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「ビットコイン」の終わりから「ブロックチェーン」の時代へ - 中島真志

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変質したビットコイン

 ビットコインは、もともとは既存の金融機関に頼らない、中央の主体にコントロールされない自由な取引の仕組みを目指して生まれたものです。ここに参加する人がマイニングで取引承認の計算をし、そのリワードが広く薄く与えられる。そんな「ユートピア」(理想郷)的な世界を想定していたわけですね。

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中島真志・麗澤大学教授

 ところが、ビットコインに内在する仕組みそのものが投機性をもたらしてしまい、ビットコインを変質させてしまいました。詳細は本に譲るとして、これまで、ごく一部の人が大量のビットコインを所有し、通貨として使っているのはごく一部のみです。しかも中国人が世界のビットコインの9割以上を買いあさり、中国のマイナーが世界のマイニングの7割を占めています。

 つまりビットコインは、これまで「中国の、中国による、中国のための仮想通貨」となっていた訳であり、その実態は「交換手段」ではなく「投資用資産」となっているのです。

 では「投資用資産」としてもすぐれているのかというと、必ずしもそうとは言えません。本で詳しく分析しましたが、ビットコインはプログラム上、発行上限と発行期限が決まっており、約4年ごとにリワードが半減していく仕組みとなっています。このため、マイニングの収益性が劇的に低下していく可能性があります。

 しかも、投資商品としてのビットコインには、それが適正な価値なのかどうかを計る指標がまったくない。1BTC=1万ドルが果たして高いのか安いのか適正なのか、誰もわからずに、値上がり期待から投資が行われている状況になっています。しかも、ここに来て、中心になってビットコインを買いあさっているのは日本人なのです。

 さらに、ビットコインの分裂の問題もあります。2017年8月にはビットコイン・キャッシュが誕生し、10月にはビットコイン・ゴールドが、11月にはビットコイン・ダイヤモンドが分裂して、これまでにビットコインは既に4つに分裂しています。今後もさらに分裂が続いていくとみられていますが、中央管理者がいないため、誰もこの混乱を止められません。

 以上からもわかるように、そもそも「交換手段」として始まったビットコインは、「投資用資産」に変質してしまっており、その先行きについては、混乱の要素や注意すべき点が多い、ということなのです。こうした意味を込めて、ビットコインは「終わった」と言っています。

ウルグアイの試み

 何度も言いますが、ビットコインは「終わった」。でも、その基幹技術であるブロックチェーンは、先のバーナンキ氏の言葉にもあるように評価が高く、「これからが本番」です。

 金融分野では、特に国際送金や証券決済の分野で大きく期待されており、日本のメガバンクはもちろん、世界の金融機関が競って開発や実験を進めています。その状況は本書でも詳しく説明したところです。

 それ以上に注目すべきは、とうとう中央銀行がこの分野に乗り出してきた、ということです。中央銀行がブロックチェーン技術を使って、「デジタル通貨」を発行しようと動いているのです。

 その最もホットなニュースが、11月13日に報道された、南米のウルグアイが法定デジタル通貨「eペソ」の試験運用を開始、というものです。これには驚きました。先進的な研究を進めているイギリスやカナダ、シンガポール、スウェーデンの事例は本書で紹介しましたが、それを追い越したウルグアイの実用化に向けた動きは、本の中で描いた世界がまさに実現しつつあることを実感させるものでした。

 2016年にデジタル通貨「eクローナ」の発行計画を発表し、「世界初のデジタル通貨発行国を目指す」としているスウェーデン中央銀行を、先日訪問してきました。そこで驚いたのは、彼らが「現金がなくなる」ことを本気で心配していることでした。

 スウェーデンは、キャッシュレスが進んでいる国です。日常の支払いは、市場での買い物に至るまで、すべてデビットカードかキャッシュカードで済ませるという社会になっており、人々は財布すら持っていません。実際、GDP(国内総生産)における現金の比率は、わずか1.5%。日本の約20%に比べると、いかに現金が出回っていないかがわかります。

 こうなると、市中の銀行も現金を扱いません。銀行の支店に行ってみたところ、現金を扱うカウンターやテラー(窓口係)の姿はありません。あるのは住宅ローンや資産運用の相談を行うためのソファーや会議室だけで、支店そのものがサロンのようになっていました。

 ここまでキャッシュレスが進むと、庶民も現金を使わないし、銀行も扱わない。中央銀行による法定通貨の発行が大幅に減少して、通貨の発行による利益(通貨発行益)も減る。スウェーデン中央銀行はそれを懸念して、「eクローナ」の発行を計画しているわけです。

「いつやるか」

 一方、日本ではどうか。実は1990年頃から、日銀内部で「電子現金プロジェクト」という基礎的な研究が行われたことがあり、私も研究員として加わっていました。中央銀行員のDNAの中には、「電子的な貨幣を発行したい」という願望が根強くあるのです。

 歴史的にみると、通貨は、その時々の最新技術を使って発行されてきました。その意味では、ブロックチェーンという技術が出てきた中で、それを使って電子的な通貨を発行しようとするのは「歴史の必然」であるとも言えます。

 その意味で、スウェーデン中央銀行の人が言った言葉が、今でも強く印象に残っています。

「デジタル通貨の発行は、やるかやらないかというwhether(どちらか)の問題ではなく、いつやるのかというwhen(時期)の問題なのだ」――。

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