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【読書感想】生涯現役論

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 多くの場合、「今がチャンスだ」というのを自覚するのは難しいもののようです。だからこそ、「チャンスを逃さない」ためには、「常に今がチャンスだと思って、失敗を恐れずに挑戦し続ける」ことが大事なんですね。

 チャンスが来たら頑張ろうと思っているうちに、そのチャンスに気づかないまま、人はどんどん年を取っていく。

 山本さんは、「なかなかチャンスをもらえない」と愚痴ばかりこぼしながら腐っていき、能力はあるはずなのに成功できなかった選手をたくさん見てきたそうです。

 山本さんは、こう仰っています。

山本:エリートとしてやってこなかったからこそ、自分の伸びしろを信じているんです。一つ自信を持って言えるのは、私が日本の野球史上、「もっともプロに入ってから伸びた選手」だということです。

 先日、二十数年ぶりにドラゴンズの先輩選手にお会いしたのですが「俺は世界の七不思議よりも、お前が不思議だ。入ってきたときのお前を見たときは、プロで勝てるなんて絶対に思わなかった」と言われました。私は常に「もっと上があるんじゃないか。これが本当に精いっぱいなのか」と思っています。投手の究極形態は、1点も取られないで全焼することだと思いますが、そんなピッチャーはいません。

 しかも実際の私はずっと下の方でやっていましたから、まだまだ上がる余地はいくらでもあると思える。だからいつまでも、上達を探求しているのだと思います。

 この「向上心」こそが、山本昌さんの最大の武器だったんでしょうね。
 「自分の可能性を信じろ」って言うのは簡単だけれど、本当に信じ続けられる人は、そんなに多くはありません。

 向上し続ければ、中学時代に補欠だった選手でも、名球会に入れる可能性があるのか……もちろん、万人に当てはまるとも思えないけれど。

 この対談でいちばん面白かったのは、山本昌さんの「星野仙一監督に関するエピソード」の数々でした。

山本:星野監督にはよく「お前はノーアウトからランナーを出す」と叱られました。ただ別の試合では「せっかくワンアウトとったのにランナーを出しやがって」と叱られ、また別の試合では「ツーアウトからランナーを出すな」と叱られた(笑)。

佐山:要するに、ランナーを出すなということですね(笑)。

山本:ええ。ただ、口すっぱく言われていたので、「寸分たりとも気を抜かない」ことが身体中に染み渡りました。前にも言いましたが、星野さんにとって私は、いつまで経ってもハナタレ坊主なんです。だから若い投手が何か失敗しても、私が代わりに叱られました。「お前がノーアウトから打たれるから、若い奴らが真似して同じように打たれるんだ」と言って。

 でも星野監督からすれば、怒る相手がいて楽だったんではないでしょうか。「とりあえずマサを叱っておけば若い奴らがビシッとする」と思っていたりして。だんだんと皆、こうした構造が理解できてきたから、私が監督に呼ばれるとニヤニヤしだす先輩もいました。「あいつ、また叱られるぞ」と。

佐山:でも、期待していない人を叱らないでしょ。

山本:そうですね。だから今でも、星野監督には何かあると真っ先に相談します。100勝のときも、150勝のときも、200勝のときも、引退するときも、最初に電話をしました。もしコーチの話をもらったとしても、最初に電話するでしょうね。

 ただ若いころは、監督が怖くて、よくベンチと戦っていました。フォアボールを出したときにベンチをちらっと見ると、監督が椅子をどーんと蹴っている。それが怖くてしょうがなかった。

佐山:それは怖い(笑)。

山本:でもいつのまにか、ベンチの方を見なくなりました。ひょっとしたら経験を重ね、自信がついたのかもしれません。打者ではなくベンチと戦っていたら、100%の力は出せませんから。

 星野監督、こんなに無茶なことを言っているのに、多くの選手から慕われてもいるんですよね。
 山本昌さんも、「もう1回やれって言われたら、正直やりたくない」と、この後、笑いながら仰ってはいるのですけど、やっぱり「恩師」なのだよなあ。

 実際に星野監督トークを聞いているかぎりでは、なんて理不尽で怖い人なんだ……って思うんですが、人間の魅力っていうのは、不思議なものです。

 この人たちを真似するのは難しいなあ、と思いつつも、少しずつでも「やる気」を出していこう、と感じる新書だと思います。

 それにしても、「もっともプロに入って伸びた選手」だと自分で言えるって、すごいよね。

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