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小泉進次郎と田中角栄 卓越した話術持つという共通項あり

【未来の首相候補と田中角栄との共通点は?】

 今を遡る25年ほど前、田中角栄が政界を引退し、亡くなる2年前のことだ。角栄の姿を追い、その双眸から発せられる風圧をレンズに受けながらも2万枚の写真を撮り続けたカメラマン・山本皓一氏は、バットを握る1人の少年の眼光に思わず射すくめられた。

「カメラマンのおじさん、ありがとう」

 撮影後、まだ声変わりもしない甲高い声でそう言ったのは小学5年生の小泉進次郎だった。

「どうして?」山本氏が尋ねると、「親父と野球ができて嬉しかった」

 山本氏が小泉純一郎の家族写真を撮るため横須賀に取材に出向くと、進次郎が「僕、野球やりたい」と言い出し、中学生だった兄・孝太郎がピッチャー、父・純一郎はキャッチャーミットを握り、進次郎がバッターボックスに立ったのだ。

 当時、純一郎は加藤紘一、山崎拓とともにYKKと呼ばれて政界で注目され始め、私邸に戻ることはまれだった。だから、進次郎はよほど嬉しかったのだろう。

「その時の一枚を眺めると、進次郎の目の迫力に驚かされる。角さんの威圧とは比べようもないが、とても小学生の目ではないし、兄とも違う。突っ込んでくる貪欲さを感じた」(山本氏)

 それからまもなく、田中角栄は世を去った。

 進次郎が政界に現われるのは17年後の2009年総選挙、奇しくも角栄と同じ28歳での初当選で、そして今年、やはり角栄と同じ36歳で自民党副幹事長に就任した。

 角栄と進次郎──片や裸一貫から実業家として財をなし、政界に転じてからも実力でのし上がった叩き上げ。片や総理大臣を父、防衛庁長官を祖父に持ち、曾祖父は衆院副議長の四世議員という政界サラブレッド──政治家としてのルーツはまるで違う。しかし、時流に乗り、国民の期待を背に政界の階段をかけのぼる進次郎の姿は「今太閤」と呼ばれた角栄を彷彿とさせる。

 ひとたび街頭に立てば、聴衆を惹きつける「つかみ」の話術が2人は際立つ。演説上手の政治家は何人もいたが、2人にはこんな共通項がある。作家・大下英治氏が語る。

「進次郎は政治家になって車で移動中、いつも小泉純一郎の演説テープを聞いていた。最初は父の演説で修業し、次は落語のテープを聞いた。彼は落語好きで、贔屓は現役の柳家さん喬。上野の演芸場にも聞きに行く。彼のしゃべりは父の演説と落語の間合い、切り返し、笑い、なんです。そういう話術を持つ政治家はいまでは少ない」

 一方の角栄の演説修業は浪花節だった。

「浪花節の名人と呼ばれた角栄は、支持者に天保水滸伝などを披露していた。浪花節の語りが聴衆の心をつかむ話術につながっている」(同前)

 2人の情報発信力は、天性の資質というより、国民に語りかけることを意識した訓練で身につけたものといえる。
(文中一部敬称略)

※週刊ポスト2017年12月15日号

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