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若者はもっと「自己中」になって社会を変えろ~「絶望の国の幸福な若者たち」著者インタビュー~

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誤った「若者論」を是正していきたい


―ですから、著書の中では、「若者論」の歴史を紐解くところから始められているわけですね。かなり丹念に調べられていて、戦前も戦時中も現在と同じような若者批判が存在したことを明らかにしています。

古市:「若者がけしからん」という主張を単純に批判しても仕方ないと思ったんですよ。

色々言われているじゃないですか、「最近の若者は脳幹が腐ってる」とか。そういうのに反論していくことは簡単です。エビデンスを持ってきて反論すればいい。でもそれにあまり意味はないと思ったんです。

逆に何故そういう「若者はけしからん」「若者は○○だ」という若者論が繰り返されてしまうのか、という部分を解きほぐさないと研究として意味がないと思ったので、そこは明治時代にまで遡ってやりました。

―著書の中では、石原慎太郎氏などの発言を挙げて、見当はずれな若者論を語る上の世代への反感がある一方で、現代の若者に対しても冷めた視線を送っているように思えるのですが?

古市:研究者としての立場で書いた本なので、執筆の過程でインタビューをさせていただいた方々に共感する一方で、突き放した態度も必要だと思ったんです。研究者としては、対象に寄り添うような姿勢と両方が必要ですから。それはかなり意識した上で書きました。

まぁ石原慎太郎さんに関しては、単純に面白いから取り上げただけです。どこまで本気で、どこまで本気じゃないのかわからないですし、あのキャラクターは色々と参照しやすかったので。

―メディアに「若者代表」みたいな形で取り上げられることには違和感がありますか?

古市:違和感はないわけではないですが、研究者として出来ることはしようと思ってます。本当にどうしようもない若者像を語りたがる人が未だにいるので、そういう間違った若者のイメージは是正していくのは、ある意味研究者の責任みたいなものですから。

例えば、「最近の若者は内向きで全然海外に行かない」なんていう話は、ちょっとデータを見れば、すぐに事実誤認だとわかる話です。留学生にしても、海外出国者にしても20代の人口が減っていることを勘案して、割合でみれば逆にバブル時代より増えている。そんなことは誰でも手に入る統計データを見ればわかる話です。

ただ、そんな基本的な確認もせずにメディアが簡単に数字だけを取り上げてしまう。そういう誤りに対して、シンプルに批判できるところは批判したいと思っています。

僕は今、国立大学の博士課程に所属していますが、大学院生の存在というのは、国の税金で成り立っています。施設費や大学職員の人件費を勘案すると、学生1人に対して100万、200万くらいは掛かっているのではないでしょうか。その分ぐらいの役割は果たしたいなと。

―そういう意味では、ネット上のユーザーからは、古市さんがエリートだから、というような反感も受ける可能性もあるかと思うんですが。

古市:そうですね。僕がエリートかどうかは置いておいて、東大の院生とか慶応の研究員とか、本当はたいしたことではないんですが、肩書きを見たらどうしても付いてきてしまうイメージというものがある。それに対する責任、役割は果たしたいなとは思っています。結果的にマイナスなイメージをばら撒いている気もしますけど(笑)。

学問の世界って先細りだと思うんですよ。大学で研究を続けていてもあまりポジションはない。そもそも象牙の塔の中だけで通用するような研究は、社会に求められていない。社会に余裕があればいいんでしょうけど、そういう時代でもない。研究費は削減される一方です。

だけど象牙の塔は象牙の塔ですごく面白いんですよ。他の人が絶対にやらないようなテーマを一生かけて追求している人がいたり、研究者以外には読まれないというだけで、面白い研究はたくさんある。

それがそのまま誰にも知られず消えていくってもったいないじゃないですか。だから、そういう学問の世界と社会をつなぐ役割を果たしたいとは思っていますね。

『絶望の国の幸福な若者たち』も、そういう書き方をしたつもりです。アカデミック志向な人が読んで参考になる部分もあるし、逆に普段学術論文を読まない人でも、楽しんでもらえるぐらいの書き方をしようと思って色々と工夫はしてみました。

そこは非常に難しい部分で、アカデミックになりすぎれば一般の方から「眠くなる」といわれますし、逆に研究者からは「これじゃ、研究としてゆるすぎる」と批判を受ける場合もある。しかも、意外と負担も大きい。だけど、今回の本は割りと評判がよくて、良かったなと思っています。まあ、大学院の友だちからはものすごくディスられてるんですけど(笑)。

―東浩紀氏(批評家・作家)や宮台真司氏(社会学者・首都大学東京教授)以降の世代でアカデミックな立場から社会問題をわかりやすく語れる方がいなかったと思うのですが。

古市:そうですね。ただ、僕の同世代ぐらいからちょこちょこ出てきてはいると思うんです。『「フクシマ」論』を書かれた開沼博さんは、僕と一つ違いです。あとは『困ってるひと』を書いた大野更紗さんも同学年ですしね。あの本はエッセイですけど、大野さんは日本の福祉や医療の問題、ミャンマーの難民問題についての研究者でもあります。

―例えば、本田由紀氏は「虐げられている若者」を論理的に補強する存在と考えることができると思います。若者論の研究者として、古市さんは、今後どのような立場をとっていかれるおつもりですか。

古市:そこにはあんまり興味がないんですよ。間違った若者像を是正したいというのはありますし、そこには責任を感じますけど、別に啓蒙的に、「こうしよう」とか「こういう風に生きよう」という提言をすることには興味はない。だから、この本も結論はすごく曖昧。提言らしい提言はありません。かろうじて言えるのは「結局のところ1人1人が考えていくしかないんだよね」ぐらいのことです。

啓蒙的、断定的に「こう生きるべき」なんて言えないですし、言えたとしても、それぞれに個別の事情があると思うので、意味がない。だから、若者世代の理論的支柱になるつもりはないですね。そういうのは、もっと熱い人に任せておけばいいんじゃないですか。

僕は研究者として、世の中の仕組みとか仕掛けとか、こういう風になっているんだよっていうことは示せる。だけど、示すだけでその後は自分で考えてくださいとしか言えないですね。そもそも僕は基本的に「自分さえ良ければ良い」っていう人間なんで(笑)。

―それは論壇の先輩方から反感を受けそうなご意見ですね。

古市:そうかもしれません。でも、自分が満たされていない人に、本当の意味で他人のことを考える余裕なんてないと思うんですよ。逆に、自分が幸せじゃない人が語る日本社会の理想的な姿や未来に、あんまり興味はない。

たとえば家族が崩壊してて、友達とも上手く行ってない人から、いくら日本の未来とか社会とかを語られても説得力ないと思いませんか?そんな人が夢想する社会には生きたくないです。

―そうした主張が、ご著書の「身近な人間との関係一つ上手くマネジメントできないで何が国だ」という発言に集約されるのですね。これは、若者に向けた台詞なんでしょうか?

古市:いや、これは自分の不幸を国家語りで誤魔化しているように見える年配の不幸な言論人たちを揶揄した言葉ですね。逆にネット右翼みたいに言われている若者に対しては「居場所が見つかって良かったね」という感想しかないです。

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