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医療費を垂れ流すだけの延命治療を見直し、子供や若者、治る患者のためにもっと予算を回すべき - 「賢人論。」第48回富家孝氏(前編)

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“人間、思ったように死ぬことはできない”――そう語るのは、医師兼ジャーナリストとして長年、医療の光と影を見つめてきた富家孝氏。「不要なクスリ 無用な手術 医療費の8割は無駄である」など、多くの著書で医療現場の実際を明かしてきた。そんな氏を招いた「賢人論。」前編では、“延命治療の是非”をテーマに話を伺った。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

「事前申告制度」で、リビング・ウィルを遺すことを義務化すべき

みんなの介護 富家さんは医師の肩書を持ちながら、一方ではジャーナリストとして医療現場の問題を指摘するご著書を多数残されています。まずは率直に、“超高齢”と言われる日本社会の医療についてご意見をお聞かせください。

富家 日本の終末医療は、ずっと「延命」中心でやってきましたよね。まずはそこから見直すべきだと思いますよ。延命治療のために使われているお金は膨大な額ですから、医療費はかさむ一方です。

現状として、医師は終末期医療において、「延命する」以外の選択が許されていません。このままでは、医療費を垂れ流し続けるだけになり、一般の患者さんの2~3倍くらいの額を延命治療につぎ込むことになってしまいます。国民皆保険、高額医療制度など、日本の保険制度は素晴らしいのですが、このままでは「ない袖を振れ」という話になってしまいますよ。

みんなの介護 確かに、日本の医療資源は余裕があるとは言い難い状態ですね。

富家 身も蓋もないようですが、高齢社会に関わる議論の肝は「お金」の問題に尽きると思います。高齢者が増え、医療費・介護費に余裕がなくなってしまったとなれば、延命治療の優先度は、どうしても低くせざるを得ないでしょう。

まさか今どき「楢山節考」の世界みたいに、お母さんを背中に担いで“姥捨て”にいくわけにもいかないですし…。治る見込みはないけれど延命だけはしている、というケースの患者さんには、どこかで見切りをつける、ということも必要になってくると思います。

みんなの介護 ともすると冷たい意見にも捉えられそうですが、日本の高齢化がそれほどまで切羽詰まってきている、というのもまた現実です。

富家 延命治療に医療費を回したせいで、子どもや若者、介護を必要としている高齢者や治る見込みのある患者さんたちに予算が回らなくなってしまっては本末転倒です。社会や家族、そして何より本人のためにも、無理に延命をせず安らかな最期を選ぶ、という選択はひとつだと思いますね。

遅かれ早かれ導入されていくとは思いますが、「事前申告制度」はつくるべきですよ。つまり、無理な延命を本人が望まないのだとしたら、その意志をしっかりと書面で表明しておくんです。


延命が長引くのは、家族にも本人にもつらいこと

みんなの介護 「望む最期を書き残しておきましょう」ということを、制度として定めるのですか?

富家 2025年以後、団塊の世代が後期高齢者になったときまでに事前申告制度を整備し、例えば、75歳を迎えた人には申告を義務づける、という風に決めることで、延命を極力減らしていく。現段階では「できるだけ延命は続けなさい」という法律になっていますが、そこを見直していくんです。意識のはっきりした状態で患者さんが意志を示し、家族もそれに同意するのなら、問題のないことだと思います。

みんなの介護 義務化、という点では賛否が分かれそうな意見ですが、いずれにせよ、自分の最期についてきちんと考えておくということは大切ですね。

富家 歳をとり、意識障害も重度になり、いよいよ最期…というとき、延命治療として医師が施す処置はいろいろあります。人工呼吸や酸素吸入、中心静脈カテーテルなどは一般的ですが、中には、おしっこが出ないからと言って、人工透析までやった例もあるそうですよ。

いくら人を生かすのが医師の仕事だからと言っても、そこまでして延命された患者自身は幸せなのでしょうか?私だったら「いっそ楽に逝きたい」と思うかもしれません。医師も医師で、今後は「積極的には延命を行いません」ということを自分たちから表明していくべきだと思いますね。

みんなの介護 自分の両親や祖父母のこととなると、「少しでも延命を…」と思う方は多そうです。

富家 果たしてそうでしょうか?元気で長生きしてくれれば一番ですけれども、寝たきりで意識がないのに、胃ろうをつくってでもいいから生き永らえてほしい…とまで望むご家族の方は、私の所見では、それほど多いわけでもなさそうです。

日本には高額医療制度がありますから、医療のためにたくさんお金がかかった分は国の予算を使って差し引かれます。一般には月8万円程度、少し所得が多い人でも月10数万円程度が上限額となっていて、それ以上は医療費を払わなくていいようになっていますよね。だからこそ延命治療が一般化していますが、もし「月にかかった延命費用は全部負担してください」ということになったら、話はガラッと変わるはずですよ。

「一見すると植物状態だけれども、話しかけるとたまに反応がある気がするから」と何年も延命治療を続けている方もたまにはお見かけしますが…。そういう状態が続くのは、ご家族にとっても、本人にとってもつらいことだと思いますよ。

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