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収入・資産がある人は保険料を多く負担してもらう。社会保障を誰もが安く利用できてしまうのはおかしい - 「賢人論。」第49回岸博幸氏(中編)

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テレビ番組のコメンテーターとしてもお馴染み、岸博幸氏を招いた「賢人論。」。前編「マイナンバーには反対するのに、SNSには個人情報を垂れ流し続ける。つくづく日本は変な国だなあ、と」では、持続不可能な現行の社会保障制度を改革するため、マイナンバー制度を活用していくことは不可避であると氏は語った。中編では引き続き、現在、社会保障がさらされている危機について訊く。国民が“平和ボケ”してしまっている現状を、岸氏は嘆いた。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

民間企業が、介護・保育に活発に参入できるようにするべき

みんなの介護 前編「マイナンバーには反対するのに、SNSには個人情報を垂れ流し続ける。つくづく日本は変な国だなあ、と」でも伺ってきましたが、超高齢社会と言われる今、社会保障の見直しは喫緊の課題と言えそうです。

 社会保障全体で、早く抜本的な改革をしていかないとまずいです。それは何も、負担を増やす・給付を減らすなどの話だけではありません。

保育の話に戻れば、まだ保育園・幼稚園の数が足りず、“待機児童”が深刻な社会問題になっていますよね。その原因には、残念ながら、社会福祉法人の利権がひとつとしてあると思います。

「社会福祉法人の全部が全部悪い」という気はありません。当然、真面目に頑張っているところも多く知っています。けれども、一部には特権を利用して蓄財を企てているところもありますよね。また、民間の企業が保育に参入するのを拒んでいるところもあるので、自治体や社会福祉法人が運営している施設しかない地域も結構あるんですよ。

みんなの介護 なぜ自治体は、民間企業が保育に参入するのを嫌うのですか?

 やはり民間企業だと効率や利益を優先して十分な保育ができないのではないか、と恐れている例が多いようですけれども。そういう考え方は、時代遅れですよね。それに、「では社会福祉法人ならちゃんとやれているのか?」というところも疑問ですし。

あるいは、地元の社会福祉法人の長は、その地域に対して影響力を持っている人物である場合が多いです。そういう人物の力が作用して民間の参入が阻止される、という地域も中にはあるかもしれません。

どんな理由があるにしても、待機児童・待機高齢者が生まれているのは事実なんですから、改めていくべきだと思います。保育に関しても、もちろん介護に関しても、民間の企業がもっと参入できるようにしていくんです。残念ながら、厚労省の支援は自治体や社会福祉法人が運営する場合には手厚いけれども、民間企業には冷たい傾向があります。そういう体質も含めて見直していかないと。

みんなの介護 むしろ民間の企業が参入した方が、競争が生まれサービスが向上する、という考え方もできるかもしれませんよね。

 その可能性はあるし、公営の施設よりも多彩なバリエーションのサービスが提供されるはずだと思うんですけどね。社会保障系のサービスはパブリックが提供しないといけないんだ、という前時代的な価値観は早く変えていかないといけないと思います。

やるべきことはたくさんあるのに、厚労省がそれをちゃんとやらないから、大変な状態になっているのかな、と思いますね。百歩譲って公立の保育園だけでやるのだとしても、その規模を拡大し保育士の数も増やしていかなければいけません。

いずれにしても、月4~5万円という保育料ではコスト割れしてしまっているんです。その分を税金で埋め続ける、ということが、果たして“持続性がある”と言えるのか?そういう意味では年金と同じで、収入・資産がある人はより多く負担してもらい、本当に貧しい人には手厚くする、ということをしていかないといけませんよね。みんなが何でもかんでも安い値段で使えてしまう、というのはおかしいと思います。


他国と比べても、日本の社会保障利用料は安すぎる

みんなの介護 介護業界も、“混合介護”の議論が進みつつあります。これは、追加料金を支払えば保険外のサービスを受けられるようにしよう、という制度改革です。

 混合介護に対してもみんな一生懸命抵抗していますが、どうして?と思ってしまいます。介護費用を払う能力のある人は、余分にサービスを受けられる代わりに多く費用を負担してもらう。それでいいじゃないですか。

例えば訪問介護だと、介護保険外のサービスを提供できないので、「要介護者分の夜ご飯はつくれるけど、その家族の分まではつくってあげられない」というようなことも起きているそうですね。これはやはりおかしいし、不便なことだと思いますよ。

混合介護をどんどん導入していくとともに、介護保険の適用範囲にあたるサービスは目一杯安くする。そうすれば、収入のある人にとっても、ない人にとってもメリットの多い仕組みになっていきますよ。かつて、混合医療を導入するときでさえ凄まじい抵抗がありましたが、それと同じことが介護に起きています。

みんなの介護 福祉の手厚さに比べ、日本の社会保障利用料が安すぎるということでしょうか。

 そうですね。北欧のような高福祉の国は、その分税や保険料も多く取っているんです。反対に、アメリカなど高福祉国家でないところは、利用料がもっと高い。日本のように、それなりに質のいい福祉をこれだけ安く提供するというのは、かつてのように人口が右肩上がりでなくなった今ではもう不可能でしょう。

自分が負担するのは嫌だけれど、政府はもっとサービスを手厚くしろ、というのはただの“わがまま”だと私は思います。安くしすぎたせいで、フリーライダーなどの問題も出てくるんです。例えば、高齢者医療をかつて無料化したときは「高齢者が病院をサロン代わりに使っていた、という問題も起きていたんです。今優遇されている後期高齢者(※75歳以上)に関しても、資産・収入に応じて差をつけていくことになるかもしれませんね。

みんなの介護 2019年10月、消費税は10%へ引き上げられる予定ですが…。

 こんな放漫な社会保障制度が続く限りは、10%どころではなく、消費税率25%~30%くらいでないと持続不可能です。それを国民が飲むならいいんですが…。基本的に国民は“わがまま”なものですし、そのわがままを許してしまった政治の責任も大きいですね。

選挙のためにバラマキをして、国民にいい顔ばかりしてきたツケです。かなり厳しい状況なんだということを、正直に、厳しい姿勢で説明していくという役割が政治家には求められます。

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