記事

凍結受精卵を無断で着床して出産した場合と父子関係

大変興味深いテーマの判決が12月15日に下される予定である。
<親子関係訴訟>凍結受精卵、夫の同意は…15日に判決

夫婦間の凍結受精卵を、夫婦関係が悪化して別居した段階で、妻が夫に無断で着床して出産したという場合に、夫は親子関係不存在確認の訴えを提起して認められるのかどうかという問題である。

記事によれば2016年10月まで婚姻関係にあった元夫婦で、以前にも体外受精で出産していたが、夫婦間が悪化して別居した2013年の後、2014年に女性が無断で受精卵を着床し、翌2015年春に出産したという。今回の提訴は一年以上たっているので、嫡出否認の訴えではなく親子関係不存在確認である。

しかし、嫡出推定が及べば、よほどの外形的な上京がない限り、親子関係が認められるというのが我が国の判例の立場であるし、生物学的な親子関係については争いがないので、これで親子関係不存在が認められるとは到底思えないのである。

少なくとも法令・判例ともに、体外受精で凍結受精卵をキープし、それを任意の時に着床して出産するというケースを想定していないので、そのことに父の同意が必要か、第三者提供の精子または卵子だったらどうか、この場合に配偶者の同意のみならず提供者の同意も必要となるのかどうか、そして同意がない場合の効果はどう考えたら良いのか、親子関係の存否に効果が直結するのか、親権・監護権とか扶養義務とかを左右するのか、それともせいぜい損害賠償程度の効果しか生じないのか、それも生じないのかといった諸事については全くノールールである。
記事中で引用されている「移植のたびに夫婦の同意を得る」という倫理規定は、これらの法的効果には影響しないと思われる。

今のところの私見では、親子関係は否定できなくとも、それに基づく権利義務は否定できるという辺りが落としどころかと思うが、はたしてどうであろうか?

追記
毎日新聞より。

「凍結保存していた受精卵を別居中の妻が夫に無断で移植し、出産したとして、奈良県の外国籍の男性(46)が生まれた女児(2)と法的な父子関係がないことの確認を求めた訴訟で、奈良家裁(渡辺雅道裁判長)は15日、訴えを却下し、父子関係を認める判決を言い渡した。」
訴えを却下したのなら父子関係を認めたわけでもなさそうに思うが、事実上はそうなると言う趣旨かな。

まあ立法できちんと決めて行くのが筋で、裁判官にアドホックに親子の再定義をさせるのは無茶な要求だと思う。

あわせて読みたい

「出産」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    男性パートナーの得意な家事「皿洗い」に女性は不満?意識のギャップを防ぐカギは【9月19日は育休を考える日】

    ふかぼりメメント

    09月18日 08:50

  2. 2

    総裁選で高市氏が怒涛の追い上げ 単純な「極右ムーブメント」とくくってよいのか

    倉本圭造

    09月17日 14:15

  3. 3

    新型コロナの影響で「九九」の勉強がおろそかに 顕在化するコロナ禍の子どもへの影響

    石川奈津美

    09月17日 08:07

  4. 4

    高市早苗総裁候補VS小泉進次郎議員の抗争勃発?!重要争点の一つは「エネルギー政策」だ

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    09月18日 08:32

  5. 5

    自民党政権の危機管理の失敗【2】後悔のない対策

    山内康一

    09月18日 08:43

  6. 6

    靖国神社公式参拝は当たり前では

    和田政宗

    09月18日 08:37

  7. 7

    米英豪が安保の新枠組みを発表、中国はTPP加盟を申請

    My Big Apple NY

    09月18日 09:21

  8. 8

    岸田氏が首相になれば真っ向から中国と対立、総裁選の争点になったウイグル人権問題

    木村正人

    09月17日 10:35

  9. 9

    中村格氏が警察庁長官という人事はひどすぎませんか。安倍・菅内閣による検察、警察人事の露骨な恣意性

    猪野 亨

    09月17日 09:07

  10. 10

    先進国唯一の異常事態 「安値思考」から抜け出せない日本 - 渡辺 努 (東京大学大学院経済学研究科教授)

    WEDGE Infinity

    09月18日 10:45

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。