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生活保護の母子加算の削減は多くのひとり親家庭に影響する(写真:アフロ)
生活保護の母子加算削減をやめて、ひとり親家庭にやさしい社会にしよう
現在、生活保護基準の引き下げの議論が進んでいます。
報道等によれば、12月18日に政府内での大枠の議論がまとまり、生活保護に関しては総額で160億円の削減方針が示されました。
生活保護費:年1.8%削減へ 18年10月から3年かけ - 毎日新聞
東京新聞:生活扶助、3年で160億円削減へ 政府決定 母子加算も減額:核心(TOKYO Web)
まだ、詳細な資料は公開されていないのですが、報道によれば以下の点が大きな変更です。
・生活扶助分(生活保護の生活費分)は180億円削減(平均1.8%減)
・母子加算は20億円削減(平均19%減)
・児童養育加算については3歳未満は15000円から10000円に減額。一方で、15歳から18歳までにも適用範囲を拡大(40億円の増額)
・削減幅は最大5%にとどめ2018年10月から3年かけて段階的に新基準を適用。
削減というのはつらい話です。削減幅が数百円の人から1万円以上になる人もいますが、当事者からすれば、みな一様に生活水準を下げることを強いられます。
生活保護基準の引き下げの全体の話は下記の記事で書きましたので、今日は母子加算の話をしたいと思います。
なぜなら、今回、最も削減されてしまうのが「母子世帯」だからです。
そして、この「母子世帯」こそが、もしかしたら日本で最も生活が苦しく、かつ、支援が届いていない人たちです。
そこを支援するのでなく削減するというのはやっぱりおかしい。そのことを解説したいと思います。
全体の話はこちら。生活保護基準の引き下げはやめてほしい(大西連) - Y!ニュース
めまぐるしく動く諸制度
実は、この数日、さまざまなことがたくさん決まっています。
児童扶養手当、年6回の方針 「まとめ支給」見直し:朝日新聞デジタル
来年度予算案固まる 過去最大の97兆7100億円 | NHKニュース
これらの報道によれば、児童扶養手当(ひとり親世帯への手当)は、これまで支給要件が親1人・子1人の世帯で年収130万円未満だったのを、年収160万円未満に改め、対象者を増やすことが決まったほか、批判があった4か月ごとの支給を2か月に1度に短縮するなどの前進がありました。これらは、ひとり親世帯への支援の拡充と言えます。
一方で、児童手当についてはまだ決まってはいないものの、所得制限を最も稼ぎの多い人を対象としていたものを世帯の合算にする案が出ています。これは、低賃金の共働き夫婦や低賃金稼ぎ主が複数人いる世帯では結果的に減額になる可能性もあり。まだ確定しているわけではないのですが、制度変更のマイナスの影響が出る可能性もあります。
このように、ここ数日、生活保護もそうですが、結構大きな制度変更がバンバンでていて、これは予算編成をこの時期に短期決戦で折衝しているからなのですが、正直、この仕組みはどうなの?と思います。
もちろん、正式な決定は年明けの国会を経て、なのですが、ある種、政治的な判断によって政策が採用される・されないというのをまざまざと見せつけられる、そして、生活保護に関しては削減される、という現実の厳しさを突き付けられます。
厳しいひとり親家庭の生活状況
さて、生活保護の母子加算について話を戻しましょう。
先日、平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告が公表されました。
これによれば、母子世帯の平均収入は、母子のみで243万円、母子世帯全体で343万円でした。(母子世帯には「母子のみ」と「母子+同居家族」が含まれますので数字が大きく変わります)
そして、母の平均就労収入は200万円でした。
正直、平均が200万円というのは結構衝撃です。一人暮らしで200万円ならいざ知らず、この金額で自分と子どもの生活を支えるわけですから相当な苦労をしているシングルマザーが多いことがわかります。
また、母の貯金額の合計が「50万円未満」というのが39.7%もあり、収入が厳しいだけでなく、かなりかつかつな状況がわかります。
これは別な調査ですが、ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%(2015年「国民生活基礎調査」)というデータもあり、ひとり親で、母子世帯が生活していくにはまだまだ制度や政策が足りていない、多くの世帯で日々の暮らしでも苦労をしながら何とかやっている状況がわかります。
2013年8月からの生活保護の基準改定では、母子世帯の4割が6%から7%削減されている
さて、生活保護の基準の話に戻しますが、生活保護の基準の引き下げは今回が初めてではありません。5年前に大きな引き下げがあり、平均6.5%削減されました。
5年前の引き下げについて、実際に各世帯ごとにどのような影響があったのかが専門部会の報告書で明らかになったのですが、最も削減されたのが母子世帯で、母子世帯の4割が6%から7%削減されていることがわかりました。
ただでさえ生活が苦しい母子世帯なのに、それをさらに引き下げようというのが今回の削減案なのです。