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中央線

 中央線のオレンジ電車が引退しました。約30年間のお勤めだそうです。お疲れさまでした。正式な名称は、201系と言うそうです。

 東京で仕事を始めてから、毎日のように乗った電車でした。ずっと中野で暮らしているので、かれこれ20年近く乗り続けていたことになります。その間に、いろいろと職場が変わったりはしましたが、中央線には乗り続けてきました。

 近頃は、もっぱらアルミでできたE233系ですが、ときたま201系に出会うと、ほんの少し得した気分になったりもしました。なんでしょうね、あの気分。

 広告屋なので、車内広告を眺めることが多いです。最近は、ローンの広告やパチンコの隣に、法律事務所の広告があったりして、広告は世相を表すなあ、と思ったりしていますが、そんな中に、ひっそりとJRの広告があって、その広告には、荻窪か三鷹あたりの風景写真に「中央線が好きだ。」と書いてあります。

 運営している会社が「中央線が好きだ。」と思うのは当たり前だよなあ、どの路線も好きでないといけないし、わざわざ言う必要はないよなあ、みたいなことは思わなくはないけれど、でもまあ、その気分はすごくわかります。中央線と、その線路を走るオレンジの電車には、理屈をこえたものがあるんでしょうね。

 201系は、ドア上の広告枠が好きでした。かなり横長の車内ポスターです。新聞で言えば、全3段くらいの比率ですね。あの枠にいつも掲載されている某空調メーカーの広告があって、東京で仕事をするようになってから、ずっと眺めていたんです。その広告は、表現としてはうまい広告ではなかったけれど、なぜか好きだったんですね。

 いつか、この枠でこのメーカーの広告がつくれたらなあ、と思っていたら、不思議なことですが、ご縁があって、2年間くらい担当することになりました。ひたすら、空気について語る、わりと静かな広告をたくさんつくりました。その中で、赤ちゃんの写真で、「人は、寝ているあいだも空気を吸っている。」というコピーがついた企業広告があって、その広告は、今も使われたりしているんですよね。今も、ときどき新聞や雑誌で見かけることがあります。かれこれ、10年くらいになるんじゃないかなあ。

 つくった広告が長く使われることは、広告屋としては、とても光栄なことで、その間に、とあるおばあさんから、若い頃に病気で亡くなった子供に似ていて、我が子のように思えるので、あの写真をいただけないでしょうか、という手紙をもらったりもしました。そんな思い出が、あのオレンジ色の電車にはあります。

 あのドア上の広告枠は、E233系に切り替わるにつれて、デジタルサイネージ「トレインチャンネル」になり、姿を消しつつありました。201系の引退で、中央線のあの広告枠は完全に姿を消すことになりました。時代の流れですが、少しさみしいですね。

 あの横長のポスターは、言葉が主役になれるんですよね。そんなところも、好きだった理由のひとつかもしれません。「トレインチャンネル」は、やっぱりストーリーや映像や情報が主で、広告は字幕付きのテレビCMが多いようですし、あのポスターと同じような感じでは広告をつくるわけにはいかないです。時代が変わって、新しく生まれるものもあれば、静かに姿を消していくものもある、ということなんでしょうね。

 それは、なんでも同じだと思いますし、ことさら思いを深くしても、そんな感傷とは関係なしに時は流れていくわけだし、まあ、さみしいけどしょうがないなあ、と思いますけど、201系が引退したその日の深夜に、ひっそりと、その思いを残しておこうかな、なんて思いました。

 もうすぐ、中央線が走り出します。

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