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漂着船を多発させる北朝鮮の「漁獲戦闘」

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■水と油を混ぜて燃料にする漁民も

国家指導部が国民に漁業の重要性や、順調ぶりをアピールし続けている一方で、北朝鮮漁民の操業環境は日ごとに劣悪になっていると言われている。北朝鮮は毎年3000万ドル(約30億円)を受け取る見返りに、約1500隻の漁船が北朝鮮近海で操業する権利=漁業権を中国に売り渡してしまっている。

韓国での報道によれば、売り渡したとされる漁場は、北朝鮮の西岸から約20キロメートルに位置するぺクニョン島西部、および約10キロメートルに位置する延坪島付近、また日本海側では北方限界線(NLL)付近などと推測されている。そのため、北朝鮮の漁民は貧相な木造船で、遠方まで漁に出かけなければならなくなった。漁獲量の目標を達成するためには、「漁場がないから」では済まされない。

しかも経済制裁によって燃料が不足しているため、漁民の船舶では水と油を混ぜて使用することが多々あるそうだ。結果、故障の原因となり、漂流・漂着が多発していると言われている。

また、ここ数年、北朝鮮では遠洋漁業船が増加傾向にあると言われている。なかでも日本においてたびたび目撃されている「イカ漁船」の増加は顕著で、11年15隻、12年80隻から、13年110隻、14年400隻とハイペースで増え続けていることが確認されている。前述したように、13年頃から北朝鮮の漁船が頻繁に日本海沿岸に漂着しているとの海上保安庁の統計があるが、その背景に、北朝鮮の政策の強化があったことはまず間違いなさそうである。

韓国紙記者は「イカ漁などは、北朝鮮漁民の裏の外貨稼ぎの手段になっているという報道があります。これは一部正しいと思いますが、大局的には国策としての水産業強化があり、その流れのなかで遠洋漁業が活発化しつつ、事故も多発するようになったと見たほうが、より正しいかもしれません」と説明する。

こうした北朝鮮の漁業の問題点について、韓国産業銀行のレポートは、次のようにまとめている。

「老朽化した漁船・漁業用機器、技術の遅れ、油・漁具・冷凍倉庫設備不足で、生産能力を十分に活用できていない。しかしながら、(北朝鮮政府は)14年に続き、15年度にも水産部門における『魚の豊作』を強調し、生産量の高目標を提示した。(結果、)過度の捕獲と養殖が行われ、水産資源が損なわれる可能性が高い」

■発見されずに漂う船も多数か

なお、北朝鮮の漂流船が発見されるのは、日本海沿岸に限った話ではない。12月2日、韓国・東海地方海洋警察庁は、日本海にある鬱陵島の北方84キロメートル地点で漂流していた北朝鮮船舶を発見・送還している。船舶が発見されたのは、北方限界線から南方29キロメートルの地点。発見当時の乗員数は8人だった。調査によると、北朝鮮船舶はイカ漁業をしている最中、潮流や気象悪化の関係で北上できず、漂流するはめになったということだった。

同じ鬱陵島近辺では、昨年12月中旬にも北朝鮮船舶3隻が漂流しているのが発見されている。そのうちの1隻は、9月中旬に咸鏡道エリア(朝鮮半島北東部)から出発したが、船舶の故障で3カ月間も漂流。発見されるまでに、多くの船員が飢死していたことが後の調査で明らかになっている。

北朝鮮の指導部は、「国民に寄り添う姿勢」をアピールするため、また経済制裁を突破するための手段として水産業の強化をうたっている。しかしながら、その政策が国民の命を脅かすという本末転倒な結果を生んでいるのだ。漂流が発見された北朝鮮船舶は、全体の一部にすぎないだろう。誰にも知られることなく、日本海を漂い続ける木造船や漁民がさらに増えていく可能性は大いにありうる。

今後、日本としては北朝鮮漁船の問題にどう向き合っていくべきか。構造的な問題だけに、一過性の対策では解決することができないということだけは間違いなさそうである。

(在日韓国人ジャーナリスト コナー・カン 写真=時事通信フォト)

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