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経験から学ぶ力を、高めたい。

名著『経験からの学習』(2006年)の著者、松尾睦教授(神戸大学)による待望の新刊『「経験学習」入門画像を見る』が発売となりました。読みやすさ、まとまり、事例、実務に使えるツール、どの点を取っても、人材育成に関わる人であれば必読の1冊に仕上がっています。

同じことを経験しても、成長する人と、しない人がいます。この違いは「経験から学ぶ力」の有無にあるというところまでは、多くの人が実体験を通して理解しているところでしょう。では「経験から学ぶ力」とは、具体的にはどういう要素で構成されているのでしょうか?

松尾先生は、本書で、これをまず「挑戦的な目標に取り組む」「自分の仕事のあり方を振り返る」「仕事の中に意義ややりがいを見つける」という3要素で表現します。

さらに先生は、この3要素を高める原動力として「仕事に対する思いやこだわり」と「他者とのつながり」の2つをピックアップし、事例を通してこの重要性を訴えています。

実務でも、3要素を高める「思い」については p126 の図が、そして「つながり」については p143 の図が活用できると思います。実際、この2つの図を理解するためだけでも、本書を読んでおく価値があると思います。本書を読んで、個人的に心に残った記述に、以下簡単なコメントをつけてみます。
・いくら難しい仕事にチャレンジしても、「やりっぱなし」では成長はのぞめません。自分の仕事のあり方を振り返り、そこから教訓を得て、自分の仕事の仕方を検証することが大切になります。(p18)
僕の意見としては、振り返りの機会を作るためには、ブログなどで文章を書くことが重要だと思います。TwitterやSNSでは、どうしても流れていってしまうイメージがあります。
・強い成長実感を持っている人の割合は、30代に入って急激に落ちていることがわかります。これは、企業に入った初めの10年間は順調に成長するものの、仕事に慣れてきた30代以降は、徐々に企業人の成長が鈍化することを示しているでしょう。(p26)
多くの人が同意できる意見ではないかと思います。成長の鈍化は本当に怖いことなので、30代を超えてきたら、意識して新しいことにチャレンジしたり、新しい人との出会いを大切にしたり、特に自分よりも若い人との関わりを深めたりすることが重要だと思います。
・優れたマネジャーの経験を長年調査してきた米国の研究所によれば、成人における学びの70%は自分の仕事経験から、20%は他者の観察やアドバイスから、10%は本を読んだり研修を受けたりすることから得ていることがわかりました。(p48)
これは「70:20:10の法則」として、人事の世界では広く知られているものですね。70%は仕事の経験からということで、仕事を通して成長するという姿勢が重要ですが、同時に、残りの30%は仕事の外にあるので、ここへの具体的な対策も必要ですね。
・「ルーチンワークばかりで、成長につながる経験が与えられない」と悩んでいる人の中には、そもそも現在手がけている仕事の質が高くないために、難しい仕事を任せられるだけの信頼を得ていない可能性があります。(p78)
厳しい指摘ではありますが、僕も同意します。極端な例もあるでしょうが、それでも目の前の仕事をきちんとこなした先にしかチャンスはないと考えられる人のほうが伸びると思います。
・ある精神分析学者によれば、人は他者を通してしか、自分をみることができないそうです。ですから私は、クライアントや部下や同僚など、自分の周囲の人たちから得られるフィードバックや情報を大切にしています。(p93)
誰かに叱ってもらう機会は、本当に貴重だと思います。年齢が上がってくると、そうした機会が極端に減ってくるので、時に理不尽に感じられたとしても、とにかく叱ってくれる人は大切です。そういう友達を持つことも重要ですね。
・伸びる人材は素直な人間です。僕が言う素直とは、良いと思ったことを合理的に吸収していける人間です。(p97)
これもわかりますねー。こういう人は、幅広い情報や人脈をベースにして、自分の仕事の「あるべき姿」を常にバージョンアップしているように思います。
・イヤなことでも集中して続けていると、面白いとか面白くないとかの境界があいまいになり、肯定的な変化が起こります。なんだか楽しくなる瞬間や「これは何だろう?」という意外な発見です。そうした面白さの兆候が現われてきたら、それを逃さずに深堀りすると、当初つまらないと感じていた仕事にも、やりがいを感じるようになります。(p108)
これも良くわかります。仕事における食わず嫌いは、色々と損をすると思います。個人的には、自分がこうした状況にあるときは、その道の専門家に、その仕事の面白さを聞いたりする機会を持つようにしてきました。
・ここで注意していただきたいことは、単に、信念としての「思い」が強ければ成長するわけではないということです。適切な「思い」、正しい「思い」を持っているかどうかが問題になります。適切で正しい「思い」とは、自分のことを大切にすると同時に、他者のことを大切にしながら仕事をしたいという「思い」です。(p123)
深い言葉ですね。自分として正しくあろうとすることが、他者にとって不利益になってしまう場合など、なかなか簡単にはいかないことではあります。しかしやはり、こうした「思い」を持つことを止めてしまえば、単なるビジネス・マシーンになってしまいますからね。
・若手社員の診断結果を見ると、職場で伸びている人は、学習目標(成長したいという思い)が高い傾向にあります。これに対し、あまりうまく育っていない若手はこのスコアが低いですね。この結果はとても顕著に出ています。(p131)
成長したいという思いは、自己効力感(自分は世界に、何らかのことを働きかけることができるという実感)と連結しているように思います。このためには、小さくても構わないので、とにかく成功体験の積み上げが必要です。

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コンテンツだけでも十分に嬉しい内容なのですが、さらに本書の最終章(第6章)には、学ぶ力を高めるツールとして、チェックリスト、カルテ、キャリアシートが付いています。この部分は、人材育成に関わる人のみならず、多くのビジネス・パーソンにも役立つところではないでしょうか。

(これから会食に出ます)

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