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イラクにおけるISの完全制圧(イラク首相の宣言)

イラク軍が先にイラク全土からのISの放逐と軍事作戦の終焉を宣言したことは、お伝えしたかと思いますが、アバーディ首相は9日、軍事式典で、イラク軍はイラクを完全に開放し、ISの勢力は残っていないと宣言しました。

アバーディ首相はさらに、イラクはポストISの段階に入ったが、我々は警戒を緩めることなく、ISの再来を許さないとし、今後は国家再建となるが、そのためにも、軍事力は国家が独占する必要があると語った由。
これを伝えるal qods al arabi net は、イラクの今後は必ずしも平たんではなく、ISのテロ活動に備える必要があるほか、クルド問題も未解決で、更に軍事力を国家が独占する場合、シーア派民兵がおいそれとこれに応じるかは不明であるとしています。

http://www.alquds.co.uk/?p=841696
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/9/العراق-يعلن-تحرير-كامل-أراضيه-من-تنظيم-الدولة

取りあえずは目出度し、目出度しということで、米政府も祝辞を送った由。
しかし、上記記事の言う通り、今後のイラクの情勢は予断を許さないものがありそうです。
その意味では、未だイラク内戦の総括をするには時期尚早でしょうが、取りあえずの感慨だけを書いておけば・・・

・イラク情勢が泥沼に陥ったころから、米国がサッダム・フセインを潰したのが、イラク内戦をもたらしたもので、いくら過酷な独裁者であっても彼は残しておくべきであった、という議論をするものがずいぶん多かったように思います・
確かにサッダムフセインという重しが取れたことで、イラクという人口国家が抱える本質的な矛盾が噴出したことは事実で、これはリビアやイエメンにも当てはまることかもしれません。
イラクにとって、サッダムフセインの方が良かったかどうかなどという問題は、外部の人間があれこれ議論する問題ではないと思いますが、あの地域の問題としては、イライラ戦争(犠牲者双方で10万人といわれる)、数度となく起きたクルド、シーア派に対する残虐な弾圧、湾岸戦争等を考えると到底サッダムの方が良かったなどということは言えないだろうという気がします。

・実はこういう言い方は、誤解を呼ぶいい方かと思いますが、ブッシュがイラク戦争を始めたときに、米国としてサッダムのあとは民主主義イラクということで、国民の自由な選挙で選ばれた政府に任せる、という以上のポストサッダムの構想がなかったことに驚いた記憶があります。
イラクのように多数派のシーア派が、歴代の政府(ということは王政以来)を作る少数派のスンイ派に抑えられ、クルドという少数民族もいるところで、欧米流の民主主義を実践するということに驚いた次第です。
欧米流の民主主義から言ったら問題があるかどうか知りませんが、常識的な感覚からすれば、スンニ派の旧軍(要するにバース党の私兵ではない正規軍という意味)軍人で、あまりシーア派等の弾圧にかかわらなかった男を探しておいて、彼を暫定政権として、サッダムの後釜に据えるのではないかと思っていました。
そんな都合の良い男がいるかいないか、日本人には良く分かりませんでしたが、何しろイラク人も含めアラブ系の人間も多く、またアラブ諸国と各種の人脈を有する米国のことだから、しかるべき人物を抱えたうえでの戦争かと思っていました。

・ところが、実際には上に書いた通りのやり方で、おまけに旧軍や治安機関等を一斉に解散してしまったので、これらの機関で働いていたもの(その多くがスンニ派)はすべて職を失うこととなり)、彼らの多くがアルカイダに身を寄せることになりました。
また驚いたのは、非バース党化ということで、旧バース党員は、それぞれの役割やしたことを検査されるのではなく、すべてパージされたことです。
サッダム時代には、いくら良心的なものでもバース党員でない限り、まともな生活もできない仕組みになっていたので、有能なスンニ派の男は殆どがバース党に入っていたかと思います。

・これらポストサッダムのイラクで、不満と不安を募らせる、スンニ派の男たちを糾合したのが、ザルカーウィというヨルダン出身の男で、「イラクのアルカイダ」という極めて過激で残酷な組織を作り、これが西部イラクから大きな勢力を占めます。

・これに拍車をかけたのが、イラク戦争終了で、米軍の大半が撤収したことで、アルカイダはいわば治安の空白部分を利用していきます。
これに対してパトレウス司令官だったと思いますが、米軍の大量再派遣に加え、イラク西部のスンニ派部族に武器と資金を与え、彼らを協力者として、アルカイダの掃討を進め、一時はアルカイダは相当程度抑え込まれ、成功もまじかと思われていました。

・ところがそこに出てきたのがオバマで、彼は米軍をほぼ撤退させるとともに、イラク政府に武器供与をして、イラク軍をして、アルカイダに対抗させようとしました。
その時でてきたのが、例のマリキー首相で、彼は政府のみならず、イラク軍までシーア派の自己の手のもので抱える情実人事をするとともに、スンニ派部族に対する支援を打ち切りました。
このため、アルカイダは再度息を吹き返し(というより、ブッシュの最後の時期に、イラクではほぼ壊滅していたのが、シリアに逃げ込んで、シリア内戦を利用してイスラム国家として再興した)、イラクの多くの地域を占拠し始めるが、それと反比例してイラク軍は、無能でマリキーに忠誠を誓うだけの将軍たちの下で、武器だけは立派だが現実の戦力の無い軍隊になっていきます。
その行きついた先がモースル喪失という事態と占領地におけるISのやりたい放題でした。

・マリキーを酷評すると、読者からいろいろとご批判を受けますが(選挙で正当に選ばれた人物を批判するのは、民主主義の原則に反するとして)、何と言ってもモースルの失陥は彼の責任だろうと思っています。
彼は余りにシーアは優勢のイラクに拘り過ぎ(彼はその意味ではシーア派の中でも最もイランに近い人物で、現在ではある意味でイランのエージェントとも言えるのではないか)、多宗派、民族の寄り合い世態のイラクを滅茶滅茶にして、ISを「招きこんだ」人物といえるのではないかと思っています。
まあ、その意味では彼は、積年のシーア派の怨念を代弁する人物といえるのかもしれません

とここまで書いてみて、長くなりすぎたことに気が付いたので、続きはまた気が向いたら書きます。
こんな調子ですから、イラク内戦(と呼んでもおかしくはないでしょう)の総括などは未だ未だ先の話でしょうね。

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