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中国における結婚と離婚、その理想と現実

 中国全土にていつも話題に上るのは結婚。過去においては結婚するかどうかの決断は双方の愛情。しかしこの近年では、資産・家・車の所有の如何が最も最優先されるという現実的な状況です。つい先日中国のネット上にて結婚準備に関する支出の都市別ランキングが発表されました。

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1位 深セン(208.2万元)
2位 北京(202.8万元)
3位 上海(200.82万元)
4位 杭州(178.2万元)
5位 広州(128万元)
6位 天津(108.6万元)
7位 南京(102.8万元)
8位 蘇州(94.4万元)
9位 常州(86万元)
10位 成都(55.4万元)

 上記調査の対象は平均的な収入の一般家庭となっています。しかし、ここが中国らしく注意書きに「但し収入基準にはグレー領域の収入は換算せず」とあります。給与外所得やキックバックなどが横行している現状下、正しいデータは取りづらいのです。

 上記のうち、上海を例に金額内訳をチェックしてみると次のようになります。
◯新居(80平米x2万元)160万元(≒2,010万円)
◯内装(中レベル)15万元(≒188万円)
◯家具家電(女性側)10万元(≒125万円)
◯自動車(一般車)12万元(≒150万円)
◯披露宴(中レベル)3万元(≒37万5千円)
◯ハネムーン(国内)1万元(≒15万円)
合計 約201万元(≒2,513万円)
※1元=12.5円計算

 但し、これらのデータに記載ある各都市の数値は、市内と郊外の平均を取っていると思われ、実際には都市部においてはデータ金額の1.5~2倍が必要と予想されます。例えば、上海市のデータでは新居を平米あたり2万元で算出していますが、現状では上海市内の新しいマンションは平米あたり3~4万元程度。ということは80万元~160万元(1000万円~2000万円)を加えて合計3500万円~4500万円程度の準備金が必要ということになります。ただでさえ男性よりも女性の立場が強い上海、住居と車がない男性とは結婚したくないという女性が一般的なので男性はこの金額を準備するために必死です。「男性に対する愛情ではなく、相手の不動産と結婚する」という現実的な考え方が増えているのです。

 また結婚式は女性にとって人生最大のお披露目式です。都市部ではホテルなどに300名程度の参加者を招き豪華に披露宴を催すのが一般的。加えて式の前にはプロのカメラマンを雇い相当数の写真を撮ります。それを写真集のようにして参列者に配布することもあれば、最近では若いときの自分を記録に残したいと、公園などでヌード写真を撮ることを希望する新婦も増えているとのこと。これらの費用だけでも結構なものになります。

 ただでさえ面子が重要な中国、結婚式にかかる支出もかなりのものです。最近では皮肉も込めた新しい諺が流行っています。「生儿子是名气、生女儿是福气」(息子なら面子、娘なら幸福)一人っ子政策の下、男性が生まれると名誉ではあるが、家族の経済負担が大きくなり、女性が生まれると貯金は少なくても気にならないし、結婚後の財産は共有になるというのでラッキーというわけです。

 しかしこれほどお金をかけた結婚も、やがて離婚に至る事例も少なくありません。北京や上海などでは離婚率は既に30%以上となっています。特に若年層と、50歳以上の中年層の離婚が急増しています。その理由として中国独特の文化が離婚をしやすくしている背景もあります。ビジネスで中国に関わっていらっしゃる方はご存知と思いますが、中国では夫婦別姓が通常。例えば旦那さんは李さん、奥さんは呉さん、お母さんは楊さんなど、皆名字が違うので、日本人にとっては慣れるまで大変です。この夫婦別姓は法律上の婚姻関係にはあるものの、名字は別ということで奥さんの周りを取り巻く環境は結婚後も著しく変わりません。いわば日本でいう「婚姻関係」と「内縁」との中間に位置するところで、いざ離婚というときには決断をつけやすい環境にあります。結婚したものの性格が合わなかったということで若い年代は容易に離婚する場合もあれば、離婚後は財産を分けることが前提なので、子供を育てた後、新しい人生を送りたいと離婚をする中年夫婦も増えているという訳です。

 そんな中、今年の夏に発令された法令で、中国に衝撃が走りました。中国最高人民裁判院が今年8月に行なった発表です。
<婚姻法第7条>
『結婚する前に結婚相手の両親が子供のために購入し、その子供の名義で登記されている不動産については、離婚後も両親がその子供に贈与した財産として、配偶者との共有財産とは見做さない。また結婚後夫婦二人で一緒にローンを返済したとしても、離婚後は登記人の財産となる。配偶者は離婚後に登記人と話し合い補償をしてもらうようにする』

 もちろん婚前に公証役場などで夫婦財産を明記する手法もありますが、中国人にとっては結婚する際に離婚のことを考えるのは一般的ではなく、またそのことが他人に知られてしまうことは恥ずかしく面子がなくなるという感情もあり、財産における公証作業はまだまだ少ないそうです。

 この法律が出て、ちょっとほっとしたのは中国人男性。住居などを一生懸命準備してもゆくゆくは自身の財産になるのであれば安心です。また今後において、女性は結婚の際に不動産と結婚するのではなく、きちんと自分に対する愛情を持って結婚してくれるようになるのだという期待を持てたからです。また財産分与において最も重きを占める不動産にこのような法令が発表されたということは、配偶者は離婚した場合に経済的にやっていけないという現実もあり、離婚も減少するのではないかという見方もあります。それでも様々な抜け道がある中国。このまま一筋縄にはいかないような気もします。結婚事情や離婚率の低下に対する影響がどこまであるか、しばらくウォッチしてみたいと思います。(執筆者:秋葉良和・A-commerce 編集担当:サーチナ・メディア事業部)

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