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魅力を感じないリニア新幹線

 リニア新幹線の工事受注をめぐって、大手建設業者が談合疑惑で捜索を受けているとのことだ。解説を読むと、リニア新幹線にはすでに3兆円の政府資金の投入が決まっていて、事実上の国家プロジェクトに格上げされているらしい。しかし国民的な期待感という点では、どうなのだろう。今の新幹線が工事中だったころの熱気とは、較べるべくもないように思われる。1960年代、育ち盛りだったわが家の娘たちまでが、「夢の超特急」と唱えながら模型の玩具を大事そうに眺めていたのを思い出す。

 今の新幹線は、東京〜名古屋間を、ほぼ100分で結んでいる。リニア新幹線ができると、それが45分ぐらいで行くようになるらしい。時間が節約になるのはいいことだろうが、その裏で犠牲になるものも少なくないのだ。まず、全線の9割までが地下とトンネルになるので、窓に見える景色というものがなくなる。車両には運転士は乗っておらず、すべて外部からの遠隔操作で運行されることになる。安全対策は講じられるだろうが、「乗り物」に乗っているイメージよりも、ダストシュートで送られるゴミのように運ばれるイメージが先に立つ。ビジネスで移動する人たちには、移動タイムはロスだからゼロに近いほどいいのだろうが、そこには「旅する」という感覚は何も残っていないだろう。同じ急ぐにしても、空の旅とも違う異質の移動手段のように思われるのだ。

 それでも何がなんでも時間を節約したいという、「時間の亡者たち」は先を急ぐ。理想とするところは所要時間ゼロの瞬間移動だろう。便利になった現代に、それほど早く会いたいのなら、手っ取り早くテレビ電話をかければいいと思うのは、高見の見物を決め込んでいる隠居の感覚なのかもしれない。

 ところで、新しいインフラを整備するについては、もちろん経営収支の基礎となる需要の予測も立っているに違いない。人口が減少して行く日本でも、今の新幹線より料金が高くなっても、充分に採算の取れるだけの乗客があると予想しているのだろう。そこには現行の新幹線が、リニア新幹線に乗客を奪われて減収になるのも、当然に計算されている筈である。どっちにしても、いまリニア新幹線のめに日夜努力している個々の人たちが責任を追及されることは、将来もないのだろう。

 私は鉄道好きだが、残念ながらリニア新幹線には、話のタネ以上の魅力は感じない。生きている間に機会があったら一度は乗ってみるかもしれないが、たぶん二度は乗らないだろう。私が好きな「乗り物」とは、かなり違ったものとして出来上がる気配が濃厚だからだ。

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