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- 2011年12月10日 09:25
【赤木智弘の眼光紙背】ダメな人たちをちゃんと叱ろう
赤木智弘の眼光紙背:第204回
「日本医師会の統計によると、今年の4月から10月にかけて、「白血病」と診断された患者数が、昨年の約7倍にのぼったことが21日に判明した」という内容が、ツイッター上などで拡散していることに対し日本医師会は、そのような発表を行った事実はなく、データの信憑性も疑わざるをえない数値であると表明した。(*1)
放射線を過剰に怖がるごく一部の人たちがデマを撒き散らすのは今日に始まったことではなく、こうしたデマは現れては消えていくものなので、日本医師会が正式に否定したことまでを含めて、今回も1つのデマが終わったと考えていた。しかし、この問題はその後、予想だにしなかったとんでもない展開となった。
「本当に7%増えていた!」「日本医師会はデマだと言っていたのに」というつぶやきと共に、人口動態調査(*2)による、2011年6月の「白血病による死亡者数」が「約7%」増えたというデータがTwitter上などで拡散され始めたのである。(*3)
正直、私は驚きを隠せなかった。もちろん「本当に白血病が7%増えていた、デマじゃなかったんだ!」ではなく、「こいつら、本当に自分が何を言っているのか、まったく理解できていなかった」という驚きだ。
もう一度、話の流れを確認してもらいたい。先日まで出回っていて日本医師会が否定をしたデマは「白血病患者が7倍」という話で、人口動態調査の資料は「白血病での死亡者数が7%増」である。対象とする人はデマが「白血病患者」、人口動態調査は「白血病での死亡者数」。数値にいたってはデマが「7倍」、人口動態調査が「7%」であり、対象も数値も全く違う。こんな何の関係もない資料をもってきて「全国の白血病は昨年より約7%増加は真実だった!」なにもあったものじゃない。
これを混同して「デマではなかった!本当だった!」などと主張されても、呆れる他はない。まさか7倍と7%が違う数値だということが理解出来ない人がいるとは思っていなかった。小学生高学年だって、それを間違えるのはちょっとどうかと思うレベルである。
他にも、データを細かく見れば、彼らの主張に反する、さまざまな疑問点がある。
前年同月との比較で7%程度増えて、680人ではあるものの、震災前にも同程度増えていたり、700人以上お亡くなりになっている月があるということ。
彼らは「放射線の影響は女性ほど大きい」と言っていたはずだが、男女別でいえば男性の増加が13.3%で、女性はマイナス1.8%であること。
彼らは「放射線の影響は子供ほど大きい」と言っていたはずだが、年齢別の死亡者数を見れば、圧倒的に60歳以上が大半だということ。
他の月との比較は、様々な資料をあたらないと分からないが、少なくとも男女別の死亡者数の増減率や、年齢別死亡者数は、「本当に7%増加している!」とツイートされた資料に、そのまま書いてあるのだから、手間もかからずに分かることである。
しかし、問題はそんな細かい疑問点をあげる以前に、放射線の害を口にする人たちの一部が、「白血病での死亡者数が7%増」というデータが「白血病患者が7倍」という噂の証明になるのだと思ってしまうという現実そのものである。
ハッキリ言って、こんなもの「お前のいっていることと、示しているデータが全く違うじゃねーか」で終わりである。しかし、批判する側が遠慮をしているのか、あまりの衝撃にあえて避けているのか、全くといっていいほど、データが筋違いであることは批判の論点として触れられていない。中には「そうした疑念がうまれるのも、政府の対応が後手後手だからである」と、紋切り型の政府批判を持ちだして、直接的な批判を避ける者もいる。
しかし、原発事故という大きな問題から、子供に限らず社会全体を守るためには、正確な情報のみならず、少なくとも最低限の知性というものが、国民の側にも必要なはずだ。そこを無視していくら「正しいデータ」だけがあったとしても、今回のようなことを許してしまえば、いくらでもデマが蔓延し、正しいデータは妄想から産まれたゴミの山に隠されてしまう。それすら政府のせいだと批判し、デマを蔓延させる人間を批判しないのは、責任回避の態度であり、とても賢明とは言えないだろう。
子供たちを守るためにも、大騒ぎする人たちの頭の悪さに正面から対峙し、まっとうに批判していかなければならない。
*1:ネット上の書き込み「白血病患者急増 医学界で高まる不安」について(日本医師会)http://www.med.or.jp/people/info/people_info/000614.html
*2:人口動態調査 死亡数,性・年齢(5歳階級)・選択死因分類別(厚生労働省)http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000012465482
*3:政府統計『白血病患者』が本当に7%近く増加している!Twitterで話題に(秒刊SUNDAY)http://www.yukawanet.com/archives/4034695.html
画像を見る赤木智弘(あかぎ・ともひろ)
1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。
「日本医師会の統計によると、今年の4月から10月にかけて、「白血病」と診断された患者数が、昨年の約7倍にのぼったことが21日に判明した」という内容が、ツイッター上などで拡散していることに対し日本医師会は、そのような発表を行った事実はなく、データの信憑性も疑わざるをえない数値であると表明した。(*1)
放射線を過剰に怖がるごく一部の人たちがデマを撒き散らすのは今日に始まったことではなく、こうしたデマは現れては消えていくものなので、日本医師会が正式に否定したことまでを含めて、今回も1つのデマが終わったと考えていた。しかし、この問題はその後、予想だにしなかったとんでもない展開となった。
「本当に7%増えていた!」「日本医師会はデマだと言っていたのに」というつぶやきと共に、人口動態調査(*2)による、2011年6月の「白血病による死亡者数」が「約7%」増えたというデータがTwitter上などで拡散され始めたのである。(*3)
正直、私は驚きを隠せなかった。もちろん「本当に白血病が7%増えていた、デマじゃなかったんだ!」ではなく、「こいつら、本当に自分が何を言っているのか、まったく理解できていなかった」という驚きだ。
もう一度、話の流れを確認してもらいたい。先日まで出回っていて日本医師会が否定をしたデマは「白血病患者が7倍」という話で、人口動態調査の資料は「白血病での死亡者数が7%増」である。対象とする人はデマが「白血病患者」、人口動態調査は「白血病での死亡者数」。数値にいたってはデマが「7倍」、人口動態調査が「7%」であり、対象も数値も全く違う。こんな何の関係もない資料をもってきて「全国の白血病は昨年より約7%増加は真実だった!」なにもあったものじゃない。
これを混同して「デマではなかった!本当だった!」などと主張されても、呆れる他はない。まさか7倍と7%が違う数値だということが理解出来ない人がいるとは思っていなかった。小学生高学年だって、それを間違えるのはちょっとどうかと思うレベルである。
他にも、データを細かく見れば、彼らの主張に反する、さまざまな疑問点がある。
前年同月との比較で7%程度増えて、680人ではあるものの、震災前にも同程度増えていたり、700人以上お亡くなりになっている月があるということ。
彼らは「放射線の影響は女性ほど大きい」と言っていたはずだが、男女別でいえば男性の増加が13.3%で、女性はマイナス1.8%であること。
彼らは「放射線の影響は子供ほど大きい」と言っていたはずだが、年齢別の死亡者数を見れば、圧倒的に60歳以上が大半だということ。
他の月との比較は、様々な資料をあたらないと分からないが、少なくとも男女別の死亡者数の増減率や、年齢別死亡者数は、「本当に7%増加している!」とツイートされた資料に、そのまま書いてあるのだから、手間もかからずに分かることである。
しかし、問題はそんな細かい疑問点をあげる以前に、放射線の害を口にする人たちの一部が、「白血病での死亡者数が7%増」というデータが「白血病患者が7倍」という噂の証明になるのだと思ってしまうという現実そのものである。
ハッキリ言って、こんなもの「お前のいっていることと、示しているデータが全く違うじゃねーか」で終わりである。しかし、批判する側が遠慮をしているのか、あまりの衝撃にあえて避けているのか、全くといっていいほど、データが筋違いであることは批判の論点として触れられていない。中には「そうした疑念がうまれるのも、政府の対応が後手後手だからである」と、紋切り型の政府批判を持ちだして、直接的な批判を避ける者もいる。
しかし、原発事故という大きな問題から、子供に限らず社会全体を守るためには、正確な情報のみならず、少なくとも最低限の知性というものが、国民の側にも必要なはずだ。そこを無視していくら「正しいデータ」だけがあったとしても、今回のようなことを許してしまえば、いくらでもデマが蔓延し、正しいデータは妄想から産まれたゴミの山に隠されてしまう。それすら政府のせいだと批判し、デマを蔓延させる人間を批判しないのは、責任回避の態度であり、とても賢明とは言えないだろう。
子供たちを守るためにも、大騒ぎする人たちの頭の悪さに正面から対峙し、まっとうに批判していかなければならない。
*1:ネット上の書き込み「白血病患者急増 医学界で高まる不安」について(日本医師会)http://www.med.or.jp/people/info/people_info/000614.html
*2:人口動態調査 死亡数,性・年齢(5歳階級)・選択死因分類別(厚生労働省)http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000012465482
*3:政府統計『白血病患者』が本当に7%近く増加している!Twitterで話題に(秒刊SUNDAY)http://www.yukawanet.com/archives/4034695.html
プロフィール
画像を見る赤木智弘(あかぎ・ともひろ)
1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。



