記事
  • Dain
  • 2011年12月08日 22:50

読書は"競争"か?「つながる読書術」

 対照的なのに得るもの多し。いや、対照的だからこそ学ぶところが多いのか。

リンク先を見る ブログから飛び出して、リアルな場所で読書会を開いたり交じったり。会議室で、本屋で、飲み屋で、レンタルキッチンで、たくさんのスゴ本と、「スゴ本を読むあなた」と会う。その動機は、面白いから、ワクワクするから……漠然としてたのを、本書は一言で喝破している―――「つながる読書」なんだ。

 著者のいちいちが的を射る。本書の提案はこうだ―――個人で完結するのではなく、発信とフィードバックを重ねることで、おもしろさを循環させよ。この、「みんなでおもしろがる読書」は、まさに「スゴ本オフ」でやっているので、身近なレベルで納得できる。p.174にこうある。

本という一つの素材を使って、お互いの意見や「おもしろさを感じる部分」を交換して知的な刺激を受け、思いがけない着想を得たり、コミュニケーションをとったりして楽しむ新しい場(メディア)です

 そのとおり。自己と他者の違いを、共通する一冊というスケールで測ることができる。同じ本を読んでも、反応するところが異なる。違うから面白いし、違いから自己を拡張できる。殻や井戸に閉じこもる読書、さんざんやったけれど、「みんなで読む」ほうが広く深く早い。「ソーシャルリーディングは、大人の部活」は言いえて妙なり。

 さらに、この日垣隆氏、質量ともにハンパない。「年間の本代は600万円」、「270人の大読書会を開催」とスケールのデカい話が飛び出す。瞠目したのが、松本清張について「新潮45」に書いた手順。締め切り3ヶ月前で取り掛かったアクションと所要時間は次の通り。「文献収集は短時間で。漫然と時間をかけてたら、収拾がつかなくなる」というヒントは肝に銘じるところ。

  1. 「松本清張全集」(文藝春秋)全巻=古書検索サイト「日本の古本屋」にて(所要時間2分)
  2. 全集にない解説を読むために、文庫約40冊をネット注文(20分)
  3. 清張以外の著者による"清張論"=ネット書店にて(15分)
  4. 日本最大のジュンク堂書店(10分)
  5. 国会図書館などのデータベースから、全集に含まれなかった文献を検索して入手(自分で=40分、スタッフによる複写が3日間)
 まるでレストランの全メニュー全制覇のような勢い。これだけの注文した「料理」を平らげていく様子は、スゴいというより凄まじい。目も脳も手も足もフルに使いまくった後、一気呵成にアウトプットする。その鬼気迫る様に、プロフェッショナルとはここまでやるのかと感心する。作家を生業とするなら、これだけ厳しいのかと思うと、読書のヒントよりも、ため息の方が多くなる。

 いっぽう、引っかかるところもある。「本読み競争」や「自分を追い込む読書」といったフレーズに示される、著者のポーズだ。読書「量」を競ったり、「ノルマ」をこなす姿勢は、わたしと偉い違う。もちろん、ピンチョンなら「格闘する読書」になるし、「読んでから死ね」シリーズや、やりなおし数学は、わたしの課題だ。しかし、著者や他の読み手との「対決」姿勢といったものは無い。読書を「競って」るわけじゃないから。

 では、なぜ、本を読むのか?わたしにとって、「おもしろいから」という理由で割り切るには手広くなりすぎた。だから、まなめ王子を見習ってみよう。

 

 ところが、基準や立ち居地があっても、揺らいだり、変わるのがわたし。そのわたしにとって、より良い選択のために、読む。すでにケースケさんが言ってるとおり、「良い本で、良い人生を。」だね。

 日垣氏は、図書館派について冷ややかな目で見ているようだ。「敵とも思いませんが、勝手にやってください」というスタンス。わたしにとって、損切りを回避しつつ多読できるのは、図書館あってこそ。本書でも、「つまらない本は的確に損切りする」ことを推奨している。「お金を出したから、読まないと損」と読み通すのは、お金だけではなく、時間も無駄にするから。サンクコストの発想は激しく同意だが、図書館は保険になると強調したい。

 また、「つながる読書」の場は、図書館にもある。本好きが集うのは、書店だけではない。書店では、「本を買う人」しか見えないが、図書館では、「本を読む人」が見える。どんな人が何を読んでいるか、その「場」では何がオススメされているか、予約されている人気本(≠ベストセラー)は何か、直接確かめることができる。図書館のコミュニティを通じて、スゴ本の輪を広げてきた。

 これは、プロフェッショナルの読書と、アマチュアの読書の違いなのだろう。自分の"正しさ"と違うからといって叩く人がいる(Amazonレビューが典型)。だが、違うから面白いし、違いから自己を拡張できる。参考にしつつ、アマチュア読書を充実させていこう。

 人生は短く、読む本は多い。良い本で、良い人生を。

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    総裁選で高市氏が怒涛の追い上げ 単純な「極右ムーブメント」とくくってよいのか

    倉本圭造

    09月17日 14:15

  2. 2

    毎日使うスマホ機種代をケチる貧乏性。毎日使う重要な道具こそお金をかけるべき!

    かさこ

    09月17日 09:50

  3. 3

    岸田氏が首相になれば真っ向から中国と対立、総裁選の争点になったウイグル人権問題

    木村正人

    09月17日 10:35

  4. 4

    中村格氏が警察庁長官という人事はひどすぎませんか。安倍・菅内閣による検察、警察人事の露骨な恣意性

    猪野 亨

    09月17日 09:07

  5. 5

    堀江貴文「西野亮廣の『えんとつ町のプペル』が大成功したたった一つの理由」

    PRESIDENT Online

    09月17日 16:17

  6. 6

    次の首相は誰に? 自民党総裁選の4候補が意気込みや政策語る

    BLOGOS編集部

    09月17日 14:23

  7. 7

    岸田氏と河野氏だけの争いではなくなった自民党総裁選 予断を許さぬ激しい戦いに

    早川忠孝

    09月17日 17:04

  8. 8

    始まった自民党総裁選 次のリーダーは党内の淀んだ空気を変えられるのか

    毒蝮三太夫

    09月17日 15:56

  9. 9

    【演説全文】野田聖子氏「自民党は反省と検証が必要」 自民党総裁選・所見発表演説会

    BLOGOS編集部

    09月17日 14:06

  10. 10

    がん患者に断食やサプリメントを推奨 クリニックへの疑問から“潜入取材”した医師

    ABEMA TIMES

    09月17日 15:21

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。