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ノーベル平和賞の虚実

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トップ画像:アルフレッド・ノーベル 出典/Nobel Prize

島田洋一(福井県立大学教授)

【まとめ】

・ノーベル平和賞はノルウェーの通常リベラル派が多数を占める国会が選考権限を持ち、同国の国益と無縁でない。

・同賞に意義が認められるのは、独裁権力と戦う人権・民主活動家に与えられた場合に限るべき。

中国・韓国が同賞を情報戦に利用する展開もありうる。政府は警戒を怠らず正確な史実の発信を。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては写真の説明と出典のみ記載されることがあります。その場合、http://japan-indepth.jp/?p=37404でお読みください。】

ノーベル平和賞は一体どこが決めているのか、という疑問の声に時々接する。以下はそれに対する回答である。

スウェーデン人アルフレッド・ノーベルの遺言と遺産によって創設されたのは、物理学、化学、生理・医学、文学、平和の5部門だが(経済学賞は、スウェーデン中央銀行が1968年に設けた全く別の賞。権威を得るためノーベルの名を冠し現在に至る)、ノーベルは平和賞のみ、選考権限をスウェーデンの関連学術団体ではなくノルウェーに与えている。具体的には、ノルウェー国会が任命する5人の委員が選考に当たると遺言された。

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▲写真 ノーベル平和賞選考が行われるノルウェー・ノーベル研究所 出典:Wikimedia

なぜノルウェーなのか。ノーベルは理由を明記していないが、当時、スウェーデンとノルウェーは連合王国を形成しており、相対的に力の弱いノルウェーの方が非軍事的手段に一段と智恵を巡らすと期待したのではとも言われる。

いずれにせよ、ノーベル平和賞は、北欧の小国ノルウェー(人口500万人強)の、通常リベラル派が多数を占める国会が選考権限を持つ賞であり、それ以上でも以下でもない。

今年(2017年)のノーベル平和賞は運動体「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)に与えられた。選考委は授賞理由で、「北朝鮮にみられるように多くの国が核開発に取り組む現実の脅威がある」と述べているが、北朝鮮のような国際規範を一顧だにしない極度に非人道的な政権に対しては、軍事的手段で脅威を取り除く以外ないのではないかといった発想は、委員らの思考回路には入ってこない。

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▲写真 ICAN ロゴマーク 出典:ICANウェブページ

なお朝鮮半島関係では過去に、太陽政策で北に多額の資金・物資を渡し「現実の脅威」を増大させた金大中韓国大統領が受賞している(2000年)。今後、仮にトランプ米大統領が軍事力で北の独裁体制を倒し、脅威を除去したとしても、ノーベル平和賞の候補にすら挙がらないだろう。

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▲写真 金大中元韓国大統領とクリントン元米大統領 出典:the Executive Office of the President of the United States

ちなみに米大統領では、過去に4人が受賞している。その内、ウッドロー・ウィルソン(1919年)、ジミー・カーター(2002年)、バラク・オバマ(2009年)の3人は民主党所属で、リベラル・インテリ好みの分かりやすい人選である。

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▲写真 ウッドロー・ウィルソン 出典:Pach Brothers, New York

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▲写真 ジミー・カーター 出典:WhiteHouse

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▲写真 バラク・オバマ 出典:photo by Pete Souza, The Obama-Biden Transition Project

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