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なぜ渋谷は“多様性”を重視するのか--副区長が語る渋谷区の新しい未来

渋谷区は将来

渋谷区

昨年に引き続き、今年も「ソーシャル・イノベーション・フォーラム」(以下、フォーラム、※1)の取材をしてきましたので、まとめてみました。

本記事で紹介するのは「“シェア”による持続可能な街づくり 渋谷区の長期基本計画への取組み」というタイトルがついた分科会です。テーマタイトルは難しそうですが、話自体は自治体経営に詳しくない人間でもわかりやすかったです。告知では「シェアリング・エコノミー」なテーマがメインでしたが、話題の中心は「渋谷区のまちづくり活動は何をしているか」というものでした。

おさらいですが、まちづくりで最も重要な指標の一つである「人口」は、2016年は「出生数:約98万人」「死亡数:約131万」で、出生数と死亡数の差である自然増減数は約33万人で過去最高(2016年 人口動態統計)。10年連続で自然増減数が増えています。出生数は始めて100万人を下回りました。そんな時代だからこそ、今の延長線上ではないイノベーティブなまちづくりが求められています。

東京の都市部だからといって、まちづくり活動が必要ないわけではありません。人口減少時代に街のイノベーションはどうあるべきか。主に渋谷区副区長の澤田氏の話を中心にまとめたいと思います。「まちづくり」や「地域活性化」に興味がある人は必見です。

※1:「ソーシャル・イノベーション」よりよい社会のために、新しい仕組みを生み出し変化を引き起こすそのアイデアと実践

セッション登壇者(敬称略、順不同)

澤田氏(渋谷区 副区長)
佐別当氏(シェアリングエコノミー協会 事務局長)

澤田 伸(さわだ・しん)
渋谷区 副区長

佐別当 隆志(さべっとう・たかし)
一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長

村瀬 正尊(むらせ・まさたか)
株式会社マチヅクリ・ラボラトリー 代表取締役

金山 淳吾(かなやま・じゅんご)
一般財団法人渋谷区観光協会 代表理事



渋谷区の取り組み

渋谷区の区長・副区長は日本でも珍しく両方が民間企業出身だそうです。未来を予測し積極的に施策を打っていく姿勢は、広告会社出身の区長と副区長の強みだとか。またパネリストの金山さんも大手広告会社出身だそうで。

自治体運営の重役に広告会社出身の人がいると、こんなにも区政のスピード感が違うのか。そんな中で象徴的だと感じたプロジェクトを紹介しますと、渋谷区は来年4月、産学官民連携組織として「一般社団法人 渋谷未来デザイン」を設立するとのこと。

澤田氏が言うには、行政のみで地域活性化活動に取り組むには、計画・予算決め等に時間がかかってしまうため一般企業のように「今日決めたことを明日実行する」ができないそうです。社会は毎日動いているのに、決定から実行まで数年かかっていては、計画実施するころにはその企画は時代遅れになってしまう懸念がありますね。そうならないための外堀を埋める組織で、なおかつ企業・大学・区民など多様な人を巻き込んで活動をしてくそうです。多様性を重視する渋谷区ならではの取り組みです。

この「スピード感」はどこの自治体でも学びとなるのではないでしょうか。また、地域活性化は方法論の話ばかりが先行しますが、意思決定のプロセスを変えることで住民サービスの質の向上等が見込める可能性もどうやら高そうです。

私の専門でもあるCSR(企業の社会的責任)においても、企業の地域貢献やコミュニティ参画は国際的にも超重要事項の一つとされています。自治体サイドが門戸を開いてくれるなら、民間企業はビジネスを含めて地域との関わりを深くすることもできます。予算がない自治体でも「スピード感」(意思決定の高速化)と「産学官民連携」(コミュニティ構築)あたりは非常に参考になる動きかと思います。

パブリック・マインドを持つ民間、プライベート・マインドを持つ公共。パブリックとプライベートの「共通言語」が必要。そのためには自治体が明確なビジョンを持たなければならない。そんな話を聞き、ここがまさにソーシャル・イノベーションの根底に必要なのかもと感じました。

参考資料:渋谷区基本構想ハンドブック「ちがいをちからに変える街」(電子ブック)

渋谷区のウェブサイト

渋谷区のウェブサイト

この画像は渋谷区役所のウェブサイトです。皆さんの住む自治体のウェブサイトと比べてどうでしょうか。

澤田氏が言うように渋谷区のウェブサイトは、“行政視点のカテゴリわけ”ではなく“検索ファーストな設計”になっています。トップページには「渋谷区基本構想」という文字通り“渋谷の未来をどう作っていくか”の情報が特設サイトという形でまとめられています。企業で言えば「ミッション・ビジョン」にあたる話で、他の自治体でもあるとおっしゃていましたが、トップページのファーストビューでわかりやすく見れるのは日本で渋谷区だけではないでしょうか。

こういう流れで紹介すると「渋谷区が金があるからできるわけでウチの街では無理だ」となります。同じものを作るには難しいかもしれませんが、ユーザビリティを追求したウェブサイトにブラッシュアップすることはできると思います。住民と自治体の接点の多くがウェブサイトな時代ですので、作り込む価値はあると感じました。自治体のウェブサイトは、トップの「住民への情報開示を本気でしようと思っているか」がよくあらわれるものなのでしょう。

まずは多様な価値観を受け入れる

最後に質疑応答の時、地方都市の議員の方が「過疎化する地域を変えるにはどうしたらよいか」という質問もありました。状況がわからないので明確な回答は難しいとの前置きのあと、澤田氏は「人を変えるしかない」という趣旨の話をされました。地域活性の場では「よそもの・ばかもの・わかもの」(地域外出身の人、既成概念にこだわらない人、若い人)が変革のきっかけになると言われるそうで、渋谷も「よそもの・ばかもの・わかもの」の多様な価値観によって、よりよい街になるべく進んでいるそうです。

人の意識や性格というものは基本的に変えることができません。行政を変えたいのであれば、反発があろうがなかろうが“中の人”が変われば変わるというでしょうか。それができないからごく一部をのぞき地方は衰退する一方なのでしょうが、渋谷区でさえより良い街のために多様な価値観を取り込み変化し続けているので、まずは受け入れることが重要なのです。これを専門的には「インクルージョン」といいます。「ダイバーシティ&インクルージョン」は街でも企業でもとても重要なイノベーションのきっかけなのですね。

今回のフォーラムでは他にも様々な分科会がありました。以下は当日の内容をまとめた公式コラムですので、「ソーシャルイノベーション」に興味がある方は、こちらの記事もチェックしてみてください!

日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017 フラッシュレポート<1日目>
日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017 フラッシュレポート<2日目>
日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017 フラッシュレポート<3日目>

[ PR企画 / 日本財団 ]

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