- 2017年12月15日 17:47
生活保護基準の引き下げはやめてほしい
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生活保護基準引き下げは生活保護世帯の家計に大きな影響がある(写真:アフロ)
生活保護基準の引き下げはやめてほしい
みなさんは、自分の生活費を来月から1割減らさなければならなくなったら、どうするでしょうか。
月収25万円の人にとっては2万5千円。月収15万円の人にとっては1万5千円。月収50万円の人にとっては5万円のカットになります。
もちろん、それぞれの負担感は違うでしょうが、ちょっと遊びに行くのを控えたり、節約したり、貯金をやめたり。
当然ですが、所得が低ければ低いほど、減らしてはいけないものを減らさなければならなくなります。
食事を減らしたり、エアコンの使用を控えたり、そもそも不要な外出をやめたり……。
この1割カットをもし、政府に強いられるとしたら、あなたはどう思いますか?
自分で働いて稼いだお金だから政府が関与するべきではない? 年金は自分が払ったものだから削減されるべきではない? では、生活保護はどうですか?
生活保護なら1割カットをしてもかまわないのでしょうか。
いま、日本で最も生活が苦しい人たちの生活水準を最大で1割程度カットしようという議論が佳境に入っています。そもそもがギリギリの水準で生活している人の生活費をカットするというのは、正直、かなり厳しいことですし、僕は反対しています。
以下にいろいろ書くのですが、言いたいことは一つだけ。
生活保護基準の引き下げはやめてほしい。そして、低所得者の生活水準をあげるための方策をとってほしい。
果たして、社会として生活保護の引き下げを許していいのかどうか、考えたいと思います。
新基準の方向性は「引き下げ」
昨日(12月14日)、生活保護基準部会が開催され、1年ほどの議論がおこなわれてきた新たな生活保護基準についての学識専門家による報告書の原案が公開されました。
これを受けて、メディアでも「生活保護基準の引き下げ」として報道が始まっています。
生活保護の生活扶助 一部の世帯で引き下げへ | NHKニュース
生活保護費引き下げへ 都内4人世帯で13%減の試算も:朝日新聞デジタル
ちなみに、上記の報告書には、具体的な新基準の金額は書かれてはいません。報道などで出てくる何%減額、や、何円削減などは、12月8日に公開された厚労省の原案によるものと思います。
ここには、二つの新たな生活扶助基準の計算方法が書かれており(「展開方法(1)」と「展開方法(2)」)、この通りに基準が見直されるとすると、各世帯で大幅な減額になる可能性があります。
例えば、都市部(1級地の1)で夫婦子1人世帯 (30代夫婦+子3~5歳)の場合、現行基準が148380円のところ、展開方法(1)だと144760円、展開方法(2)だと143340円となり、どちらの方法でも4000円~5000円の減額。
同じく都市部の母子世帯 (子2人) (40代親+中学生+小学生)の場合は、現行基準が155250円のところ、展開方法(1)だと145710円、展開方法(2)だと144240円となり、こちらはどちらも1万円以上の減額。
そして、同様に都市部の高齢単身世帯 (65歳)に関しては、現行基準で79790円のところ、展開方法(1)では73190円、展開方法(2)だと74370円とこちらも減額。
世帯構成によっては展開方法(1)の場合は現行基準を上回る、などのものもありますが、現実には高齢単身世帯が多いことなどの実際の生活保護世帯の世帯類型でみれば、総じて引き下げになります。
もちろん、ここに示された通りの新基準になるのかはまだ決まっていませんが、引き下げの方向性であることは間違いありません。
生活保護基準をなぜ引き下げるのか
生活保護基準は今回、なぜ引き下げられるのでしょうか。
すごく、シンプルな言い方をすると、低所得者の消費水準が低い、というのが理由です。
しかし、上記の生活保護基準部会でも単純な引き下げには慎重な意見が多く出ているほか、公開されている報告書案にも下記のような記述があります。
出典:社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案)現行の水準均衡方式については、一般世帯の消費水準が低下すると、それにあわせて変動する方式であり、それに伴い基準の低下が起こりうるものである。
出典:社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案)一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることから、これ以上下回ってはならないという水準の設定についても考える必要がある。
出典:社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案)また、最低限度の生活を送るために必要な水準とは何か、本質的な議論を行った上で、単に消費の実態に合わせるとの考え方によらず、理論的根拠に基づいた複雑ではない検証方法を開発することが求められる。
このような意見を反映してか、厚労省が削減幅を調整するのではないかという報道もあります。