記事
- 2017年12月16日 14:04
企業主導型保育所で考えたいこと
リンク先を見る
武蔵境駅近くに企業主導型保育所「さかい りんごの木保育園」が2018年3月にオープンすることを以前に書いたが、この保育園のことではなく、企業主導型保育所の一般論として期待と課題を考えてみた。
特徴となるのは、認可保育園とは違い武蔵野市など自治体の許認可を必要とせず、都道府県等に届け出た上で、補助金の申請を公益財団法人児童育成協会に行うことで保育園を開園できることだ。
このことで、市町村の計画とは関係がなく企業が必要と判断すればすぐに事業が始められること。開園予定地周辺で反対運動が起きると市町村が消極的になるケースがあるが、市町村の判断を待たずに企業が判断して開園できることになる。
一方、児童福祉法第24条にもとづく「保育所」ではなく、市町村からの補助金もないので、運営に市町村の関与がないことも特徴だ。一定の基準はあるものの、国が主体になるので園ごとへの指導監督が難しくなり「質」が保てるのかの課題が残る。
保育園側にとっても、全国を対象としている国に対して日常の細かな相談がし難いのも課題だろう。
「さかい りんごの木保育園」の場合は、武蔵野市と情報共有や相談をしているというので、心配は少ないと思えるが、今後増えていくなかで「質」をどのように保つのか。市町村として認可園との違いをどこまで認めるかの課題は残ってしまう。
また、企業主導型保育所に入園をしていても、認可園に申請をして入れなければ待機児としてカウントされるため、正確な待機児数が分らなくなる課題もある。
例えば、企業主導型保育所に100名の園児が通ったとしていて、その園児が認可園への申込みを市町村へ行ったとすれば、100名の待機児となり、100名分の保育園を作らなければならないのか、となってしまうからだ。
つまり、保育園の整備をどこまで進めるかなど市の事業計画に影響することが懸念される。
このことや待機児が減らないこともあり、国は、「地域枠」の上限をなくす方針にしたと報道されている。来年度からの実施をめざしていると伝えられているが(朝日新聞2017年11月26日)、来年4月1日から可能となれば、現在の「地域枠」の定数から増えることになる。園の経営だけでなく、保育園が見つからないという家庭では死活問題となるので早急にこのことは決めるべきだ。
また、東京都の認証保育所を含む認可外保育所よりも事業者への補助金が手厚いため、安い保育料に設定できるとも考えられる。
このことは、上記の「地域枠」が撤廃されれば、認可外や認証よりも企業主導型保育所が増えていくのでは、と考えられる。そのさい、企業従業員向けという目的は達成できるのか。補助金増による保育園増設と目的が異なった事業へとなってしまわないだろうか(それはそれで良いのだが)。既存の認証保育所との格差にならないかなど別の課題が浮上しそうだ。この制度は、スタートした2016年よりも前に開園した施設は対象とならず、新規開園だけが対象となるからだ。
さらに、現在開園している企業主導型保育所の約7割が定員19名以下の小規模となっている。0〜2歳が中心だとすれば、3歳児で認可園に入れない「3歳児問題」となってしまうかもしれない。
しかし、制度は始まったばかりで市、町村の関与も含め、今後はどうなるか分らない。平成29年度の募集想定の7万人分が到達したため現在では補助金の募集が行われていない状態で、来年度がどうなるのか。また、毎年の運営費への補助金が何時まで続くかの懸念材料もある。
今後、さらに増えるとすれば区市町村との情報共有や質の担保をどう担保するのかの課題はさらに広がりそうだ。
そして、全ての子どもは同じ質の環境で育つべきと考えれば、認可園と環境が大きく異なっていた場合、市としての支援も必要になってくると思う。認可園と認証保育所の保育料格差に加え企業主導型保育所との差を考えることも必要になるだろう。
また、地方分権の流れのなかで、自治体を飛び越えて国が直接補助することは中央集権に戻ってしまうのかとも思ってしまう。
武蔵野市は、平成30年には保育料審議会が設置し保育料について議論する予定だ。ここでの論点となるかもしれない。
いずれにせよ、今後に注目したい。
■制度の課題
企業主導型保育所は、休日や夜間も開園することが可能。短時間や週に二回の利用でも良いとされ、企業での多様な働き方への支援と待機児対策として考えられている。開園する場所は、企業の敷地内などに限定されていないのでどこにでも開園ができる。特徴となるのは、認可保育園とは違い武蔵野市など自治体の許認可を必要とせず、都道府県等に届け出た上で、補助金の申請を公益財団法人児童育成協会に行うことで保育園を開園できることだ。
このことで、市町村の計画とは関係がなく企業が必要と判断すればすぐに事業が始められること。開園予定地周辺で反対運動が起きると市町村が消極的になるケースがあるが、市町村の判断を待たずに企業が判断して開園できることになる。
一方、児童福祉法第24条にもとづく「保育所」ではなく、市町村からの補助金もないので、運営に市町村の関与がないことも特徴だ。一定の基準はあるものの、国が主体になるので園ごとへの指導監督が難しくなり「質」が保てるのかの課題が残る。
保育園側にとっても、全国を対象としている国に対して日常の細かな相談がし難いのも課題だろう。
「さかい りんごの木保育園」の場合は、武蔵野市と情報共有や相談をしているというので、心配は少ないと思えるが、今後増えていくなかで「質」をどのように保つのか。市町村として認可園との違いをどこまで認めるかの課題は残ってしまう。
■市町村の事業計画への影響
企業主導型保育所は、入園申込みを市町村の窓口を通さず園との直接契約となるため、市町村が園児の数を把握できない課題もある。実際に開園が決まってから市町村が知ったというケースは少なくないのだ。また、企業主導型保育所に入園をしていても、認可園に申請をして入れなければ待機児としてカウントされるため、正確な待機児数が分らなくなる課題もある。
例えば、企業主導型保育所に100名の園児が通ったとしていて、その園児が認可園への申込みを市町村へ行ったとすれば、100名の待機児となり、100名分の保育園を作らなければならないのか、となってしまうからだ。
つまり、保育園の整備をどこまで進めるかなど市の事業計画に影響することが懸念される。
■地域枠撤廃か?
企業従業員向けの保育所と想定されていたため、「地域枠」は50%以下とされていたが、従業員だけで枠を使うほど集まらないことも課題だ。複数の企業の従業員の子どもを預かることも制度として可能なため、複数の事業者で利用することも可能だが、どこまで集められるかも課題だろう。枠が埋まればいいが、埋まらない場合、そのスペースがぽっかり空いてしまい、経営的な課題となってしまうからだ。このことや待機児が減らないこともあり、国は、「地域枠」の上限をなくす方針にしたと報道されている。来年度からの実施をめざしていると伝えられているが(朝日新聞2017年11月26日)、来年4月1日から可能となれば、現在の「地域枠」の定数から増えることになる。園の経営だけでなく、保育園が見つからないという家庭では死活問題となるので早急にこのことは決めるべきだ。
■認可外、認証よりも有利?
企業主導型保育所の保育料は、認可園のように保護者の所得によって変わらず一律となる。所得の多い家庭にとっては、企業主導型保育所のほうが安くなる可能性もある。また、東京都の認証保育所を含む認可外保育所よりも事業者への補助金が手厚いため、安い保育料に設定できるとも考えられる。
このことは、上記の「地域枠」が撤廃されれば、認可外や認証よりも企業主導型保育所が増えていくのでは、と考えられる。そのさい、企業従業員向けという目的は達成できるのか。補助金増による保育園増設と目的が異なった事業へとなってしまわないだろうか(それはそれで良いのだが)。既存の認証保育所との格差にならないかなど別の課題が浮上しそうだ。この制度は、スタートした2016年よりも前に開園した施設は対象とならず、新規開園だけが対象となるからだ。
さらに、現在開園している企業主導型保育所の約7割が定員19名以下の小規模となっている。0〜2歳が中心だとすれば、3歳児で認可園に入れない「3歳児問題」となってしまうかもしれない。
■新たな格差?
多様な就労形態に対応する保育サービスの拡大や仕事と子育てとの両立との目的や非正規労働者の子どもを受け入れることで補助金が加算される制度もあり、概ねの方向性は賛同できる。しかし、制度は始まったばかりで市、町村の関与も含め、今後はどうなるか分らない。平成29年度の募集想定の7万人分が到達したため現在では補助金の募集が行われていない状態で、来年度がどうなるのか。また、毎年の運営費への補助金が何時まで続くかの懸念材料もある。
今後、さらに増えるとすれば区市町村との情報共有や質の担保をどう担保するのかの課題はさらに広がりそうだ。
そして、全ての子どもは同じ質の環境で育つべきと考えれば、認可園と環境が大きく異なっていた場合、市としての支援も必要になってくると思う。認可園と認証保育所の保育料格差に加え企業主導型保育所との差を考えることも必要になるだろう。
また、地方分権の流れのなかで、自治体を飛び越えて国が直接補助することは中央集権に戻ってしまうのかとも思ってしまう。
武蔵野市は、平成30年には保育料審議会が設置し保育料について議論する予定だ。ここでの論点となるかもしれない。
いずれにせよ、今後に注目したい。