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- 2017年12月01日 13:37
「働き方改革」で放送通信分野が官邸のコントロール下に!?

BLOGOS編集部
昨年は女性新入社員をパワハラ過労で自殺に追い込んだ大手広告代理店「電通」が大賞を受賞して大きな話題となった。それだけに今回も注目されていたが、その発表されたノミネート企業は「NHK」「パナソニック」を始め、「ゼリア新薬工業」「新潟市民病院」「大成建設・三信建設」「引越社グループ」「大和ハウス工業」「ヤマト運輸」「いなげや」の9社(グループ)。驚くのは日本を代表する企業が多いことである。
ブラック企業追及のNHKがブラックだった皮肉
「もともとNHKは同大賞の取材に消極的だったにもかかわらず、昨年の電通の女性新入社員の過労自殺の際は夜7時のニュースでも扱うなど積極的で、過労死自殺のスペシャル番組まで放送するほどでした。ところが、そのNHKでも女性記者の過労死が発覚して、ブラック企業にノミネートされたんですから皮肉なものです」(放送関係者)。追求の急先鋒だったはずが一転、今や問題視される側に回ってしまったNHKにコメントも出せるはずがないが、さすがに局内では〝働き方改革〟の大号令。まずは、世間が最も目にする大晦日恒例の「紅白歌合戦」で〝改革〟をアピールすることになったとも言われている。
「出場者発表も昨年までは、休日や祝日に発表会見を設定するなど記者の間では悪評だったが、今年は時期を一気に早めるなど、突然に局内の作業時間に余裕を持たせるような動きになった。しかも、発表された出場歌手に目玉がないと批判されているが、実は、それも出演交渉など面倒なことは出来るだけカットして、プロダクションの意向を取り入れるなど比較的に交渉しやすい歌手を選んだのではないかと言われています」(週刊誌記者)。
〝働き方改革〟の波は確実に制作現場に押し寄せているが、それは逆に現場スタッフのモチベーションの問題にまで発展しようとしている。NHK内では「紅白」と同時に、看板番組の大河ドラマも「放送本数を少なくする」方向で調整を進めている。具体的には来年放送の「西郷どん」は、当初予定だった全50話を3話減らして全47話になるという。
「余計な仕事はするな」「時間や動力をかけた番組は作らなくてもいい」「番組のクオリティーは追求しなくてもいい」といった声まで出ているというから、一言で〝改革〟といっても十把一絡げにはいかない。
とはいっても〝働き方改革〟は安倍政権が掲げている重要課題。最近では、東京ディズニーランドで「キャラクターの着ぐるみを着て、ショーやパレードに出演していた」28歳の契約社員にも労災が認定され大きなニュースになった。労働環境に対する意識や認識も変わりつつあることは確かだ。
櫻井翔のパパは電通と官邸の「パイプ役」か
そういった中、昨年の「ブラック企業大賞」となった電通が元・総務事務次官で現・三井住友信託銀行顧問の桜井俊氏を執行役員に据える驚きの人事(18年1月1日付)を発表した。電通が社外から執行役員を迎えるのは初のケースだと言う。
桜井俊氏(共同通信社)
しかし、桜井氏といえば、元総務省事務次官という肩書き以上に人気グループ〝嵐〟のメンバー、櫻井翔の父親として知られる。それだけに「(電通の)イメージアップを図る狙いも…」と勘ぐるムキもあるが、実際には「官邸からの意向ではないか」という声もある。
「桜井氏は、旧郵政省出身で在任中は放送も含めた情報通信分野一筋に来た。そんな桜井氏の仕事ぶりを評価し続けて来たのが菅義偉官房長官でした。事務次官になり、その一方でNHK会長の候補や昨年の都知事選でも名前が挙がったりもしたのも全て菅官房長官の後押しがあったことだと言われています。そういった意味で、電通の異例とも言える人事も菅官房長官の強力な推薦があったと考えるのが自然です」(業界関係者)。
背景には、もちろん政府の推し進める〝働き方改革〟もある。しかし、電通においては、ここまで労働問題が大きくなったら官邸も黙ってはいられない事情も。それは、3年後の「東京五輪」である。東京五輪の開催に向けて電通が果たす役割は大きい。それだけに、官邸としても電通の立て直しが急務となるわけだ。
「桜井氏は 、事務次官の経験者といっても労務関係に詳しいわけではないでしょうからね。もちろん社内コンプライアンスの問題も大きいとは思いますが、彼を起用した本当の狙いは、働き方改革によって生じる内部統制と同時に官邸との強力なパイプ役でしょう。つまり、今回の人事では極めて専門性の高い特別な人材を処遇したエグゼクティブ・プロフェショナル制度を導入することになったことも大きなポイントです、桜井氏の役割は執行役員と言いながらも電通内の中枢を握ることだとも考えられます」(放送関係者)
もちろん「極端な考え方」と言えなくもない。が、〝働き方改革〟の下、過労死や過労死に対しての「労災認定」をキッカケにNHKを始めとするメディアはもちろん、電通などの情報通信分野が虎視眈々と官邸のコントロール下に置かれ始めていることも否定はできない。
- 渡邉裕二
- 芸能ジャーナリスト
芸能ジャーナリスト。静岡県御殿場市出身。松山千春の自伝的小説「足寄より」をCDドラマ化し(ユニバーサルミュージック)、その後、映画、舞台化。主な著書に「酒井法子 孤独なうさぎ」(双葉社)など。



