていきたいですね。

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