
東京都・文京区に住む生活の厳しいひとり親家庭などを対象に始まった「こども宅食」。
命をつなぐ「こども宅食」で、1000人のこどもと家族を救いたい!
食品支援をきっかけに、子ども達のための新たなセーフティネットを創り出す取り組みです。
これまでに1,400人以上から寄付が集まり、NHKで20分間の特集が組まれ、全国から議員視察が相次ぐなど、徐々に注目が高まってきています。
しかし、ネット上では「生活が厳しいなら物価の高い文京区から引っ越せば良い」いう厳しい声もあります。そんな疑問を、こども宅食を利用している田中さん(仮)に聞いてみました。
小3の息子と共に文京区に住むシングルマザー田中さん(仮名)。個人事業主として10年以上デザイン関連の仕事に従事。2017年10月から「こども宅食」の利用を開始しました。
仕事と家事に追われて平日の睡眠は4-5時間
駒崎:田中さんの1日の過ごし方を教えていただけますか?
田中:朝は7時頃から起きて、息子を送り出します。個人事業主として働いているので、日中は在宅で仕事をしつつ、合間に家事を済ませることが多いですね。
夜は息子が帰宅後に夕飯を食べ、寝るまで一緒に過ごします。その後は時期にもよりますが、22時頃から夜中の2時~3時頃まで仕事をしてから寝ることが多いです。
駒崎:朝7時から明け方3時まで!それは大変ですね……
田中:「息子の生活を支えるためにも、しっかり稼がなければ」という意識が強いです。個人事業主なので月々の収入の変動も大きいですし。
実は、少し前までは土日も同じペースで働いていました。しかし、子どもと過ごす時間をとるために、今はこれでも意図的に仕事量を抑えているんです。

物価が高い地域だと、節約にも限界が
駒崎:お部屋からは質素な生活をされている印象を受けます(※)
田中:支出を抑えるために様々な工夫をしています。しかし文京区は物価が高く、限界があるのも事実です。
例えばいまの家は築年数がすごく古いので、夏は暑くて冬は寒く大変ですが、立地の割に安い物件を運良く借りられました。それでも家賃負担は重く年収の3割強です。
あとは近所に安いスーパーがないのも悩ましいですね……

※人物写真はイメージ画像です。実際のインタビューは田中さんのご自宅にて実施しました。
今は生活には困っていないが、何かあった時が怖い
駒崎:日々の生活でお困りのことはありますか?
田中:幸いなことに、今は食べるのに困るようなことはありません。しかし収支がギリギリで貯金が出来ないんです。だから何かあったときが怖いですね。
個人事業主なので、私が病気になると収入が途絶えるんです。子どものためにも、身体は壊せません。

離婚して物価の安い地域に引っ越したが……
駒崎:そんな中で物価の高い文京区に住み続ける理由は何ですか?
田中:私たちは元々、文京区に住んでいました。離婚した後、少しでも生活コストを抑えようと、物価の安い地域に引越したことがあるんです。
しかし、転校した学校が荒れていて……。当時小1だった息子が不登校になってしまったんです。しかも学校の先生たちも余裕がないのか、まともに取り合ってくれなくて。
悩んだ末に、文京区の元の学区に戻ってきました。
幸い、いまは楽しく学校に通えています。保育園の時のお友だちと一緒になれたことや、子どもをよく知っている学校の先生が親身になってくれたことも大きいと思います。

子どもの事を思うと文京区から出られない
駒崎:そんな経緯があったんですね……。
田中:正直、子どもの事を思うと文京区から出られないですね。
前に住んでいた地域は親として心配事も多かったです。ですがこのあたりは治安が良いので安心して遊ばせられるなと思います。
また先のことはわかりませんが、ここなら中学・高校で公立校に行っても学校できちんと勉強を見てくれるのでは、という期待もあります。