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子どもの貧困と自己責任論。湯浅誠が貧困バッシングに感じた「心強さ」とは

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 貧困の話題と切っても切り離せないのが、自己責任論。

 しかし、日本の貧困問題に20年以上関わってきた湯浅誠さんは、「子どもの貧困は、自己責任論を越えられる」と言います。

 「子どもの貧困」をテーマにした番組で女子高生が炎上したことがありましたが、その時、湯浅さんは「心強い」と感じたそうです。それはなぜでしょうか。湯浅さんから見た「子どもの貧困」について聞きました。

湯浅誠

1969年東京都生まれ。日本の貧困問題に取り組む第一人者。2008年末に日比谷公園で行われた「年越し派遣村」の村長としても知られる。元内閣府参与を経て、現在。法政大学現代福祉学部教授。『反貧困』『「なんとかする」子どもの貧困』など著書多数。

ホームレス問題から「貧困」の問題へ

駒崎 今日は「子どもの貧困」というテーマで、日本の貧困問題の第一人者である湯浅さんにお話を伺っていきたいと思います。まず、これまでどんなことをされてきたのか、簡単にお話しいただけますか?

湯浅 はい。僕は阪神大震災があった1995年からホームレス問題に関わり始めました。以来、貧困の問題を中心に20年ぐらい活動してきました。

最初はずっと「ホームレス問題」に取り組んでいたのですが、だんだん相談に乗る人の層が変わってきたんです。「アパートに住んでいるけど、食べていけない」という、ホームレスじゃない人が増えてきて、2000年代前半には、「もう “ホームレス問題” って言えないな」という感じになっていました。

リーマンショック後には日比谷公園で「年越し派遣村」を開き、その後、内閣府参与として、生活困窮者自立支援法の制定に携わりました。

※生活困窮者自立支援法…生活保護に至る前あるいは保護脱却の段階での自立支援を行うための法律

現在は、大学での授業・メディア出演・執筆活動に加えて、全国の「こども食堂」を訪ねたり、Yahoo!ニュースで「貧困問題」についての発信をしたりしていますね。



ひとり親支援を通じて、「子どもの貧困」問題に直面

湯浅 駒崎さんは、なぜ「子どもの貧困」問題に関わるようになったのですか?

駒崎 僕らが「子どもの貧困」問題に関わり始めたのは2008年頃からで、きっかけは「ひとり親支援」でした。

 すごく困っているひとり親の方々は、フローレンスの病児保育サービスの月会費がなかなか払えない。本当に必要な人に届いていないことを感じて、寄付を原資に、月々1000円払えば同じサービスを受けられるひとり親向けのメニューを作ったんです。

 その時に、ひとり親の方に話を聞きに行きました。そうしたら、ダブルワークしたり、トリプルワークをしたりと、ギリギリの所まで、努力されていたんです。生活保護を受給してもいいぐらいの方に、生活保護の制度を紹介しても、「私よりもっと頑張ってる人がいるんで」とか「私はそこまでじゃないんで」と言うんです。

 その時に、病児保育以外の手段でも、経済的に厳しい家庭のサポートをできないか考えるようになりました。湯浅さんが「ホームレス」から「貧困」の問題に入っていったように、僕は「ひとり親」の問題から「貧困」の問題に入っていきました。



子どもの貧困は、自己責任論を越える

駒崎 「子どもの貧困」とは奇妙な言い方で、これは世界では普通に「貧困問題」として語られるものです。それが日本では「子どもの貧困」という言葉によって、議論に火がつきました。

 「子どもの貧困」というと、いわゆる自己責任論から切り離して議論ができています。「それはなんとかしなきゃ」とみんなの意識を喚起できる。そういう意味で、非常に優れた造語だと僕は思っています。

湯浅 そこは大きいですよね。ずっと大人の貧困問題をやってきて思うのは、自己責任論の強さです。十数年ずっと戦ってきましたが、やっぱり根強い。簡単には越えられない山です。だけど、子どもは生まれる家庭を選べない。自己責任論という大きな山を最初から乗り越えているんです。



こども食堂は、みんなの意識が自己責任論を越えた一つの例です。地域の人たちが3、4人で自発的に取り組み始めて、一気に全国に広がった。これはものすごいことですよ。こんなこと、大人の貧困問題ではありえません。

 一方で、「貧困家庭の子ばかり集めてどうする」、「そんな場所には行きづらい」という偏見や誤解も生まれていて。偏見や誤解を解きほぐし、「子どもの貧困」の問題を人々にちゃんと理解してもらうために発信を続けています。



「見えない貧困」への反省

駒崎 我々は「こども宅食」という取り組みの中で、行政の協力を得て、経済的に厳しい家庭にピンポイントで食品を届けることができているからこそ思うのですが、やっぱり「日本の貧困は見えない」んですよ。これは、もっと知られないといけないと思います。

 経済的に厳しい家庭だからこそ、スマホを持っていないと仕事が探せなくて困ってしまう。周りに経済的に厳しいと思われたくないからこそ、服装には気を遣っていることも多い。

 「理想の貧困者」じゃないと世間に叩かれるというのも、ボロボロじゃないと支援するに値しないという感覚がどこかに存在している気がします。

湯浅 そこは自己責任論とも関係していると思います。やっぱり「見えない」というのは本当に見えない。自分の主観に入ってこない、自分が見えないものに関しては、いないんだろうと思うのが普通で。



湯浅 また、自己責任論が非常に強いからこそ、僕らも「非の打ち所のない貧困」を打ち出してきたんですよ。

 「8歳の女の子がティッシュをなめて甘いと言った」という話なら、厳しい貧困以外は貧困と認めない人たちも受け入れてくれる。そういう例以外は叩かれておしまいだったので、怖くて出せなかったんです。

 それは、自己責任論が強い社会だからこその工夫でもありました。しかし、それは結局、絶対的貧困に近い相対的貧困しか可視化しなくて、それ以外の人は見えないままだった。だからそこには、僕も反省がある。結局そうやって発信してきたんだよな、僕らも、って。

駒崎 世間が貧困に抱くイメージを、自分たちが生みだしてきてしまったという反省もあるんですね。

湯浅 そうですね。でも、子どもの貧困は、「衣食住がままならないような状態だけが貧困である」という世間のイメージを乗り越えられると思うんですよ。

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