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ユネスコ神話崩壊「国連幻想」棄てよ

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写真)ヘブロン旧市街 出典)UNESCO

しかしアメリカ政府はユネスコからの脱退の後も「非加盟のオブザーバー」という地位を保ち、ユネスコの今後の機構改革などには提言をしていくという。ただしユネスコへの世界最大のアメリカ政府の分担金はもう払わないという。

アメリカ政府はオバマ政権時代の2010年から分担金の支払いを停止してきた。アメリカが主権国家とは認めないパレスチナをユネスコが完全メンバーとして加盟させたことに抗議したためだった。その分担金の遅延分が合計5億5千万ドルにも達していたが、それがもう払われないこととなる。

こうした動きも歴史の皮肉である。ユネスコはアメリカの主導で創設された組織だからだ。ユネスコは各種の国連機関の中でも経済社会理事会の下部機関、その名称どおり、教育、科学、文化の発展と推進を目的とする。その広範な活動の中でも最近、国際的な関心をとくに集めてきたのは「世界遺産」や「世界記憶遺産」の指定制度である。この制度には日本も深くからみ、影響を受けるようになった。

ユネスコは国連本体の創設から1年ほど後の1946年11月に発足した。その設立のためにはアメリカが先頭に立った。現在の加盟国は195ヵ国、そのうち分担金の最大の拠出国はアメリカで、金額全体の22%、第2位が日本で10%ほどとなってきた。だからそのアメリカの離脱は、国連全体にも大きな衝撃波を与えた。

トランプ政権のその動きは「アメリカ第一主義」によるグローバリズムへの反発という乱暴な行動にも映るかもしれない。だがアメリカのユネスコへの不満にはそれなりの歴史や背景がある。だから今回の離脱にも国内では意外なほど理解が示される。

トランプ政権には批判的な民主党シンクタンクのブルッキングス研究所の国連問題専門家ジョン・マッカーサー研究員も「今回のトランプ政権のユネスコ離脱はきわめて現実的な措置であり、政治的な動機だけからの派手な示威ではない」と支持を表明した。

保守系の大手紙ウォールストリート・ジャーナル社説も10月中旬の「アメリカは反イスラエルの国連機関を財政支援すべきではない」という見出しの社説でトランプ政権の離脱決定への賛成を表明した。同社説は以下の骨子を述べていた。

「ユネスコは何十年もにわたり、文化機関を装ってきたが、実は政治機関であり、歴史的にもソ連が長年、ユネスコで反米の教育プログラムなどを運営してきた。ユネスコ事務局長のイリナ・ボゴバ女史はブルガリアの共産党員だった過去があり、最近もロシアのプーチン大統領の支援を受けて、国連事務総長選に出た」  

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写真)イリナ・ボコバ前ユネスコ事務局長 Flickr Chatham House

「ボゴバ事務局長は2011年にパレスチナ統治機構をアメリカやイスラエルの反対を無視してユネスコの加盟国として受け入れた。ユネスコは反イスラエルの偏見が絶えず、基本的な内部改革が必要であり、そのためにも今回のトランプ政権の離脱の決定は正しい」

ただしボゴバ氏は10年の任期がちょうどこの10月末で切れて、次期事務局長にはフランスのオードレ・アズレ元文化通信相の就任が決まった。だがアメリカの離脱の状況には変わりはない。

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写真)オードレ・アズレ ユネスコ事務局長 出典)Un site du ministère de la Culture

アメリカには年来、国連自体への批判や懐疑の歴史がある。とくに保守派の間には国民の選挙で選ばれる民主主義の主権国家の指導者と異なり、単に任命で選ばれる国連のような国際機関の幹部への不信が強い。その不信は反米傾向の強い共産圏や第三世界の代表が多数決で牛耳る国連の左傾化によりさらに強められてきた。

アメリカはとくにユネスコと長年、戦ってきた。レーガン政権時代の1984年にはユネスコを脱退し、2003年まで復帰しなかったのだ。この時の原因はセネガル出身のアマドゥ・マハタル・ムボウという人物がユネスコ事務局長に選ばれ、13年間も在任して、反欧米の過激な政治姿勢をとり、縁故や腐敗をも極めたことだった。

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写真)アマドゥ・マハタル・ムボウ元ユネスコ事務局長 flickr Serigne Diagne

日本もこのいわくつきのユネスコの被害者といえる。2015年にユネスコの運営する「世界記憶遺産」に中国が申請した「南京大虐殺文書」が登録されたからだ。「文書」の内容はまったく一方的な虚構が多かった。その後には韓国主導で慰安婦についての記録も同様な申請の動きがあった。

だが日本には長年、国連全体に対する無条件の信仰が強く、ユネスコに対しても甘い認識が大きかった。この点の日本の状態は国連幻想ともいえよう。現実を見ずに、ひたすら国連機関を崇高な存在とあがめる傾向である。この幻想のシンボルは東京の青山にそびえる国連大学の威容だともいえよう。

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写真)国連大学 出典)Wikimedia

国連大学も実はユネスコ傘下の組織なのだ。だがこの施設は大学生もいなければ、教授も講義もない。高等教育の機能はなにもなく、国連の枠内で動く特定の研究者や活動家たちが特定の学術研究をするだけの機能しかない。そんな機関を日本政府が例外的な好条件で招待して開設したのだ。日本にとっての実益はなにもないとさえいえよう。

トランプ政権のユネスコ離脱はこの種の特殊な国連機関の特殊な政治偏向を改めて立証し、日本の国連幻想の錯誤を印象づけることともなりそうだ。

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