記事

性暴力被害者の告発をどう受け止めるのか?

2/3

(2)はあちゅうさんへの批判

 告発に対してははあちゅうさんを支持する声が高まったが、一筋縄ではいかなかった。一つ目の理由は、はあちゅうさんがネット上ではよく知られた作家であり、もともと彼女に批判的な人が多かったことである。その人たちは「はあちゅうは嫌いだが、今回は支持する」という言及を、はあちゅうさんの告発に対して行なっている。二つ目の理由は、はあちゅうさんが、告発直後に「童貞」をネタにした性的なジョークを繰り返し発言したためだ。これは、童貞である男性へのセクハラであるという批判が起きた。

 はあちゅうさんは、後者の批判に対しては謝罪を出している。

はあちゅう「過去の「童貞」に関する発言についてのお詫び」

https://note.mu/ha_chu/n/n9f000c7bb226

 性的なジョークが難しいのは、それが期せずして相手を傷つけてしまうことがあることだ。そのとき「悪気はなかった」という言葉は免罪にならない。これは性暴力の被害者であってもなくても、同じことだろう。そのため、はあちゅうさんが謝罪したことは私も支持する。自分が「童貞である」ことに深い傷つきを抱えた人がいることは、私も知っている。だから、性的ジョークとして童貞をネタにしたことに反発する人が出るのもわかる。

 ただし、その性的ジョークへの批判が、「はあちゅうさんの性暴力の告発」をなかったことにする方向に進まないよう、気をつけなければならない。先に述べたように、性暴力の告発の重荷は、告発の後にのしかかってくる。その状況で、何をどう批判するのかという判断が、周囲の第三者には問われる。この点については、以下のブログ記事で丁寧に論じられている。

「セクハラの構造問題が議論されるべきなのに、被害者同士の殴り合いで発散していく地獄」

https://note.mu/fladdict/n/n666b0d9aaa4f

 上で書かれているように、童貞であることに深く傷ついてきた人たちが、はあちゅうさんに反発して怒りをぶつけたことに対しては、第三者は言えることはないだろ。その人にとって、大事な問題を第三者が「黙っていろ」と言うことはできない。しかし、この童貞の問題について「当事者以外もはあちゅうさんへ怒りをぶつけている部分があるのではないか」というのが上の記事の要点である。

 このことについては、これまでの性暴力の告発において、「当事者の一緒に怒ることが良いことだ」とされてきたことの功罪思う。私は一貫して第三者が怒りをぶつけることに反対している。はあちゅうさんの被害に対して、加害者に怒りを向ける必要もないと思うし、童貞のジョークに対して、はあちゅうさんに怒りを向ける必要もないと思う。重要なのは第三者の怒りではなく、「セクハラの構造」を明かしていくことである。

 その上で、ヨッピーさんの記事にも言及したい。ヨッピーさんは、インターネット上で活躍しているライターである。そして、Twitter上で、ヨッピーさんがはあちゅうさんの告発を後押しし、現在も連絡をとっていることを自ら明かしている。そして、以下のように書いた。

「〇〇は嫌いだけど、とかイチイチ言わなくていい。」

http://yoppymodel.hatenablog.com/entry/2017/12/19/124547

 この記事でヨッピーさんは、かなり激しい言葉で「今回の件みたいに、業務上の権力者が目下のものに対して日常的かつ執拗に行った逃れづらいハラスメントと、ネット上の発言によって不特定多数を傷つけることが同質のものではないことなんてみんな最初からわかっている癖に、「これもセクハラだ!同じだ!」って結局一緒くたにして叩いてる人いっぱいいるじゃないですか」と書いている。これは、「はあちゅうさんが受けた性暴力の被害」と「はあちゅうさんの童貞のジョーク」を等価だとみなして、相殺することへの批判である。

 ヨッピーさんは、はあちゅうさんから童貞のジョークに対する謝罪が出た後も、あくまでも「僕の1個人の意見です」と断った上で、以下のように書いている。

「あいつも同じ穴のムジナ」みたいな事言う人は本当にそれを今回の件と同質に並べて良い事柄だと思ってるんですかね。もちろん童貞を茶化すような発言で本当に傷ついてる人が居ることは理解するしそういう風潮が是正されるべきものであることは間違いないわけですが、それでも大多数の人が「嫌いだ」って言いたいがためにその件を持ち出してるように見えるんです。本当にそうじゃないって言いきれますか?

 このヨッピーさんの疑念について、インターネット上の多くの人は同意しないが、私は同意している。それは、単純に私がヨッピーさんを、単なる第三者ではなく、より被害者に近い「支援者」だとみなしているからだ。その立場の発言であれば、理解できる。

 ヨッピーさんはこれまで支援者と名乗ったことはないし、そのようなカテゴリにこちらが当てはめることは暴力的なことであり、本人には不本意かもしれない。けれど、もしかするとヨッピーさんの発言を、性暴力の「支援者」としての枠組みで捉えた時、見え方ががらりと変わるかもしれない。そのため、以下では一般論としての性暴力の「被害者」と「支援者」の話を書きたいと思う。

 あくまでも以下は一般論であり、これまで言及してきたはあちゅうさんの性暴力の告発とは、異なる面もあるだろう。私はかれらのことを、以下の論によって解釈するつもりもないし、説明するつもりもない。当人の言ったことや書いたものが全てである。他方、そうした発言や記事を受け止めるために、聞く側が共有した方が良い知識もあるように思う。それを念頭に置いて、読み進めて欲しい。

あわせて読みたい

「はあちゅう」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。