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【中証視点】人民元相場下落は一時的、中長期は上昇基調変わらず

上海外国為替市場で人民元の対米ドルレートは6営業日連続で、値幅制限いっぱいまで売られた。業界関係者は、人民元の下落は短期的な現象で、長期的にみれば上昇基調は変わらないと指摘しているが、今後の値動きは上昇一辺倒から上下双方向化するとみている。人民元の対ドルでの変動制限幅の拡大を速めるべきだと提言する専門家の声も聞かれた。

6日連続ストップ安

中国外貨取引センターが7日発表した銀行間外国為替市場の人民元基準値は対米ドルで1ドル=6.3342元。同市場の人民元の変動幅は基準値の上下0.5%に制限されている。7日は一時、この値幅制限の下限いっぱいまで売られ、6営業日連続のストップ安となった。

人民元の対米ドル基準値は今年に入って上昇基調を保ち、1月4日の1ドル=6.6215元から11月4日の1ドル=6.3165元に上がった。 11月は小幅な下落を続け、11月29日までに1ドル=6.3587元に下がったが、12月は1ドル=6.3342元に回復した。

対外経済貿易大学金融学院の丁志杰教授は、人民元の連日のストップ安は、基準値が低く抑えられていることと関係すると指摘する。銀行が安い価格で中国人民銀行(中央銀行)から米ドルを購入しようと考えている可能性があり、ストップ安は人民元が下がっているというよりも、ドルの買い圧力が強まっていることが主因という。

興業銀行の魯政委チーフエコノミストも、「人民元の対米ドルでのストップ安は、米ドルの買い需要が非常に高まっていることの表れだ」と分析。その直接的な原因は米ドルの急激な上昇にあると指摘した。

足元では欧州のソブリン債危機が拡大している。この影響を受けて、欧米の金融機関はレバレッジをかけることができない。欧州連合(EU)は、銀行に対し2012年6月30日までに自己資本比率を9%とするよう求めることでおおむね一致しており、欧州の銀行は世界の資金を回収しなければならず、これが国際資金の動揺を加速させている。米国経済は回復への兆しが若干強まったものの、高失業率、不動産市場の低迷、消費者や企業の信頼喪失などの問題がなお改善されていない。だが米ドルは国際マネーの唯一のリスク回避先となって、資金が高リスクな新興市場から撤退。リスク資産に含まれる新興市場通貨の急激な下落をもたらした。

魯チーフエコノミストは、「人民元資産の売却を選択することは自然な流れだ。ゴールドマン・サックスが、価格が最適ではない時期に中国系銀行の保有株売却を選択したことは、まさにこの現象を反映したものだ」と述べた。

さらに、中国経済の減速に加え、世界経済の減速を背景に、海外投資家が中国の輸出見通しを悲観している。中国の投資活動の伸びもマクロ政策の下で低下しており、今後は投資の成長ペースがはっきりと鈍化することが予想される。これらを基に、金融市場では人民元の速い上昇見通しに変化が起きている。

また、国内外の人民元レートの差が拡大していることによる投機需要も為替市場の変動を招いた要因だ。9月末以降、香港のノンデリバラブル・フォワード(NDF)市場では真っ先に人民元に先安観が現れ、機関投資家が大量に人民元を売却した。これを受けて香港市場の米ドル指数は中国本土を数百ポイント上回り、最大で1000ポイントの開きが出た。多くの投資家が本土で米ドルを購入し、香港で米ドルを売却し、本土スポット市場での人民元の対米ドルレートの下落を招いた。

人民元の短期的下落見通し強まる

市場関係者の間で、人民元の短期的な下落見通しが強まっている。欧州債務危機の見通しが楽観視できず、また中国経済が減速していることがこの要因だ。

アジア開発銀行はこのほど、2012年の東アジア新興国の経済成長率見通しをこれまでの7.5%から7.2%に引き下げた。中国の成長率は同 9.1%から8.8%に、香港は同4.7%から4.0%にそれぞれ下方修正した。欧州債務問題と米経済の回復の遅れをその理由として説明している。来年の中国経済の減速はほぼ確実視され、これが人民元の対米ドルレートの上昇を阻んでいる。

アナリストによると、人民元が大幅な上昇を続け、合理的な均衡水準に近付いていることが、人民元切り上げの日足チャート 予想を後退させ、さらには短期的な下落予想をもたらした可能性がある。人民元の対米ドルレートは、当局が人民元の為替制度改革を再開すると発表した2010年6月19日から今年11月21日までに約7%上昇した。これが今年10月以降の人民元先安観測を生んだ。

人民元の短期的下落観測は、商業銀行が外貨資産を買い増していることからもみてとれる。中国人民銀行の発表によると、10月末の人民銀の外国為替残高は23兆2960億元と、前月末から893億4000万元減少し、2003年12月以降、約8年ぶりに減少した。アナリストによると、これは10月の人民銀の商業銀行との外貨取引が売り越しとなったことを示している。人民元の下落見通しが強まる中で、商業銀行が外貨の購入に積極的になっていることが分かる。10月は銀行の顧客資産運用における外貨取引収支がなお黒字となっており、商業銀行が同月に予想以上に多くの外貨資産を買い増したことが分かる。

上下双方向への変動が顕著に

短期的な下落見通しはあるが、専門家の間では、「人民元の中長期的な上昇傾向を変えることは難しい」という見方が多い。

中国社会科学院金融研究所の王国剛所長は、中国経済は安定した比較的速い成長を維持するとの見方から、人民元の上昇基調は変わらないと指摘。対外経済貿易大学金融学院の趙慶明教授も、「今の内外経済情勢や金融市場環境をみると、人民元の下落観測は一時的で、短期的なものであり、将来の上昇の大勢には変化はない」と示した。ただ一方で、人民元は2005年7月21日の切り上げ以降の対米ドル累計上昇幅が30%を超え、均衡レベルに近づいており、今後の値動きはこれまでの上昇一辺倒から、上下双方への変動に変わるとの見方を示した。

中国社会科学院学部委員の余永定氏によると、投機資金の中国への流入規模は減り、人民元の上昇予想が後退し、これに伴って人民元の切り上げ圧力が弱まっているものの、中国が比較的大きな貿易黒字を保ち、外国為替市場の需給関係に基づく為替形成メカニズムを構築しないでいれば、世界の人民元切り上げの日足チャート への要求が消えることはない。

国家行政学院決策コンサルティング部の陳炳才副主任によると、人民元の上昇予想が真に逆転するかしないかは、商業銀行の外貨建て預金と外貨建て貸出の変化を今後観察する必要がある。副主任は「外貨建て貸出の増加ピッチが減速を続けて初めて、人民元の上昇予想に変化が起きたと判断できる」とした。また「現時点では世界の資金は比較的充足しており、中国はなお世界の資金が真っ先に向かう場所だ」と示した。

興業銀行の魯政委チーフエコノミストは、国際資本の国外流出による外貨備蓄の速すぎる消耗と、外国為替残高の大幅な減少継続を避けるために、現在は人民元の対米ドルレートの変動許容幅を拡大すべきだ」と提言した。

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