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「日本相撲の基本は武士道精神」 ―相撲道を教えるのは全て親方次第― - 屋山太郎

 元横綱日馬富士関をめぐる一連の事件についてどうしても言っておきたいことがある。初場所の前売りは完売したそうだが、日本の相撲道は実は衰退しつつあるのではないか。

 相撲道を教えるのは親方である。寝食を共にして弟子に相撲を含めた全人格を学ばせる。相撲の技から精神、立ち居振る舞い、礼儀作法も含まれる。白鵬関は11日目に勝負がついているのに土俵下で手を挙げて行司の軍配に異議を称え、土俵上で相手が勝ち名乗りを受けても負けた態度を示さなかった。

千秋楽には優勝杯を受け取った後、マイクを取って「日馬富士と貴ノ岩を再び土俵に上げましょう」と叫び、賛成を求めて自ら万歳三唱を強要した。この傍若無人な振る舞いを見て、白鵬関は40回も優勝したのに、日本の相撲から何も学んでいなかったことを知った。白鵬関は双葉山の69連勝を目指しているが、双葉山は相手が立つと、必ず自分も受けて立つ、横綱の神髄を示した。

 これに対して白鵬関は張り手や肘で相手の顔面を突くカチあげなど、横綱なら決して使わない手も使う。勝てばよいというのがモンゴル相撲なのだろうか。日本人が土俵で見たいのは力士の品格なのである。白鵬関にまず潔さを学ばせよ。

 力士は引退して部屋を持つ。親方は弟子の全人格を育てる。ところがモンゴル人は横に繋がるグループを形成し、若い力士を「かわいがる」という。日馬富士関には貴ノ岩関を指導する何の権限もないはずだ。そこに上下の関係や貸し借りができると八百長に発展する。貴乃花親方は情実一切なしのガチンコ勝負で横綱を張ったことで知られる。その弟子である貴ノ岩関が他のモンゴル勢との付き合いを避けていたことも知られている。

 外国人が相撲界に入ることについて異論はないが、まず教えるべきは相撲の基本になる武士道精神だろう。剣道でも柔道でも勝負の後の美しい所作を教えるべきだ。剣道の試合で勝った時、ガッツポーズをしたとすると、直ちに勝利を剥奪される。勝って驕るのは下司というもので、勝者の資格がない。負けた相手を思いやることを惻隠の情と言うが、白鵬関は勝って「ざまあ見ろ」という表情をする。高村正彦氏は白鵬関の所作について「則(のり)を超えている」と評した。

 本来なら部屋の親方が、弟子達に叩き込むべきは相撲道であるが、モンゴル人を抱える親方は力士のお守り役としか見えない。白鵬関などという下策な力士を育てたのは誰か。いつまでこの無作法を許しておくのか。相撲協会や横綱審議会は現在のモンゴル風相撲が日本の伝統を引き継いでいると思っているのか。

 白鵬関の勝利至上主義が日本の相撲文化を歪めている。横綱は勝てばいいのではない。美しい勝ち方をしなければいけないのである。白鵬関の土俵における所作から日本人が学ぶものは全く見当たらない。

 相撲界は危機を迎えていると認識すべきだ。

(平成29年12月6日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう) 1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。 著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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